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NPO・患者会 広報「基本のキ!」①   広報活動に取り組む前に知っておきたい   ポイント

ヘルスケア本部では、さまざまな組織や団体と共に医療・ヘルスケアにまつわるコミュニケーション課題の解決に取り組む「テトテトプロジェクト」を通して、患者会などNPOの広報活動のお手伝いをプロボノ(スキルや専門知識を活用して取り組むボランティア活動)で行っています。

テトテトプロジェクトには、NPOで広報やファンドレイジング(資金調達)の業務経験を有するメンバーも携わっています。
そこで今回から4回に分けて、医療・ヘルスケアに関連するNPOにおける広報活動のコツをお伝えするシリーズをお届けします。

第1回 広報活動に取り組む前に知っておきたいポイント(今回のコラム)
第2回 コミュニケーションに役立つツールの整備
第3回 メディアに関心を持ってもらうための「プレスリリース」作成のコツ
第4回 寄付を募る「ファンドレイジング」の準備

【このコラムのポイント】
●まずは広報活動、情報発信に取り組む前に「知っておくべきこと」の全体像
●「広報」「宣伝」「アピール」など“似ているけどちょっと違う言葉”の整理
●「仲間づくり」と「サポーターづくり」は分けて考える
●仲間とサポーター、それぞれに対する「大義名分」と「共感メッセージ」を
 作る(付録付き)

佐藤 剛:オズマピーアール ヘルスケア本部 エキスパート
大手化学・化粧品メーカーにて営業を経験後、マーケティング部門にてブランドマネジャーと営業戦略立案、研究開発部門にて新規事業としてアプリとクラウドサービスの開発マネジャーを務める。
OZMA PR入社後は医療・ヘルスケア領域にて、メーカー・医療機関・NGOなど多様なクライアントの広報組織立ち上げ、ブランディング、会見・発表会、リスク・クライシスコンサルティングなどコーポレート領域を中心に従事するほか、TETOTETOプロジェクト事務局として患者会支援も行う。MBA保有。

まずは広報活動、情報発信に取り組む前に「知っておくべきこと」の全体像

皆さんは、どんな時に「広報に力を入れなきゃ!」と考えますか?

「全国にいる患者同士、もっとたくさんつながりたい」
「企業などから寄付やボランティアの支援を受けられるようになりたい」
「メディアに取り上げてもらって広く一般の人にも病気のことを知ってほしい」

私たちテトテトプロジェクトが相談をいただく際も、このような「やりたい!」という強い思いが動機になっているケースをたくさん見てきました。

そうしたシーンで私たちはこんなことを考えています。
“「患者同士」「企業」「メディア」のそれぞれで、日常的に使っているツールや情報収集の方法が違ってるから、メッセージの届け方や見せ方が変わってきそうだな”
“うまく目的に応じた「タッチポイント(伝えたい情報との接点)」と「情報流通(転載やシェアなど波及させる仕掛け)」を設計できるかな?”

それらを俯瞰すると、このように整理できます。

ですので、「『やりたい!』ことに応じたツールが用意できているかな?」「これまでどんな取り組みをしてきたのかな?」といった具合に、いろいろとお話を聞かせていただきながら、「どんな順番で」「何を進めていくべきか」を一緒になって考えることから始めることも多いです。

「広報」「宣伝」「アピール」など“似ているけどちょっと違う言葉”の整理

それぞれ似ている言葉なので、普段あまり意味を考えずに使ってしまいがちなのですが、ちょっとずつ意図することが異なるので、ボランティアなど外部の人と一緒に活動する時に「そっか、あの時こんなイメージで話してたんだ!」とボタンの掛け違いになってしまうこともしばしば。

「広報」
いろいろな立場の人とコミュニケーションを図ることで、理解や賛同を得る活動。

「宣伝」
商品やサービスを、(一般的には)お金をかけてたくさんの人に知ってもらおうとする活動。

「アピール」
考え、主張を他者に訴えかける活動。

このように整理してみると…
「アピール」は一方的に訴えかけるだけなので、相手がどう受け止めるのか(もしくは無視されてしまうのか)は考慮されていません。

「宣伝」は知ってもらうことが主な目的になるのですが、テレビCMをイメージしてもらえば分かるように、瞬間的に印象強く伝えることに向いています。
なので、イベントの告知や集客など、短期間で成果を出したい場合に強みを発揮します。

「広報」はよく「ニュースに出ること」と言われることが多いのですが、それだけではありません。
情報を届けたい相手にあわせたツールを使って、きちんと双方向でコミュニケーションしながら、理解や賛同を得る(きちんと意識や行動に影響する)ことを目的にするので、じっくりと取り組むことが大切になります。

「仲間づくり」と「サポーターづくり」は分けて考える

ここでは「患者さんに知ってもらうこと=仲間づくり」と「寄付やボランティアの募集=サポーターづくり」に分けて考えてみますね。
これらもよく相談されるテーマなのですが、メッセージを伝えて気持ちや行動に働きかける相手が異なるので、それぞれにあわせた伝え方の工夫が必要です。

仲間づくり=個々が抱える不満や不安に寄り添う
様々な患者さんや患者会の皆さんとご一緒した経験を振り返ると、「周囲に同じ境遇の人がいない」「治療以外のことで悩みを打ち明けられない」「生活支援などの情報が不足している」といった、「個人の」病気・治療・日常生活に関わる「不安の解消」を望まれていたり、それに取り組もうとされていたりすることが多いです。

サポーターづくり=世の中のみんなで解消するための大義名分
それに対して、寄付やボランティアをしてくれた人に話を聞くと、「困っている人が“こんなにいるんだ”と初めて気づいた」「これは“社会みんなで解決しなきゃいけない”ことだと思った」のように、「多くの人の悩み」や「社会の問題」といった「共通項」で括り、「自分にできること」を重ねているケースが多いように感じます。

仲間とサポーター、それぞれに対する「大義名分」と「共感メッセージ」を作る(付録付き)

今回のコラムでお伝えしたかったことをまとめると、

●広報活動で実現したいこと、目的を具体的に分けて考える
●メッセージを伝えたい相手に応じたツールを選ぶ
●達成したい時間軸によってアプローチを変える

一口に「広報活動」と言っても、いろんな要素を考えていく必要があるんですよね。

患者会などのNPOの活動は、皆さん治療はもちろん、働いたり、勉強したり、日常生活でやらなければならないことと並行して取り組む方が多く、「そんなにたくさん自分たちだけじゃ無理だよ!」と思われるかもしれません。

そんな時、ぜひ私たちを頼ってください。
医療・ヘルスケアの知識を持った、NPOのことも理解したテトテトプロジェクトのメンバーが、一緒に考えながら伴走しますので、1つひとつ、できることを増やしていければと思います。

最後に、「仲間づくり」や「サポーターづくり」など、立場の違う相手に対してアプローチを検討する時に考えを整理するためのシートをご用意しました。

【シートの使い方】
①まずは「自分たちが成し遂げたいこと」を整理する

②次に「アプローチしたい相手の思考や感情」を想像する
③最後に、双方を結び付ける「大義名分=何のために」と
 「共感メッセージ=何を伝えるべきか」を考える


自分たちが言いたいことを一方的に押し付ける「アピール」ではなく、短期的なつながりで終わる「宣伝」でもない、理解や賛同を得て長いお付き合いをするための「広報」を考えるヒントになりましたら嬉しいです。

次回は、ホームページやSNSなど広報で使う「ツール」についてお届けする予定です。

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