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特集:中国インバウンド

日本で働く中国人PRウーマンが伝えたい控えめな日本人が、中国人の“新・新人類”と
うまく付き合う方法

第4回

春といえば?
-中国のお花見事情-

日本では、春、4月は始まりのイメージがあります。桜の季節でもあり、人々はお花見を楽しみます。しかしながら、中国では少し印象が違うようです。今回は中国人にとっての「春」について語ります。

ポイント
  • 中国は旧暦なので「春」は春節が終わった1月や2月。日本人が抱く、「新しいことが始まる季節」というイメージとは大きく異なる。
  • そのため、中国インバウンドでは、「春」に対する感覚が日本とは異なることを理解した上で、メッセージを訴求した方がよい。
  • 中国には「花を見ながらお酒を飲む」という習慣は無く、「SNS映え」が日本への花見観光の主目的となっている。
春といえば? -中国のお花見事情-

「春らしさ」を前面に打ち出した観光キャンペーンが中国人にイマイチ響かないワケ

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:中国インバウンドに苦労されている方たちのため、今の中国人の考え方や行動について語り合うという私たちの対談ももう4回目。今回のテーマはズバリ、「春」です。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:4月になってようやく暖かくなってきましたからね。先輩は4月といえばどんなイメージがありますか?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:うーん、1年の中にある月のひとつかな。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:リアクション薄ッ! と驚いている人もいるかもしれませんけど、実はこれが私たち中国人のごく一般的な感想なんですよね。日本では「春」というと新たなスタートや、入学、入社、引越し、転勤などとにかく「NEW」というイメージがあるでしょうが、中国ではそういう認識はゼロ。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:そうそう。中国は旧暦なので「春」というと春節が終わった1月とか2月。とても寒い季節だから「春=暖かい季節」というイメージは皆無だよね。学校も9月スタートで5月終わりだし、そもそも日本のように一斉に新卒を採用する「入社式」っていう文化もないから新しく何かが始まる感もゼロなんです。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:むしろ、日本で言うところのお盆に近いんじゃないですか。中国の4月は清明節といって、先祖のお墓参りをする季節ですし、5月の労働節に連休を控えているので、海外旅行志向が高まる時期という点も似ていますね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:まだそのイメージの方があるかも。それを踏まえると、この時期の中国インバウンドでは、国内観光客へ向けたような「春らしさ」を前面に打ち出したメッセージや、観光キャンペーンはこういう文化的な違いを認識して丁寧に表現しないと、伝わりにくいね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:たしかにいまの時期、日本では駅や町のいろいろな場所で「春」と結びついたキャンペーンのポスターを見かけますけど、ああゆうものも中国にはないので、中国人観光客はまったく理解できない。だったら、「労働節の前」を印象づけるようなものの方がまだ伝わるかもしれません。

桜に夢中な日本人。だけど、”花より団子”の日本人?

呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:インバウンドといえば最近、中国人の「花見観光」も増えているというニュースをよく見るね。あれ、「新・新人類」世代のデンちゃんはどう思う?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:いまはとにかく日本に行って桜の写真をSNSにあげると、みんなから「いいね!」がもらえるというトレンドがあるんで、それが大きいんじゃないでしょうか。中国の国内観光地はすごく物価があがっている。一方、日本はマルチビザや円安で国内旅行とそれほど変わらない価格でいける海外旅行。「日本で桜の写真を撮ってきた」という行動自体が周囲に、ちょっとだけ自慢できる余暇の過ごし方になっているんでしょうね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:なるほどね。でも、そういう「SNS映え」が目的ということは、日本人のようにきれいな桜を眺めながら、お酒を飲んだり食事をしたりという「お花見文化」とはだいぶギャップがあるね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:ええ。もしかしたら中国インバウンド対応をする方のなかにも、中国人観光客は日本人のように桜の木の下で大宴会を開くためにやって来ていると誤解している人がいるかもしれませんね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:たしかにそれはすごく大事なポイント。東京の上野公園や中目黒を歩きながら桜と一緒に写真を撮っている中国人観光客も、焼き鳥やビールを買っているけど、そこで売っているからであって、あくまで目的は「写真」。というか、そもそも中国には「花を見ながらお酒を飲む」という習慣ってないものね。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:そうですね。昔にあったくらいですかね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:えっ!? いつ? 少なくとも私の世代にはそんなことしてる人はいなかったよ!
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:唐とか宋とか。ああゆう時代のえらい人はたぶんやっていたんじゃないですかね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:あ、ああ、そういう時代ね。まあでも、やっぱりそれくらい日本の「お花見文化」というのは、中国人から見ても特殊だってことだよね。寒いなかで震えながら夜桜見物をする日本人の「桜」に対する思い入れの強さに驚かなかった?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:驚きました。新入社員の場所取りとか、なんであそこまで「桜」に対して夢中になれるんですかね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:思うに、短い間に咲いてすぐに散ってしまう儚さ、ひとつひとつの花びらは小さくても、集まると見事な姿をみせるあたりがいいんでしょうね。日本人は桜に自分たちの姿に重ねているのではと分析する人もいるくらいだから。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:以前から、先輩のことを「日本人みたいな中国人」だと思っていましたが、いよいよ本格的に日本人っぽくなってきましたね。
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:そんなことないって。あと、もうひとつ思うのは、日本人のマナーがいいってこともある。ゴミはちゃんと自分たちで集めてもち帰るし、花見ができる場所と入っちゃいけないところをちゃんと分けるというルールもみんな従う。もし中国国内でお花見が流行りはじめたら・・・・・・。
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:想像するだけで恐ろしいですね。中国では「清掃員は準公務員」なんて冗談があって、ゴミを自分たちで拾ってしまうと、そういう職業の人たちの仕事を奪うことになると本気で考えている人もいますからね。そういう中国からの観光客からすれば、実はこの時期に日本の桜の木の下で開かれる「お花見」という文化こそ珍しいのかもしれません。あの、ところで先輩ってずいぶん「桜」にお詳しいですけど、そんなにお好きなんですか?
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱:うーん、まあ、きれいな花が咲いてるなくらいのイメージ?
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園:あ、そこはまだ中国人の感覚なんですね。

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呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
呉 昱 (うー・ゆー/WU YU)
北京第二外国語大学日本語学部卒業。日系PR会社にて4年間勤務後、日系電機メーカー 広報部に出向。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程を経て、オズマピーアール入社、日本企業の中国コミュニケーション戦略に従事。2011年、日中コミュニケーションについてのコラムをビジネスサイト「Business Media誠」内で連載。
<著書>『やっかいな中国人のホンネがわかる本』
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
田 園園 (でん・えんえん/DEN ENEN)
高校卒業後来日、日本の大学を卒業後、上海の大手日系百貨店にて、マーケティング部の宣伝担当として日本文化紹介イベントを数多くを企画、宣伝。中国初の上海国際映画祭「日本映画の旅」を企画。その後、CRM部門の立ち上げに携わり、EC運営も担当。2015年上海市長寧区政府より「優秀イベント主催者」受賞。日本企業の中国アウトバウンド関連業務などに携わる。

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