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【ライオンズヘルス2015】受賞作品とトークセッションから見るヘルスケア・コミュニケーションの今 ~LIFE-CHANGING CREATIVITYを求めて~

2015.10.09アカウントプランニングユニット2部 ヘルスケアチーム 津島由有子

なぜヘルスケア・コミュニケーションは脚光を浴びてこなかったのか?

本年「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」に先立ち開催される独立アワード「ライオンズヘルス」は、創設2年目を迎えました。このヘルスケア領域のコミュニケーションを対象とした新たなフェスティバル立上げのニュースを、発表当初Advertising Ageはこう報じました。「広告業界において巨大市場*1を誇りながらも、影が薄い存在であったヘルスケア・エージェンシーとそのクライアントを遂にカンヌへ招集する時が来た」と。

ヘルスケア・コミュニケーションの影と光

かつて製薬会社に勤めていた私の実感として、ヘルスケア領域のコミュニケーションが注目されない理由は大きく2つあります。まずは規制という障壁です。日本に薬事法があるように、医薬品の適正使用を目的とする規制は世界各国に存在し、生活者向けの積極的なマーケティング活動は難しい環境下にあります。続いて、常に病気や死と向き合う業界特性があげられます。第一に信頼される企業ブランドを構築するため、明るく親しみやすいイメージより、保守的なコミュニケーションを優先する傾向が見られます。

そんなヘルスケア業界が、自分たちこそクリエイティブであるべきと声高に叫ぶ2日間がライオンズヘルスです。フェスティバル・ディレクターのLouise Bensonは「ヘルスケアがクリエイティビティという武器を手に入れた時、それはビジネスを成功へ導くことにとどまらず、世界中の人々の健康に寄与する」と述べています*2。本年同フェスティバルに初参戦し、連日日夜繰り広げられたトークセッションを通じ、PRプラナーとして肌で感じた世界のヘルスケア・コミュニケーション最前線についてまとめました。

*1:米国単体で売上総額は36.2億ドル
(引用元 http://adage.com/article/global-news/cannes-add-lions-health-2014-separate-festival/242071/
*2:Lions Health 2015 Content Programme

目次

  1. トップマーケター/著名クリエイター 講演プログラムの振り返り
  2. 論点1:DATA-VISUALIZATION
  3. 論点2:ヘルスケア領域における「ユーモア」への挑戦
  4. 論点3:クライアントとエージェンシーの関係性の変化
  5. ヘルスケア・コミュニケーションにおけるPRの可能性

 

トップマーケター/著名クリエイター 講演プログラムの振り返り

本年のライオンズヘルスでは、グローバル企業のトップマーケターや著名クリエイターによる計40の講演が「行動変容」「データ」「患者中心主義」「ソーシャルメディア」「ブランディング」「コラボレーション」「イノベーション」「テクノロジー」という8つのテーマのもと行われました。そこで、全体を通じ議論のポイントだと感じた3つの要素について、先進事例を交え紹介します。

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(画像引用元 Lions Health facebook)

 

論点1:DATA-VISUALIZATION

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ヘルスケアに限らず、今日ビッグデータの活用はあらゆる領域で注目を集めています。しかし、「情報の難解さ」と「信頼できる情報の重要性」が特に高い業界ゆえ、ヘルスケアこそ「埋もれてしまう情報」を収集・整理し、分かりやすく伝える方法が求められています。日常に溶けこむ、シンプルかつ有用なデータを視覚化するコミュニケーションのあり方について、多くの議論が交わされました。
例えば、英国の広告会社がロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズとコラボレート。グラフィックデザインを学ぶ学生と医学誌NEJM掲載論文データの視覚表現プロジェクトを立ち上げています。

(画像引用元 Lions Health facebook)

 

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また、ロシアのスタートアップ企業による健康的な日常生活を促すアプリケーションYOU-appは、インスタグラムのような写真共有型SNSをベースとした画像情報によるライフログ・ツールとして人気を博しています。

(リンク)https://you-app.com/

(画像引用元 Lions Health facebook)

 

 

 

 

論点2:ヘルスケア領域における「ユーモア」への挑戦

コミュニケーション分野における普遍的なテーマのひとつは、「いかに人々を笑顔にできるか」ということではないでしょうか。ユーモアを起点に多くのアイデアが企画化される一方、ヘルスケア領域では一筋縄にはいきません。面白い表現とは、時には茶化す、ふざけているといった印象を与えかねず、命に関わる製品を扱う立場として、それは大きなリスクを伴います。そんな風潮の中クリエイティビティの原点へ立ち返り、ヘルスケア・コミュニケーションで笑っても良いではないかと業界の背中を押したのが、本年のファーマ部門グランプリでした。製薬会社が展開した魚同士がシュールに掛け合う中性脂肪啓発キャンペーン「Take it from a Fish」です。

 (ケースビデオ)
http://www.canneslionsarchive.com/winners/entry/595556/take-it-from-a-fish

他にも、英国の広告会社はスーパーマンをモチーフに従来と異なるコミカルな表現を用い、ロシア国内のED治療薬のリブランディング・キャンペーンにおいて同製品のイメージを刷新しました。

(広告会社のオフィシャル事例紹介)
http://www.pearlfisher.com/work/viagra/

 

論点3:クライアントとエージェンシーの関係性の変化

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今回、私はライオンズヘルスから引き続き、カンヌライオンズにも参加する機会に恵まれました。両フェスティバルの講演内容で大きく異なった点、それはヘルスケア・クライアントの“御用聞きはいらない、主体的パートナーであって欲しい”というエージェンシーへ向けた強いメッセージです。過去に実績がないアイデアに対しクライアントが躊躇したとしても、社内を納得させプランを実現へ導くような“意志あるエージェンシー”を求める声が随所で聞かれました。
その象徴として注目を集めた事例が、PR会社と製薬会社が手掛けた多発性硬化症の患者へ向けたオウンドWEBサイト「Living Like You」です。患者インサイトに忠実なコンテンツとして性生活にまで言及、あえてタブーに挑戦しています。

(リンク)http://www.livinglikeyou.com/en

(画像引用元 Lions Health facebook)

また、同じPR会社による、人間用の鼻孔拡張テープを競走馬に貼付しその効果を訴えるキャンペーン「Horse Sells Nasal Strip to Humans」も意表をつきました。当初難航が予想された提案において、日頃の信頼関係からクライアントである製薬会社は一発OKを出した、というのは本年のカンヌライオンズPR部門審査員長を務めたLynne Anne Davisから聞いたエピソードです。

 

ヘルスケア・コミュニケーションにおけるPRの可能性

最後にライオンズヘルス2015を振り返り、ヘルスケア・コミュニケーションに携わるPRプラナーとして残念な感想が2つあります。まず、PRの存在感が非常に薄かったという点です。カンヌライオンズとは異なり、ライオンズヘルスは対象とする領域のみを限定した「コミュニケーションの異種格闘技戦」です。本年の審査員30名中唯一のPRパーソンであったRebecca Rhodes*3は、“PRエージェンシーによる応募の中からヘルス&ウェルネス部門での受賞はたった1つ。ライオンズヘルスで評価されるPRの概念は、旧来のマスメディア4媒体(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)によるATL(Above the Line)キャンペーンの域を出ず、まるで10年前のカンヌライオンズだ”と運営体制に異を唱えています。

*3:ヘルスケア専門PR会社Virgo Health Global Executive Creative Director
(引用元 http://www.holmesreport.com/latest/article/lions-health-2015-a-pr-cannes-of-worms

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次に、ファーマ部門の不振です。同部門は、処方せん医薬品・ワクチン・バイオテクノロジーを製造販売する企業および団体、つまり主に医療用医薬品を扱う製薬会社がクライアントとして想定されています。しかし、ライオンズヘルス全体では応募数が昨年の1423点から本年は1862点へ伸びている反面、ファーマ部門では517点から432点と規模が縮小しています。第一回にも関わらず、昨年の同部門グランプリが該当なしとされたことも踏まえると、この領域におけるクリエイティビティの発揮がいかに難しいかを裏付ける結果となりました。

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私は、だからこそヘルスケア・コミュニケーションに必要なものはPRだと改めて感じています。生活者へ向けた広告の規制が厳しく、倫理と営利のバランスが問われる公共性が高い業界体質は、PRと根本的に相性が良く、PR発想のクリエイティブがいま求められています。ライオンズヘルスでPRエージェンシーがグランプリを獲るとき、ヘルスケア・コミュニケーションは新境地を開くのかもしれません。
ライオンズヘルスのテーマとして掲げられる、「LIFE-CHANGING CREATIVITY」が人々の幸せの種になると信じて、カンヌでの刺激を反芻しながら今日もPRアイデアに思いを巡らせます。

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2016.10.20広報担当
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