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今、企業にパブリックアフェアーズが必要な理由

近年ニーズが高まっているパブリックアフェアーズとは、事業の持続的な発展のために、法律や規制などのルールに影響を与えること。

オズマピーアールでは「ルール形成コミュニケーション」としてサービスを設けています。具体的にどのようなことを行うのか、必要とされる背景やその目的について解説します。

“ルール形成”によって強制的な行動変容をもたらす

パブリックアフェアーズとパブリックリレーションズは、活動内容や基本的な考え方において共通しています。これはPR会社である弊社がパブリックアフェアーズに取り組む理由のひとつです。

ただし異なるのは、そのターゲット。マルチステークホルダー発想で、市場の外にいるプレイヤーである立法(政治家)や行政(官僚)、地域住民、NGOなどを巻き込み、戦略的に働きかけます。

ルール変更によって、ある種強制的な行動変容をもたらすことができるため、非常にパワフルなソリューションとなります。昨今のPRに関するアワードにおいて、ルール形成の視点が注目されているのも、このためです。

ルールは「守るもの」?「作るもの」?

日本はルールを「守る」社会。企業においても、ルール形成が自社のビジネスにつながるという思考はあまり見受けられません。しかし海外では、ルールは「作る」(もしくは「変える」)という発想で、積極的に自分たちに有利なルールを作ります。それは悪いことでもずるいことでもなく、民主主義の担い手なら普通のこと。「ロビイング・パブリックアフェアーズは、日本国憲法十六条で規定されている請願権である」という方もいます。

グローバルにビジネスが展開される今、企業は「ルール形成に関与することは、正当で、大切な権利である」という意識をもっと取り入れなければいけません。

なお、急速にテクノロジーが進化し、ビジネスが多様化する中で、既存のルールが「しがらみ」としてビジネスの妨げとなるケースや、一方で「事業継続の砦」としてルールの維持が求められるケースが増加しています。

そのためルール形成の方向性は、「規制を強化する(壁を高くする)」アプロ―チと、「規制を緩和する(壁を壊す)」アプローチに分かれます。ともすると、規制緩和は「良いこと」で、規制強化は「悪いこと」と見做されがちですが、業界ごとに事情が異なるため、フラットに判断すべきだと思います。

国がルール形成への取り組みを奨励する理由

現在、日本は国としても問題意識を持っており、経済産業省は企業に対してルール形成への積極的な取り組みやスキルアップを奨励しています。

その背景には、国内では安定している産業であっても海外企業と比較すると競争力が落ちてしまう、国内の市場が小さくなっているため海外進出を図らざるを得ない、イノベーションが起きていない…など、さまざまな理由があります。

中でも、大きな理由として以下の3つが挙げられます。

①日本の法制度をアップデートする必要性が高まっている
テクノロジーが関連する新しいサービスなどに法制度が追いついておらず、企業も行政も改正の必要性を感じる機会が増えています。同時にディスラプティブな新サービスに対し、いかにエコシステムを守っていくかも求められます。

②消費者が社会課題に対して敏感になってきている
以前は、企業は特定のステークホルダー、競合と消費者、株主を意識するだけでビジネスはうまくいきました。しかし現在は、非市場分野である行政やメディア、地域住民、NGO・NPOなど、あらゆるステークホルダーに意識を向けなければ企業にとってリスクになります。

③民間と行政のコラボレーションのハードルが下がった
行政と民間が一緒に課題解決すること(コレクティブインパクト)が一般的になってきました。行政と民間で人材が往来していることから、民間側にも行政側のノウハウや考えが入りやすくなってきています。

社会と対話し、より良い社会の実現に貢献する

「ルールを変えるなんて自社には関係ない」と思われがちですが、例えば社会的に論議を呼びそうな新商品やサービスをローンチする際に、「社会がどう考えているのか反応を知りたい、味方が欲しい。印象を良くしたい」といったことはよく起こります。このように幅広いステークホルダーとの対話を図りたいときにもパブリックアフェアーズは有効です。

企業が設定すべきゴールがわからない場合にも、私たちは計画段階からワンストップでサポートし、ビジネスが伸びるポイントを提案します。企業が直接接点を持ちにくいステークホルダーにもアプローチし、より広い視野からシナリオを設計していきます。

社会的な必然性を高めるために「大義名分を作る」というと、こじつけるようなイメージを持たれることがありますが、全くそうではありません。パブリックアフェアーズは企業の利益や私益を求めるだけでは、どうしてもうまくいきません。

重要なのは「社会課題を解決する」という視点。その視点に基づいてルールを形成することは、人々がより暮らしやすい社会の実現に近づくことにつながります。企業は今、まさに「社会の公器」としての役割を求められていると言えます。

井上優介
パブリック・アフェアーズチーム
国際NGOにて、アドボカシー活動のプロボノ経験あり。メディアの編集委員・編集長クラスに加え、NGPOといったソーシャルセクターや政治家・官僚といったポリシーセクターに広くネットワークを持ち、パブリックアフェアーズ、アドボカシーが専門分野。社会課題と企業・団体の課題を掛け合わせた「ルール形成戦略」キャンペーンの立案・実施を得意とする。観光、製薬、ITなど幅広い分野の公共政策キャンペーンでプロジェクトリーダーを務める。

◇ 多摩大学ルール形成戦略研究所客員研究員
◇ 経済安全保障コーディネーター

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