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日本産米粉の米国ベーカリー向けブランドイメージづくり

日本産食品の“価値翻訳”に挑戦 ~日本産米粉の米国ベーカリー向けの普及を目指したプロモーション~

街にひと足踏み出してみると、さまざまな地域の食文化と出会うことが珍しくない昨今、食文化の多様化は日本だけに留まらず、同時多発的にグローバル規模で進んでいます。世界各国の産品が手に届きやすくなり食の異文化の共生が進んでいるだけでなく、異文化同士のミックスにより新たな食文化が生み出されはじめています。

一方、日本では主食用のお米の需要が年々減少しており、国内外で新たな消費の需要創出が求められています。今回、私たちは日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO※)の事業を通じて、米国での日本産米粉のベーカリー事業者向け統合型マーケティングコミュニケーションを実施しました。海外に向けて日本の米製品の需要を喚起するためには、食べ方をローカライズし、新たな食文化として定着させていく必要があります。世界の中でもさまざまな食文化の融合が進む、まさに“食文化のるつぼ”の米国で、私たちが行ったこと―日本産米粉の特長を単に言語的に翻訳して伝えるのではなく、食品素材としての価値を現地の食文化やニーズにあわせて提案=“価値を翻訳”して輝かせる―そのために役立った3つのポイントをお伝えします。

戦略

アプローチ戦略

  1. 機能的ファクトのヒントを導き出す
  2. 日本産米粉のポテンシャルを引き出す
  3. ニーズを踏まえたメッセージを訴求する

PR施策 活動内容

[アプローチ戦略1]
機能的ファクトのヒントを導き出す

求められる他国産にはない米粉の特長

お米を製粉した米粉は団子やせんべいの原料として使われていますが、最近では麺やパンが作れる米粉も多くなっています。米粉を使用した麺はツルっとモチモチに、パンはしっとりと焼き上がりやすいなどの特徴的な食感に注目が集まっています。さらに小麦粉などに含まれるグルテンが入っていないため、グルテンフリー食材として目にすることが増えました。ただし、グルテンフリー食材はほかにも多くの種類があり、かつ米国にはすでに自国産・あるいは他国産の米粉がすでに流通しているため、日本産米粉が素材として優れているという機能的ファクトが求められます。原料となる米の種類や品質訴求だけではなく、米粉になったときにどういった違いを生むのか。私たちは日本が誇る先進的な製粉技術や他国にはない米粉の品質管理に着目しました。

〔米粉研究家による検証の様子〕
検証を重ねて日本産米粉の特長を抽出

米国では米粉はキヌアやオーツ麦など数ある雑穀の1種類と捉えられることが多く、また雑穀の種類でパンの製法が異なることはほとんどありません。そこで日本の米粉研究家と複数種類の米粉による焼き上がりの違いを検証し、高い均一性を誇る日本産米粉だからこその粒子の大きさ別・アミロースの含有量の違いによる、最適なパンの種類を明らかにしました。また、米粉が抹茶やカカオなど生地に練り込む“素材の味を引き出しやすい”特長を確認し、米粉の種類や製法を使い分けるとより多様なベーカリー製品に活用できるといった機能的ファクトのヒントを導きました。

[アプローチ戦略2]
日本産米粉のポテンシャルを引き出す

レシピの研究・開発を通じた特長の受容性の確認

こうして導いたファクトの発信に努めるだけでなく、米国ベーカリーにとって、何があると日本産米粉を扱いたくなるのか、その受容性の検証も行いました。そこで米国で著名な料理コミュニティと多様なグルメトレンドを生み出し続けるベーカー(ベーカリー職人)などのインフルエンサーに、それぞれ日本産米粉を使用したレシピの研究と開発を依頼しました。

〔グルメトレンドを生み出すベーカーらとレシピを開発〕
(左:Sam氏、右:Waldo氏)
トップランナーが引き出した日本産米粉のポテンシャル

日本での特徴的な米粉パンの製法や機能的ファクトのインプットは両者のインスピレーションを非常に刺激し、メイドインジャパンという信頼性を裏付けるように、素材としての均一性と安定性の高さが評価されました。また、現地でのローカライズアイディアの共創から、米国で人気のメニューでありながら、日本産米粉を使うことで砂糖などの量が控えめで済むレシピとしてチョコレートケーキやスポンジケーキなどを開発しました。これらを試食したベーカリー関係者からは、「米粉を使っているとは思わなかった」「小麦粉でつくるよりも美味しい」と味に対しても驚きの声があがりました。素材の味を引き出す日本産米粉ゆえの“健康的で美味しく仕上がる”ポテンシャルを発見したことで、米国のベーカリーマーケットを知るトップランナーたちから1つの共通したメッセージが浮かび上がってきたのです。

〔開発したレシピ〕
(左:チョコレートケーキ、右:エンジェルフードケーキ)

[アプローチ戦略3]
ニーズを踏まえたメッセージを訴求する

米国では小麦粉に替わるグルテンフリー食材として日本産米粉の普及を目指していましたが、機能的ファクトの導きとローカライズアイディアの共創を経たポテンシャルの引き出しから、普及への別の切り口が見えてきたのです。もともと高所得者層を中心に、心身の健康を維持するウェルネスに対して意識の高い米国ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、幅広い所得層でも健康が意識されるようになり、肥満を抑えるために食生活に変化が起こっていました。

ターゲットのすそ野を広げるメッセージの訴求

数多くのベーカリーへのヒアリングを通して、マーケットでは健康志向の食材を使用するときは、味に妥協をしてきた傾向があったことが明らかになってきました。そこで日本産米粉の “素材の味を引き出す”特長に着目して、“小麦粉の代替食材“という切り口だけでなく、健康志向と味覚の追求が両立できる“美味しくヘルシーな食材”という切り口でもメッセージを発信することに可能性を見出したのです。レシピの開発に協力してもらった料理学校とインフルエンサーにはワークショップに登壇してもらい、またニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスの約400店舗のベーカリーにダイレクトマーケティングによってこの特長とメッセージを発信しました。その結果、多くのベーカリー事業者店舗から、試作用のサンプルの希望が集まりました。

〔Sam氏が登壇したワークショップの様子〕

成果

“価値翻訳”で日本産品をGlobal Branding
  

私たちは米国マーケットにおける日本産米粉のポジショニングと米国ベーカリーニーズをつぶさに把握し、その裏付けに基づいて小麦粉の代替食材としての利用だけでなく、日本産米粉の特長を、食文化の融合の進む米国のニーズに合わせて “価値”と受け止められるよう翻訳しました。そして、美味しくヘルシーな食材としてのポテンシャルを見出し、日本産米粉の普及と取扱い拡大のサポートに挑戦しました。これからも日本産品のポテンシャル、マーケットの受容性を高度に検証していくことで、グローバル規模での日本産品の普及をお手伝いしていきます。

プロジェクトメンバー

執行役員 兼 アカウントプランニング本部 本部長
榑林 佐和子

戦略PR・マーケティングブティック会社を経て、2010年オズマピーアール入社。食品・飲料・日用品・製薬など幅広い領域のマーケティング・コミュニケーションの戦略立案から実施まで数多く手がける。また、日本貿易振興機構や民間企業のクラフトビールや日本酒などアルコール飲料の国内・海外ブランディングPR実績も多数持つ。

ビジネス開発本部 ブランドデザイン部 部長
谷澤 和哉

2006年オズマピーアール入社。戦略PR・マーケティングブティック会社、博報堂東京本社PR戦略局への出向を経て、2014年から2年間北京に駐在。その後インバウンド専門ベンチャー「wondertrunk&co.」の立ち上げに参画。これまで日本政府観光局、日本貿易振興機構はじめ、グローバルでのPR・ブランディング業務に携わる。早稲田大学招聘講師(Global PR論 2020-現在)。


ビジネス開発本部 ブランドデザイン部 コミュニケーション・プロデューサー
伊郷 美貴

大学院でジャーナリズムを専攻した後、2012年に株式会社オズマピーアール入社。国内外問わず、​マーケティングコミュニケーションから、企業・団体のレピュテーション向上に寄与するコーポレートブランディングまで従事。


ビジネス開発本部 ブランドデザイン部 コミュニケーション・ディレクター
小山桂樹

大手旅行代理店にて旅行商品の企画などを担当し、2017年にオズマピーアール入社。行政や民間事業者の訪日プロモーション、さらには日本産食品の海外へのアウトバウンド・ディストリビューションを手掛ける。


ビジネス開発本部 コーポレートコンサルティング部 シニアアソシエイト
清水 晧平

2019年にオズマピーアール入社。コーポレートコミュニケーション分野で、外資系飲料メーカーのPRを担当する他、企業・団体のレピュテーションに関わるメッセージや情報発信のコンサルティングに携わる。

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