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複雑化・高度化する平時の情報発信    今こそスポークスパーソントレーニングが 必要な理由

オズマピーアールは、企業・団体を代表してメッセージ発信する経営者、役員などの「スポークスパーソン」に対し、平時の記者会見を想定したメディアトレーニングを提供してきました。近年は発表内容とは関係ない社会的な質問が投げかけられたり、株主やアナリストといったステークホルダーの発言力が高まったりと、対応の難しさが一段と高まっています。本コラムでは平時の情報発信の注意点について、事例を交えながら紹介します。

●一般的になったメディアトレーニング

新商品発表会見や新事業説明会のほか、決算説明会、業務・資本提携会見、株主総会など、スポークスパーソンがメディアを含めたステークホルダーに発信する機会は多くあります。特に、メディアに接する場面はカメラや記者に囲まれる独特な雰囲気で行われるため、対応者がうまく自社のメッセージを発信できず、本来の趣旨と異なる記事が出てしまうことも少なくありません。プレゼンテーションや質疑応答などでの効果的な情報伝達スキルを習得するメディアトレーニングは、いまやスポークスパーソンの「通常装備」になりました。

●変化が見られる平時の質疑応答

しかし、最近では発表内容と直接関係ない社会トレンドに関連した質問を投げかけられ、ミスコミュニケーションが発生している場面を見かけます。背景にはグローバルな社会課題が顕在化している中、利益を追求する企業にも環境・社会・ガバナンス(ESG)やSDGsに配慮した経営が求められていることがあります。日本でも気候変動や人権問題などに対する消費者や投資家の関心が高まっており、それを受ける形で、スポークスパーソンの情報発信が複雑化・高度化しています。具体的には、決算発表や株主総会で事業内容に関連する社会課題への対応状況を問われたり、メディア以外の株主やNGOなどから経営方針や企業姿勢を厳しく追及されたりしています。

上記の変化をまとめると、ポイントは下記2点になります。

・平時の質疑応答でも、発表内容とは直接関係のない社会的な質問
 への対応が必要となった

・それは決算発表や株主総会などでも見られ、対話の相手もメディア
 だけでなく株主やNGOなどに広がった

社会課題を問う質問に対して適切な回答ができないと、「人権問題や気候変動への意識が低い会社」と批判されたり、長期的な成長が見込めないとして投資家から敬遠されたりするリスクが出てきます。自社をアピールするポジティブな記者発表を開催したにもかかわらず、スポークスパーソンによる不用意な発言によって、自社のレピュテーション毀損を招く恐れもあります。

●スポークスパーソンが難しい対応を迫られた事例

この章ではシチュエーションごとに、実際のミスコミュニケーション事例を紹介します。

①通常の記者会見

2022年9月、フランスのサッカーチームの監督らが記者会見で、短距離の移動に気候変動の影響があるとされるプライベートジェットを使用していることについて尋ねられ、「ランドヨット(風で動く陸上ヨット)で移動できないか協議したところだ」と冗談で返しました。この環境問題を軽視した発言がSNSですぐさま拡散、環境活動家などから多くの批判を招きました。さらには、パリ市長や大臣などの政治家も反発することとなり、翌日には監督が謝罪に追い込まれました。

②決算発表

大手アパレルメーカーの決算発表会見が2021年4月に開かれ、中国・新疆ウイグル自治区で生産された綿花を自社製品に使用しているかなどを問われたトップが「ノーコメント」と返答。人権問題に正面から向き合わないかのような発言について主要媒体を含めて多数のメディアが報じたほか、SNS上でも専門家や一般ユーザーから「人権問題なのに企業の説明責任を放棄している」などと批判が集まりました。

③株主総会

2022年6月にメガバンクが開催した定時株主総会で、国内外の非政府組織(NGO)などから温暖化対策の「パリ協定」に沿った事業計画策定・開示などを求める2議案が出されました。可決に必要な3分の2以上の賛同は得られなかったものの、1つの議案については3割(速報値)近い賛成を獲得。総会では株主から化石燃料融資の早期取りやめを求める質問も出されました。

●今後は社会課題とマルチステークホルダーを想定した
 トレーニングが必要

発表内容に焦点を当てた想定質問の準備、質疑応答の練習だけでは、今後不十分であることがお分かりいただけると思います。従来のように企業取材を担う経済部記者だけでなく、社会問題・環境問題への関心が高い社会部記者や株主・NGOなどの幅広いステークホルダーへの丁寧な情報発信準備が必要です。さらに、その機会は平時の記者会見から株主総会まで、様々なシーンで求められることになるでしょう。

つまり、対外的な情報発信のあらゆる場面で、「自社に関わる社会的な問題」について問われる危機感を持ち、多岐にわたるステークホルダーを想定したメッセージ発信を心掛けることが重要です。そのためには、スポークスパーソントレーニングの機会を平時の記者会見以外にも広げ、社会的なテーマに関する質疑応答も練習しておくことが大切です。

オズマピーアールではメディアとコーポレートコミュニケーションの知見を備えた専門スタッフが企業トップや役員などのスポークスパーソンに対し、攻め(ポジティブなテーマ)・守り(ネガティブなテーマ)両方のトレーニングを数多く実施してきました。近年では、複雑化・高度化する社会背景を念頭に、平時の記者会見だけでなく、決算会見や株主総会など幅広いシーンにおいて、社会トレンドを踏まえた適切な情報発信をサポートしています。「社会的なテーマにどう対応したら良いか分からない」「メディア以外のステークホルダーへの対外発信スキルがない」などのお悩みのある方はぜひご相談ください。


コーポレートコンサルティング部 シニアアソシエイト 青木 大希


【問い合わせ先】
株式会社オズマピーアール コーポレートコンサルティング部
E-mail: corp-consul@ozma.co.jp

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