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特集:中国インバウンド

日本で働く中国人PRウーマンが伝えたい控えめな日本人が、中国人の“新・新人類”と
うまく付き合う方法

第3回

動画ライブに“独身の日”。
-中国のネットを賑わすアレコレ-

日本も中国も、今やインターネットなしの生活は考えられないほどになりました。とりわけ人口も多い中国では、さまざまな現象がネット上で巻き起こっています。日本と同じようなケースもあれば、中国独自のものもある――そんなネット上のトレンドについて今回は語ってみました。

ポイント
  • ヒットの火付け役として注目されるKOL。日本と違い“レガシーメディア”の広告にふれる機会が低く、口コミ重視の国民性なので、タレントに限らず一般人のKOLでも影響力は強い!
  • 独身の日は、アリババ1日で売上約3兆円を記録する、今や全国民が楽しむビッグセールの日。関連企業の上場が相次ぐなど、その経済効果に日本企業も注目している。
  • 中国人から見る不思議な演出、日本ドラマでの”走るシーン”には、時間を厳守しようとする日本人の厳格な気質が表れている?!
動画ライブに“独身の日”。 -中国のネットを賑わすアレコレ-

ひたすらラーメンを食べる一般人の動画ライブの何が楽しい?

田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:ウーさんは、親の世代から“頼りない世代”だとダメ出しされた「新人類」ですよね。そんなウーさんからみて、最近の中国の若者達はどう映りますか?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:ダメだなと思うね(笑)。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:えっ、そうなんですか?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:まあそれは冗談。いろいろな価値観があっていいと思うし、一概に「この世代は~」と、ひとくくりにはできない。でもね、これはちょっと私は理解できないなぁ…と思うのは、一般人によるネットのライブ配信だね。趣向を凝らして、コンテンツとして面白いならわかるけど“一般人が30分間、ただひたすらラーメンを食べてる動画”にはちょっと引いた。だって、数十万人も視聴してるんだもの!確かにかわいい女子ではあるんだけど、一般人だよ!?理解できる?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:そのコのファンもいると思うけど、“相互フォロー”の関係にある人もいるんじゃないかな。たとえば、Aさんがライブ配信していたら、Bさんが視聴しにきた。「いいね!」といったコミュニケーションをしつつ、Bさんが「私も今度ライブするんで観にきてくださいね」とコメントする。そしてBさんのライブ配信を、次はAさんが観にいく……お互いコメントし合い、視聴し合う関係がいくつもできてるんじゃないですかね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:それって楽しいのかなぁ…。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:配信サイトや特定のクライアントと契約していることもありますよ。たとえば「1日5時間ライブしてください。そのかわり月●十万円お支払いします」みたいな。そのケースだと、家を出る前からお化粧、外出先、ご飯どき、帰宅後の趣味の時間…といったように、ずっと自撮りすることになりますね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:ちょっと納得できないのは、いまの中国のライブ配信やSNSって、お金で解決している側面もあるでしょう?日本もあるのかもしれないけど。つまり、お金を払ってフォロワーを増やして「自分は人気あるんですよ」とアピールする人もいる。それはちょっとどうなのかなって思う。お金が無くなったら一気に閑散とするかもしれなくて、そうなったら虚しいじゃない。やはりラーメン食べるだけじゃなくて、コンテンツをしっかり充実させないと、このムーブメントは長続きしないと思う。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:確かにそうですけど、たとえばコンテンツが良くて面白かったとしますよね。でもフォロワーが少ないと、それだけで「つまんないから少ないんだろうな」と思われてライブ視聴から離脱されてしまうことを危惧している場合もあると思います。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:なるほどね。ひたすら一般人がメイクしている動画も観たことあるけど、私としてはやっぱり微妙だな…。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:メイク動画の場合、男性は「かわいい女子が見たい」から視聴しますよね。女性視聴者は、メイクの勉強がしたいんですよ。メディアでメイク手法が紹介されていたとしても、キレイなモデルさんが大半じゃないですか。もっと身近に感じる人が、どう工夫してメイクしているのかを知りたいんだと思いますね。

「KOL」は、消費トレンドの発信源&起爆剤!

田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:日本製品を紹介しているライブ配信もけっこうあるんですよ。美顔ローラーや毛穴吸引器などの美容用品がけっこう目立ちますね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:インフルエンサーとかKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる中国人の存在と影響力は、日本でも話題になっているよね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:中国の若者は、いわゆる”レガシーメディア”の広告にふれる機会がぐっと減っていて、その代わり、ネット漬けの生活(笑) そんな環境のため、“KOLが発信する口コミ情報”は、身近に感じられ、コメントのやりとりが出来る双方向性が更に共感を呼び、購買意欲につながる効果も高いんです。 なので、その影響力はオンラインマーケティングにおいて無視できないです。『adidas YEEZY』っていうアディダスのスニーカーも、人気のKOLが履いていたのがきっかけで、日本旅行の爆買いの対象になっています。1人3足くらい、色違いで買っていくんですよ。定価は3万5千円くらいだったかな?でも爆買いの影響で、ネットオークションなどでは9万円の高値がついたりしてますね。日本のアパレル系だと『コム・デ・ギャルソン』も根強い人気です。あと、今は少し落ち着いていますけど『A BATHING APE』。これはかつて、中国のインフルエンサー元祖サイトの『MCC』という掲示板があって、今のファッションにおけるインフルエンサーたちはそこで交流して遊んでいたんですよ。その際、『A BATHING APE』が好きな人が多くて火が付いたんですね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:日本にも『Youtuber』がいるけど、根本的に日本人は目立ちすぎることを避ける傾向にあるよね。でも中国人の若者は気軽にライブ配信したり、「KOLになりたい!」って人の割合が多い気がするね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:「ECサイトを立ち上げたい!」という独立志向の若者も多いですね。アパレル産業が発展していないエリアから、上海や広州に飛行機で飛んで、仕入れをして帰ってくる。そしてモデルさんを手配したり、自分で着たりしてECサイトで販売する。雑貨を買いたいなら上海の近くの浙江省に買い付けにいったりもしていますね。

ネット史上最大のお祭り!?11月11日、3兆円近くのおカネが動く

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:売り手が多いということは買い手も多いわけで、すごいよね、毎年11月11日は。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:独身の人が自分自身への贈り物を買う“独身の日”ですね。中国・アリババ社の創業者、ジャック・マーさんが提唱した日なんですけど、2017年は前年実績を4割上回る約2兆8500億円の取引額を記録したそうですよ。しかもこれはたった1日、アリババのみの数字です。 今では、独身に限らず“ビッグセール”のこの日を待ちわびて、皆、独身の日が幕開けする夜の12時まで寝ないで待ってますからね。よーいドン!で買って「コレ買いました」ってSNSでシェアしたりするんですよ。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:まさに「モノを欲しがる世代」による象徴的なイベントだよね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:通販の楽しさは、実はモノを手に入れるだけじゃないんですよ。いま中国のネット上で流行っているのが、宅配便の「受取票」画像です。宅配便を受け取るとき、ふつうは受け取った人が名前をサインしますよね。ただ中国の場合、特に独身の日の後などは、流通量が多すぎて手が回らないところもあって割と適当なんですよ。配達する人からすると、受取人不在な時でも、時間が惜しいからモノを玄関前に置いていきたい。そこで受取票のサイン欄に「ドアノブ」とか書いて、そのまま置いてっちゃうんです。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:ドアノブがサインしました、っていうことにするんだね。それは適当だ(笑)。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:そういえばこの間、私が帰国する際にウーさんから「ソーセージ買ってきて」と頼まれたじゃないですか。私、それを友人の家に配達してもらうようにしたんです。で、配達時に不在だったみたいで、その時は受取票に「消火栓」って書いてありましたよ(笑)。 その一方で、まじめな話をすると、この独身の日の大量注文により、物流業界がビックデータを活用するなどインフラ環境が飛躍的に成長し、宅配便関係会社の上場が相次いだという側面もあるみたい。もちろん、日本企業でも化粧品ブランドやユニクロ、カルビー等も人気ですよ。大きなビジネスチャンスですものね。

中国人の長年のギモン…「なぜ日本のドラマは走るシーンが多いのか?」

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:他にも何か、現在のネットで話題になっているものはある?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:日本のコンテンツはネット上でも人気ですね。でも、単に観るだけじゃないんですよ。旧暦大晦日に中国で放送されている「春節聯歓晩会」、知っていますよね?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:もちろん。日本だと「中国版紅白歌合戦」などと呼ばれることが多いね。日本は歌のみだけど、通称「春晩」はコントや手品などなど、なんでもありなんだよね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:その「春晩」が、日本の『ニコニコ生放送』で中継されたんですよ。『ニコニコ~』といえば、視聴しながらみんなでコメントを書き込んで、そのコメントが画面上に流れる仕組みが特徴です。その中継上で流れた日本語コメントを、誰かが中国語に翻訳したのが大いにウケたんです。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:“ん?ちょっと意味わかんなんだけど。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:中国人からすると見慣れた芸でも、日本人は知らなかったりします。だから意外なところで「スゲーーー!!」というコメントラッシュになったり、とにかく日本人の感想が面白いんです。中国人なら誰もが知る有名歌手が出てきても「なんだ、次はオッサンの出番か」みたいなコメントがあったり(笑)。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:文化や風習のギャップを楽しむネタとして機能しているんだね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:そうですね。同じような例だと「日剧跑」がそうかな。この三文字で「日本・ドラマ・走る」を意味しています。私も含めた中国人が抱いている長年の謎は「日本のドラマでは、なぜ走るシーンがこれほどまでに多いのか?」ということです。この三文字で検索すると、「私も不思議だった!」など、山のように賛同する意見が出てきます。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:日本人からすると「そんなに多いかな?」って思うかもしれないね。でも本当に多いんだ?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:すごく多い。中国のドラマで“走るシーン”はほとんどない…というか、ほとんどの中国人って、日々の生活の中で走ったりしませんよね?でも日本のドラマだと、駅の階段、街中、土手、住宅街、海辺…すごい走ってるんですよ!斎藤工さんと上戸彩さんのドラマ『昼顔』も、上戸彩さんが走っていましたが、ある時から自転車になったときも「走るの、卒業してる!(笑)」って盛り上がったりして。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:これは日本と中国の文化の違いが表れているかもしれないね。まず日本人は時間に厳しいけれど、中国人はたとえ遅刻しても走らない人がほとんど。中国は土地も広いから急ぐときは、走るより“車に乗る”という発想が強いし。あとタクシーが日本は異様に高いでしょう。中国だとタクシーは通勤手段のひとつで、初乗り200円くらい。上海や北京には地下鉄もあるけど、駅間が日本の地下鉄ほど短くないから「次の駅まで走るか!」とはならない。それと中国は今、大気汚染が社会問題化しているから、ジョギングすら「ジムで走る」というのが一般的だよね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:こうした、お互いの文化や風習を知らないがゆえに楽しめることってあるんですね。日本と中国はお互い言葉も違うから直接的には交流する機会が少ないけれど、ネットやコンテンツを介して、お互い交流している気がします。

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呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
北京第二外国語大学日本語学部卒業。日系PR会社にて4年間勤務後、日系電機メーカー 広報部に出向。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程を経て、オズマピーアール入社、日本企業の中国コミュニケーション戦略に従事。2011年、日中コミュニケーションについてのコラムをビジネスサイト「Business Media誠」内で連載。
<著書>『やっかいな中国人のホンネがわかる本』
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
高校卒業後来日、日本の大学を卒業後、上海の大手日系百貨店にて、マーケティング部の宣伝担当として日本文化紹介イベントを数多くを企画、宣伝。中国初の上海国際映画祭「日本映画の旅」を企画。その後、CRM部門の立ち上げに携わり、EC運営も担当。2015年上海市長寧区政府より「優秀イベント主催者」受賞。日本企業の中国アウトバウンド関連業務などに携わる。

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