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企業は社会課題起因の「新型リスク」に備えよ_新しい社会課題に紐づいたリスクが増加中 企業はリスク対策のアップデートを

2021.11.18広報担当

 

企業は社会課題起因の「新型リスク」に備えよ


新しい社会課題に紐づいたリスクが増加中

企業はリスク対策のアップデートを


 

「新型リスク」の登場

 環境や人権の経営課題化、インターネットやSNSの浸透、ミレニアル世代やZ世代の台頭など社会環境が大きく変化する中で、従来と異なる新しいタイプの企業リスクが出現しています。オズマピーアールではこれを「新型リスク」と定義し、分析を進めています。新型リスクは次の3つの特徴を示します。 ①環境や人権、多様性など新しい社会課題に起因すること、②NPO/NGOやZ世代など新しいアクターが関わること、③オンライン署名やツイッターデモなど新しい手法で展開されること。以下では新型リスクの実態と企業が取るべき対策を考えていきます。

 

これまでのリスク構造(2層)

 新型リスクを検討する前に、まずは従来のリスク構造を確認しておきます。危機管理やコーポレートガバナンスを専門とする弁護士の國廣正氏によると、企業を取り巻くリスクは2層構造になっています*1。1層目は「法令違反行為」とその結果としての「法的制裁」、2層目は「社会規範に反する行為」とその結果としての「社会的制裁」で、コアとなる1層目の周りに2層目が広がっています。1層目は具体的に明示されている法令に違反する行為のため、狭義の法令順守の観点からも、対策が必要とされる領域です。これに対して2層目は、法令違反ではないが社会規範に反する行為が該当し、法令の明示がない分、対策を取りにくい領域です。リスクは2層構造であるため、既存の法令を守るだけの法令順守対応ではレピュテーション管理として不十分であり、企業は社会規範に反する「不適切行為」の対策にもっと目を向けるべきだと指摘されています。

 

これまでのリスク構造(3層)

 上記を踏まえると、新型リスクはどこに位置づけられるでしょうか。國廣氏によると、リスクの2層目を構成する社会規範は時代によって変化し、拡大します。この考えを応用し、現代のリスクは3層構造で考えると把握しやすいと私は考えています。具体的には、2層目の社会規範を「多くのステークホルダーの期待」と読み替え、さらにその外側の3層目に文化・価値観に起因する「一部のステークホルダーの期待」を置きます。3つのCで説明すると、1層目はCompliance(法令あり)、2層目はConsensus(合意あり)、3層目はControversy(議論あり)となります。これらの対となる結果としては、1層目は法的制裁、2層目と3層目はともに社会的制裁となりますが、よりイメージしやすくするために社会的制裁を細分化しました。具体的には、2層目は事業に支障を来すもの(人材流出や追加コスト等)、3層目はレピュテーションを毀損するもの(ネット炎上等)と位置づけています。詳しくは下記の図1をご参照ください。

 

 

 個々の事象を取り巻く状況は様々な要因で変化するため、層の境目は点線になっています。一般的には、一部の人が「意見」を提出することで3層目に問題が生起し、それが世の中に受け入れられて「世論」となることで2層目に移り、場合によっては法令による「規制」が設けられて1層目に入ります。リスクは動的な事象であるため、3層構造における位置づけはある時点でのスナップショットでしかありません。自社と関わりうる事象がどの層にあるかを絶えず分析し続けることが重要です。

 

新型リスクに企業はどう向き合うべきか

 図1に代表的なリスク事象を記入しましたが、これらは全体のごく一部であり、モニターするべき事象は企業によって異なります。冒頭でも述べたように、新型リスクは新しい社会課題、新しいアクター、新しい手法の3つが特徴です。これらの結節点にいるのが、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような、デジタルネイティブで新しい価値観を持った若者たちです。新型リスクに備えるためには、まず自社と関わりうる社会課題を特定し、それに連なるアクターと手法を把握し、それらが将来どのようなインパクトをもたらすか分析する必要があります。

 次に、特定した社会課題やアクターに関わっていく姿勢を見せることも重要です。これまで企業は政治や社会に関与することを避ける傾向がありましたが、今後は「沈黙は必ずしも金ならず」という認識が求められます。生活者は「結果」としての製品やサービスだけでなく、そこに至った「プロセス」や企業の「スタンス」までも知ることで、その企業が信頼できる相手かどうか、長期的な関係性を築きたいかどうかを判断しています。逆に、自社に関連する社会課題に沈黙すると、消極的に問題を容認したとみなされる恐れもあります。最近でも、アフリカ系アメリカ人への差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動で声を上げなかったBtoC企業がボイコットの対象になったり、フェイクニュース対策に消極的なプラットフォーマーが批判を浴びたりしています。

 新しい事象に対する価値観の表明やスタンスの発信は一定のリスクを伴いますが、価値表明しない企業を生活者が信頼することは難しく、購買の選択肢に挙がらなくなる可能性があります。たとえば、多くの業界でサプライチェーンにおける人権問題が持ち上がり、事業活動に影響を及ぼし始めていますが、人権方針やデューデリジェンスなどの説明がないとして、NGOや市民から糾弾されている企業もあります。他方で、人権に配慮したビジネスを求めるステークホルダーの期待に応えようと、タイの世界的な水産加工会社は取引先の漁船に監視カメラを設置し、労働状況を把握しようとしています。日本でも電機メーカーの業界団体がワーキンググループを設置し、加盟社が共同で取引先の人権侵害に関する情報収集に乗り出しました。個社、業界とレベル感は異なりますが、人権侵害をしないと表明し、できることに取り組もうとする姿勢は共通です。

 新しい社会課題に起因する新型リスクに、企業はどう向き合うことができるか。多様なステークホルダーの声に謙虚に耳を傾けながら、自社が大切にしている文化や価値観を外部に伝え、行動で示す。そんな姿勢がますます求められるようになると思います。

 

*1 國廣正 『企業不祥事を防ぐ』 (日本経済新聞出版)

 

 

 

コーポレートコミュニケーション部 部長  西山 卓

全国紙記者として事件事故や行政取材などを経験した後、オズマピーアールに入社。新聞記者とPRコンサルタントとしての経歴を背景に、メディアと企業広報の双方に通じたハイブリッド人材として活動し、年間100人近い経営幹部に対峙している。経営課題と事業ステージに合致したコミュニケーション戦略を立案し、攻めのPRから守りの危機管理広報まで提供することで、経営×コミュニケーション領域におけるディスカッション・パートナーとして、幅広いクライアントから評価を受けている

◇ ロンドン大学大学院開発学研究科修士課程修了

◇ 早稲田大学 招聘講師(PR論)

 

 

 


【問い合わせ先】
株式会社オズマピーアール コーポレートコミュニケーション部
担当:西山 卓
E-mail: corp_com@ozma.co.jp

 

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