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特集:中国インバウンド

日本で働く中国人PRウーマンが伝えたい控えめな日本人が、中国人の“新・新人類”と
うまく付き合う方法

第2回

您(あなた)は何しにニッポンへ?
-中国人が日本を訪れる理由-

日本の街中や駅など、至るところで見かけるようになった中国人観光客。「爆買い」という言葉も流行語になったりしていますが、中国人が日本を訪れる理由は、それだけではありません。日本人からみると「なぜそこに行く?」と感じるケースも多々あるんです。今回は、中国人が日本を訪れる理由についてお送りしましょう。

ポイント
  • 爆買いは、日本品質への高い信頼だけではない。中国での“親戚”の範囲は非常に広く密なので、日ごろから大切にしている親戚の為の大量購入も、その理由のひとつ。
  • 買い物以外に、趣味趣向にあった”テーマ”を持って日本旅行をする人も増えている。
  • 目的達成のためには、お金に糸目を付けない!という大胆さや行動力を、新・新人類の若者層でも持ち合わせている。
您(あなた)は何しにニッポンへ? 中国人が日本を訪れる理由

日本製品の品質の良さがトリガーになった「爆買い」現象

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:東京を軸に、静岡や山梨で富士山や自然を満喫して、それから関西へ向かって京都、奈良…逆に辿ることもあるけれど、それが中国人の団体ツアーの王道ルートだよね。今、目に見えて中国人のツーリストが増えていて、その背景にはビザを取得しやすくなったことや、富裕層が増えたことなど、理由は複数あると思う。そして、彼らの「爆買い」が日本でも大きなニュースになったのは記憶に新しいところだね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:中国人の「爆買い」の兆候は、日本で話題になる前からありましたね。ツアーガイドのアルバイトをしていた中国人の友人から聞いた、今から約8年前の話なのですが、銀座にバス2台で乗りつけて、一斉に皆、買い物に走って、戻ってきたらブランド品を両手に抱えて…
「これは自分の時計で、これは彼氏の、そしてこれがお母さんので…」と大量にブランド品の時計を買っていて、中国人からみても驚愕だったそうです。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:まさに前回で触れた「モノをほしがる世代」だね。日本人に置き換えると、ちょうど30年くらい前の感覚なのかな。バブルの頃、世界中の至るところに旅行して、ブランド品を爆買いして…。それは別に悪いことではないけれどね。中国では親戚づきあいも広く、大切にしているので、ブランド品に限らず、大量にお土産を買って配るのは、珍しくはない。為替や税制などの影響で、中国で買うよりも日本で買ったほうが安い商品も確かにあるし。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:あとは品質の高さですよね。今でも中国人の間には「日本製品=高品質」というブランドイメージがありますし。だから、時計やカメラ、電気製品、化粧品などを爆買いする。その一方で、上海にも出店している日系アパレルブランドの商品などは、日本で買うよりも中国で買ったほうが安い場合もあるんですよ。でも、わざわざ日本に来て買う。得てして「日本で買ったほうが(品質が)良さそうな気がするから」というフワッとした理由だったりするんですよね(笑)。

アニメ映画『君の名は』の聖地巡礼でタクシー代5万円!

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:お買い物目当ての中国人旅行客がいる一方で、自分のライフスタイルや趣味趣向に合った日本旅行を楽しむ人も少しずつ増えてきているよね。たとえば「スキーがしたい!」なら北海道、「癒されたい」なら温泉。歴史が好きなら、京都や奈良もいいけれど、あえて幕末の風情を残す山口県に行ってみたりする人もいる。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:自分の好きなものを見たい、体験したいという目的の旅ですね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:そのことを鮮明に表しているエピソードがあってね。アニメーション映画『君の名は。』が中国でも大ヒットしたじゃない。中国在住の私の友達も映画を見て大ファンになったんだよね。そんなとき、『君の名は。』の劇中で描かれた地や、ゆかりのスポットを巡るツアーが存在していることを知って。ツアー初日の1か月前からネットのみで予約できるシステムだったのよ。そこで友達に頼まれて、ちょうど1か月前の予約スタートとなる夜12時ピッタリにアクセスしたんだけど、サーバが混雑してて全然つながらない。そのことを友達に告げたら「じゃあ個人旅行する!」って。飛騨高山駅発のハイヤーをチャーターして、ゆかりの地を半日かけて観光したの。バスツアーなら数千円に対して、5万円もかかったけど、トップシーズンの専用車と考えれば相場だから「行く!」って敢行したのよ。それで後日、友達の職場の同僚も同じく大ファンで、同じルートを辿ったんだって。値段もだけど、見たいという情熱にかける行動力がすごいの。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:すごいですね。ブランド品を爆買いする人も多いけれど、その一方で、誰になんといわれようと「私はこれが好き!」と思ったことにお金を使う人も、着実に増えてきている気がしますね。

中国の国民的映画がもたらした北海道旅行ブーム

田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:『君の名は。』ほど極端な例じゃないけど、2008年公開の中国映画『狙った恋の落とし方。(中国名『非誠勿擾』フェイチェンウーラオ)』が大ヒットしたことによる北海道旅行ブームもありましたね。監督の馮小剛(フォン・シャオガン)のことは、中国人なら誰もが知っているほど有名。この映画のロケ地だった阿寒湖畔の温泉街や網走市の北浜駅、能取岬などを巡るツアーが組まれて、北海道を訪れる中国人観光客が一気に増えました。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:その前には、やはり中国映画のロケ地として使われた沖縄も中国人観光客には人気だったよね。でも、ロケ地に選ばれたら、そこがツアー先として必ずしもヒットするかといったらそうじゃない。当たり前のことだけど、外国人向けのマーケティング・PRを実践するなら、外国人の視点に立って魅力を発掘し、配信しないと難しいよね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:細分化も必要。ひとえに中国人といっても人口13億、56もの民族がいる。また、同じ中国人でも、海外に行ったことがある人と、まだ行ったことがない人だと価値観や感覚がまったく違いますから。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:そうだね。私の友達親子が日本に来たとき、一緒に京都へ2泊3日で京都に行ったんだけど、7月の一番暑い時期だったかな、その間に彼女らは3回、「哲学の道」に行ったからね。朝起きてまず足を運んで、いろいろ名所を巡ってホテルへ帰る道すがらにもう1回。さらに翌朝も1回。「なんで?」って聞いたら「何人もの文豪がこの道を歩いて思索にふけって、いくつもの名作が生まれたんだよ」って言ってた。日本文学が好きな子でね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:旅のスタイルは通常、ひとつでも多くの名所を巡って写真を撮って、ここにも行ったよ、あそこにも行ったよとアピールしたい気持ちになりますよね。でも、深くディープな旅をしたい人も着実に増えている。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:2月の春節や10月の国慶節などの長いお休みに日本へ来る中国人もいるけど、長期休暇だからこそアメリカやヨーロッパなど遠くへ旅行しようという人も多いよ。逆に短い連休のときに、そうしたディープな旅を近隣国で楽しもうとする傾向があるかな。その中だとビザの取りやすさもあって、日本、韓国、タイが人気だね。

欲しいものは何としてでも手に入れたい!ファッション誌『Oggi』の爆買い現象

田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:『君の名は。』も大ブームでしたけど、最近だと日本の女性ファッション誌『Oggi(オッジ)』が大ブレイクしたのを知ってますか?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:日本の女性ファッション誌はけっこう昔から人気ではあるよね。でも“大”ブレイクなんでしょう?なぜ急に?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:『Oggi』の2017年11月号の付録が、世界的ブランドの『GUCCI』のコラボノートブック“MYGUCCIBOOK”だったんですよ。しかもグッチ銀座限定デザイン。「850円(税込)で『GUCCI』がついてくるなんてスゴイ!」って中国のSNSで瞬く間に広まって。既に、日本では人気沸騰で、Oggi史上初の重版となり、そもそも品薄で入手困難の状況でしたから。
スマートフォンで表紙を確認しつつ本屋さんを物色している中国人の姿も実際に見ましたが、東京都内のコンビニもほとんど売り切れで…私も欲しくて探したんですけど…。そこで、中国最大級のオークション・ショッピングサイト『淘宝(タオバオ)』をチェックしてみたら、雑誌と付録のセットから付録のみまで、もうズラリと出品されていて。高値だと999元(日本円で約1万5千円)で、7人がすでに購入済なんですよ!
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:日本でいう「転売ヤー」がたくさんいるってことだね。この付録は確かにすごいけど、日本の女性ファッション誌で紹介されているアパレルブランドって、日本でしか買えないものが多いよね。でも、中国在住の若い女性たちは日本のファッション誌が欲しいんだ?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:買えなくても、雑誌を見て自分のセンスを磨きたかったり、似通ったコーディネートをしたい気持ちが強いんですよ。あと、日本在住のバイヤーに「このブランドのこれが欲しい」と頼めば、10%くらいの手数料上乗せで入手することもできます。いわゆる代行購入ですね。

東北復興PRで感じた、人と人との心のつながり

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:PRの仕事を通じて、私自身が新たな日本の良さを発見したこともあったな。ほら、2014年に、北京と上海のメディアやジャーナリストを東北に招いたプロジェクトがあったじゃない。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:あれは私も感動しました!行かないとわからないことってまだまだあるな~って。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:東日本大震災のおり、日本在住、とりわけ東北に住んでいた中国人が大挙して中国へ帰っていった。だからこそあのタイミングで、日本の地方にも魅力がいっぱいあるよ!ということをPRしたかったんだよね。大半の中国人のイメージの中では、日本旅行イコール東京、大阪、京都、さらに映画のヒットで火がついた北海道や沖縄…で止まっていたから。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:松島に行ったり、牡蠣を食べたり…それと東北大学に行けたのもよかった。魯迅先生がかつて学んだ仙台医学専門学校は、東北大学医学部の前身ですからね。銅像や魯迅記念展示室、実際に学んだ教室も残っていて、中国から招いた皆さんも感動していました。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:この地で魯迅先生は「中国人の病は、体ではなく心だ」と開眼して文学の道へ進んでいった。東北大学も含めて、「東北がこんなに良いところだとは知らなかった」と皆言ってくれたよね。その一方で、仙台空港からの道すがらはには瓦礫がまだ生々しく残っていた。「大きな悲劇に見舞われたけど、いまはこんなに頑張ってるよ」という記事を複数書いてくれて……私たちは仕事として請け負ったからビジネスであることに変わりないんだけど、やはり本質は、人と人との心のつながりだなぁって思ったよ。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:地方都市だと、その土地に住む方々と交流したりして、心のつながりを感じやすいかもしれません。まだまだ日本には、たくさんの“訪れる理由”が埋まっていると言えますね!

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呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
北京第二外国語大学日本語学部卒業。日系PR会社にて4年間勤務後、日系電機メーカー 広報部に出向。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程を経て、オズマピーアール入社、日本企業の中国コミュニケーション戦略に従事。2011年、日中コミュニケーションについてのコラムをビジネスサイト「Business Media誠」内で連載。
<著書>『やっかいな中国人のホンネがわかる本』
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
高校卒業後来日、日本の大学を卒業後、上海の大手日系百貨店にて、マーケティング部の宣伝担当として日本文化紹介イベントを数多くを企画、宣伝。中国初の上海国際映画祭「日本映画の旅」を企画。その後、CRM部門の立ち上げに携わり、EC運営も担当。2015年上海市長寧区政府より「優秀イベント主催者」受賞。日本企業の中国アウトバウンド関連業務などに携わる。

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您(あなた)は何しにニッポンへ? 中国人が日本を訪れる理由

您(あなた)は何しにニッポンへ? 中国人が日本を訪れる理由

2018.03.07

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