1. ホーム
  2. コラム
  3. NPO・患者会 広報「基本のキ!」③   メディアに関心を持ってもらうための  「プレスリリース」作成のコツ

NPO・患者会 広報「基本のキ!」③   メディアに関心を持ってもらうための  「プレスリリース」作成のコツ

患者会などNPOの広報活動のお手伝いをプロボノ(スキルや専門知識を活用して取り組むボランティア活動)で行う「テトテトプロジェクト」。
NPO経験者としてプロジェクト事務局を担当するメンバーがお届けする、医療・ヘルスケアに関連するNPOの広報が知っておきたいシリーズ第3回です。

今回はメディア向け広報活動として必須の「プレスリリース」がテーマです。

第1回 広報活動に取り組む前に知っておきたいポイント
第2回 コミュニケーションに役立つツールの整備
第3回 メディアに関心を持ってもらうための「プレスリリース」作成のコツ
     (今回のコラム)

第4回 寄付を募る「ファンドレイジング」の準備

【このコラムのポイント】
●「プレスリリース=メディアへの売り込み」という思いが不幸を招く
●プレスリリースを作成する際の基本的なお作法
●メディアを攻略するには相手を知ってから!ニュースの読み解き方
●ニュースの3つの型とNPOが作るプレスリリースの構成案(付録付き)

筆者:佐藤 剛(オズマピーアール ヘルスケア本部  エキスパート)

「プレスリリース=メディアへの売り込み」という思いが不幸を招く

皆さんは「プレスリリース」と見聞きして、どんなイメージを持たれるでしょうか?

「メディアへネタを“売り込む”ための文書」
「自分たちの“伝えたいこと”をまとめた広告文」
「テレビや新聞で“扱ってほしいこと”をまとめたシート」

これらは私が「プレスリリースを出してみたいんですけど」と話をいただいた際に、ディスカッションを進めていくなか、NPOで広報の役割を担っている方から聞いた言葉です。

また「プレスリリースを出せばメディアが(ほぼ必ず)見てくれる」「プレスリリースを出せばメディアから(ほぼ必ず)取材してもらえる」といったニュアンスの考えを持たれていることも多い印象です。
※( )は話しぶりのトーンから、きっとこういう期待を持ってるんだろうな…と感じることです。

時には「原稿を作ってみたので見てもらえませんか?」という流れになることもあります。
しかしながら、いきなり現実的な結論で申し訳ありませんが、
「そのリリース、ほぼ100%見られません…!」
と初見で感じることが非常に多いのです(配慮して口には出しません)。

なぜなら、プレスリリースは「自分たちが言いたいこと」ではなく「メディアが『調べてみよう、話を聞いてみよう』と感じること」を書く必要があるからです。

そのために「まずは目に留まり」「続きを読んでもらう」ための工夫や配慮が盛り込まれている必要があります。
今回はそのテクニックをお伝えしたいと思います。

プレスリリースを作成する際の基本的なお作法

「“初”や“最高”のように、良く見せるための言葉が必要なんですよね?」

プレスリリースを初めて作る人から時折、受ける質問の代表例です。
確かに一理あるのですが、そもそも大事なのが「なぜ“初”や“最高”が望まれるのか?」というメディア側の意図を正しく理解することです。

「ニュース」を英語にすると「News」です。
「New=新しい情報、今まで世の中に知られていなかった事実」が複数、という意味です。
こう言われたら「そりゃそうでしょ」という気持ちになるかもしれませんが…

メディアの役割は「世の中の人に伝えるべき新たな事実を、客観性をもって報ずる」ことにあります。
なので、既知の情報ではなく「初めて」や「これまでにない」というポイントが必要になります。

さらに「事実を、客観性をもって」という点も重要になります。
目を引こうとするために形容詞を多用したり、誇張した表現を用いたりしても、メディアは「これは裏付けがあるのか?客観的な証拠に基づいているのか?」という観点で物事を俯瞰して見る力を備えています。
結果的に、言葉だけで見栄えを良くしていることはバレてしまい、「価値がない」とジャッジされますので注意してください。

あわせて気を付けたいのが、「なぜ今?」の視点です。

グローバルに連携が進んだ世界では、遠い国の出来事だと思っていたことが私たちの生活に影響してくることも増えてきています。
また日本国内の政治や経済も日夜、目まぐるしく状況が変化し、日常的に発生している事件や事故もたくさんあります。

つまり「New」にあふれている社会において、メディアは「何を取材し、どれを報道するか」を毎日、もしかすると毎時間ごとに考え直している可能性が高いのです。

そんな「少ない椅子」をめぐって様々な企業や団体がプレスリリースを配信していますので、目に留めてもらい、読み進めてもらうためには、自分たちの言いたいことだけではなく、それが世の中や人々にどうかかわり、影響するのか、「それを今、報じる理由」とセットでなければなりません。

メディアを攻略するには相手を知ってから!ニュースの読み解き方

「そんなこと言われても、すぐに考えられないよ…」
そんな声が聞こえてきそうです。

私たちはプランニングする際、ほぼ必ずと言って良いほど「報道分析」を行っています。
広報するテーマに近い内容のニュースを徹底的に読み解き、「どんな要素が必要なのか」を洗い出すことで、少しでもメディアに関心を持ってもらう工夫をしています。

例えば具体的に、ヘルスケアに関する新聞の記事はこのような構成になることが多いです。

①「どのように報道されるのが望ましいか」というゴールイメージを描いてから
 逆算する
②それぞれのパートで必要になりそうな要素を集めストーリーに組み立てていく
③必要に応じて追加のリサーチ、アンケートやヒアリングを行いながら、深みの
 ある情報を作っていく

このような順番で考えていき、企画を練っていきます。

ニュースの3つの型とNPOが作るプレスリリースの構成案(付録付き)

今回のコラムでお伝えしたかったことをまとめると、

●プレスリリースはメディアに「読んでもらう」ための配慮が必要
●「なぜ今このネタを取り上げるのか?」をメディアに先んじて考える
●考えるために「ニュースの読み解き」を行う

慣れないうちはどうしても「自分たちが言いたいこと」が先に思い浮かび、「メディアに見てもらうためには」という考え方ができないかもしれません。

そんな時は、社会課題の解決を目指すNPOが取材を受ける際、次の3つの型に分けられることが多いように感じますので、これらもヒントに考えていけると良いと思います。

「課題提起」
●まだ世に知られていない社会の問題や潜在的な課題を当事者(団体)の専門家
 や研究者などのコメントやエピソードを交えて提起
●解決のための手法や考え方、社会記号化(「〇〇トランスフォーメーション」
 や「〇〇テック」のような「象徴ワード化」)できると浸透しやすくなる

「ソリューション提供」
●顕在化している課題、今後進展が見込まれる動向に対して、具体的な解決手法
 やさらに良くするための取り組みを紹介
●ソリューションをポジティブに受け入れている使用者の声や、改善成果が具体
 的に数字で示せることが好まれる

「人物紹介」
●社会的に話題化されているテーマ(例:海難事故に関する危機管理の専門家)
 や、ソーシャルイシュー関連(例:国家間の争いに関する国際政治の研究家)
 などを解説
●ホットトピックについてメディアが報道に深みを出したり客観性を持たせたり
 するために、KOL(キー・オピニオン・リーダー)のコメントを「第三者の
 声」や「時の人の解説」として扱う

最後に、プレスリリースを作成する際に、考えたり調べたりするポイント、記載しておくと良い観点をチェックするためのシートをご用意しました。

【シートの使い方】
①プレスリリースの構成である「タイトル(メイン・サブ)」「リード」
 「社会課題(マクロ・ミクロ/定量・定性)」「ソリューション」
 「ビジョン」「問い合わせ先」の各項目について、
 まずは「自分たちが言えること、知っていること」を書いていく


②次に各項目の「メディアの観点、知りたいこと」に照らし合わせて、
 書いた内容がカバーできているかチェック

③カバーしきれていない点については、追加でオープンデータなどを
 リサーチして可能な限り書き足す

皆さんも普段は、ニュースを見たり読んだりする立場で接していると思いますが、「ニュースをつくる」側に立ってみようとすると、また違った視点で自分たちのことを見直すきっかけにもなりませんか?

実はそうした地道な積み重ねを続けていくことが、広報パーソンになっていくための近道だったりしますので、じっくり腰を据えて取り組んでいけると良いですね。

次回は、NPO運営の命綱「ファンドレイジング」についてお届けする予定です。

新着コラム

お問い合わせ

pagetop