社会や生活者とともに価値を創造していく「パブリックリレーションズ(PR)」の視点は、近年、マーケティングの領域でもいっそう重要になっています。2024年には日本マーケティング協会が34年ぶりにマーケティングの定義を刷新。マーケティングは単なる販売手段ではなく、ステークホルダーとの持続的な関係構築を目指すプロセスへと変化していることが示されました。
オズマピーアールは、1963年の創業以来多くの企業・団体において、PRを軸にマーケティングを含むコミュニケーションの総合的な支援を行ってきました。2024年には「マーケティングコミュニケーションチーム」を独立組織として設立。長年にわたり蓄積してきたマーケティングコミュニケーションのノウハウをメソッドとして確立し、実践を進めています。
PRとマーケティングが重なる時代にこそ求められる提供価値について、マーケティングコミュニケーションチームのリーダーを務める杉山太一が解説します。
■マーケティングとパブリックリレーションズが近づく今、求められるマーケティングコミュニケーションのあり方とは
2024年、日本マーケティング協会(JMA)によるマーケティングの定義が刷新されました。
「(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」
この刷新は実に34年ぶりのことで、業界から大きな注目を集めました。マーケティングやパブリックリレーションズに携わる人間ならば、これはまさに時代に即した刷新だと実感をもって迎えたのではないでしょうか。ここでは20年以上にわたってPRパーソンとして経験を積んできた私の視点から、新しいマーケティングの定義を読み解いていきたいと思います。

刷新の背景としてJMAは、「顧客の分析を目的としたテクノロジーの活用の高度化」「シェアリングやクラウドファンディングなどデジタル技術を活かした新しいビジネススキームの台頭により、企業と顧客は共に価値を創造する関係性へと変化し、マーケティングにもその視座を考慮することが必要」「長期的な視点で社会の持続可能性に貢献する組織かどうかをステークホルダーに評価される時代」と述べています。
端的に言えば、プロダクトアウト型のマスマーケティングだけでは成果につながりにくい局面が増えている実状を示しています。従来は、企業発信の情報を広告、SNS、パブリシティ、店頭など、ターゲットに合わせつつも「ワンメッセージ・マルチアングル」に展開するのが主流でした。今は生活者の志向・価値観がより細かにクラスタ化し、ワンメッセージを届けるだけでは生活者に自分事として捉え、選択してもらうことがいっそう難しくなっています。
また他方で、SNSの普及・発展に伴い、生活者は日々SNSを介した大量の情報に直接的に触れるようになり、その中で企業がどんな振る舞いをしているのか、「企業の人格」が鮮明に見えるようになってきました。事業活動とメッセージに乖離が見えれば生活者は敏感に察知し、商品・サービスだけでなく企業そのものの信頼を失う事態にもなります。
そのため、マーケティング活動においては、企業が“価値=商品・サービス”を創り、“顧客に提供”するだけでなく、細分化した生活者や社会の価値観を丁寧にすくい取りながら、商品やサービスが“社会に存在すべき価値”を生活者や社会と“共に”創り出していくことが求められるようになってきているのです。その事業活動は想定される顧客に向けられるものだけでなく、取引先や投資家、社員やその家族などあらゆるステークホルダーとの関係構築とも密接に結びついていることを意識することも重要です。
これは私たちPRパーソンが活動の根底においてきたパブリックリレーションズの思想が、マーケティングの現場においても重視されるようになったことを示しています。実際、このような時代の変化に伴い、販促部門と広報部門を統合しはじめている企業もいくつか見受けられます。
以降は、PR発想起点でマーケティング、つまり事業の成長にコミットする——オズマピーアールが掲げるマーケティングコミュニケーション戦略についてご紹介していきます。
■「公益的価値」を軸にした新たなターゲット&新市場の創出で事業成長を推進
オズマピーアールでは、“ブランドの成長” と “社会の共感” を両立した“最適解=新しいあたりまえ”を生み出す独自のメソッド「社会デザイン発想®」を提供価値として、幅広くコミュニケーション戦略立案・実行を行っています。
※「社会デザイン発想®」についてはこちらをご覧ください
当然のことながら、すべての健全な商品・サービスは、社会に対してなんらかの価値を提供するものとして世に送り出されています。インフラや薬のように必要不可欠なものもあれば、必需品でなくても暮らしを豊かにするものもあります。多くの競合商品・サービスがしのぎを削る既存マーケットの中では価値の差別化は難しく、生活者の志向が細分化した現代では多チャネルで情報を展開する大量投下型のマーケティングも、思うように効果を発揮するとは限りません。
そこで私たちオズマピーアールが提案するマーケティングコミュニケーションは、商品・サービスがすでにもっている価値について徹底的に見つめ直し、再定義して新たな需要を喚起することで、市場の拡大や新しいカルチャーを形成するという内容です。ここで重要なのは、商品やサービスの外から新たに“社会的な価値”を付加するのではなく、あくまで内包されているものを起点とすること。そこからまだ顕在化されていない生活者・社会が求めている新たな価値を見つけ出すことです。これを商品・サービスがもっている「公益的価値」と定義しています。
商品・サービス主体である企業、そして受け手である生活者も気づいていなかった潜在的な需要を、「公益的価値」の提示によって喚起。新たな需要や市場を創り牽引していくことで、マーケットポジションだけでなく、世の中に対する公益的な存在価値を表す「ソートリーダーとしてのポジション」を獲得していきます。

■オズマピーアールの「公益的価値」抽出を起点としたマーケティングサポートプロセス
次に、オズマピーアールのマーケティングサポートのプロセスをご紹介していきます。
本プロセスでは、「公益的価値」を発掘し、マーケティングコミュニケーションを通じて現実にターゲットの意識や行動を変えていくことを目指していきます。そのためには一過性のキャンペーン的な活動よりも、中長期のスパンで課題解決を捉えることが重要です。仮説と検証を繰り返しながら着実に社会の共感を得て新たな需要や市場を創出し、事業成長にコミットしていきます。
また、オズマピーアールは博報堂グループとして、毎年約6,600サンプルに調査を実施している大規模生活者調査データベース「HABIT/ex」をはじめ、これまで蓄積してきた商品に関する使用実態・意識・行動やブランド評価、個人の価値観等を含む、膨大な生活者データを活用できることが、大きな強みです。独自の情報を活かしながらデータドリブンで緻密な価値デザインを進めていきます。
具体的なプロセスとしては、前述の「社会デザイン発想®」の考え方をベースに、「価値デザイン」「仲間づくり」「喚起プロセス設計」「エグゼキューション」「効果検証」の5つのステップを設定し、“ブランドの成長” と “社会の共感” を両立した最適解を生み出していきます。

ステップ1:価値デザイン(問い・提唱)
事業の成果指標(KGI)を設定。社会潮流・環境分析やKey Voice インタビューなどを経てターゲットを規定し、まだ顕在化されていない、企業や事業に内包されている社会的価値の側面である「公益的価値」を見つけ出します。
ステップ2:仲間づくり(巻込)
ステップ1で構築した公益的価値に基づき、共創相手となるパートナーの洗い出しとアクション設計を行います。パートナーは他企業、公共機関や自治体、NPO、教育機関など幅広く、社会的価値の創造のために不可欠なパートナーを巻き込み共創していきます。
ステップ3:喚起プロセス設計(喚起)
コミュニケーションにおけるKPIを事業のKGIから逆算して設定した上で、ターゲットの関心や行動パターンを見極め、効果的かつ効率的にターゲットへリーチできるチャネルやタイミングを選定した情報戦略を構築。ブランドのメッセージが社会の中で共鳴し、オーガニックに拡がっていく仕組みを設計します。
ステップ4:エグゼキューション(喚起)
SNSやメディア、オウンドチャネル、リアルな場など多様なタッチポイントを活用し、生活者との接点を増やしていきます。共感を軸に、生活者の自発的なアクションを引き出すことを重視します。
ステップ5:効果検証
実施後は事前に定めた成果指標に基づき、定量・定性の両面から振り返り。成果を次の戦略へフィードバックし、継続的に改善していきます。
■クライアントを深く理解し、事業価値と社会的価値の交点を探っていく
ここまでPRとマーケティングの融合、そしてオズマピーアールのマーケティングサポートについてご説明してきましたが、マーケティングコミュニケーションに限らず、パブリックリレーションズをお手伝いするにあたって、私たちが重要だと考えている最初のステップは、クライアント企業やその商品・サービスについて、誰よりも深く理解することだと考えています。
自社の商品やサービスについての知識や理解は当然のことながら企業がもっていますが、その魅力や価値については、案外客観視できていない部分もあります。クライアントがもともともっている価値を社会的な視点で探り、光り輝く宝石を掘り出してあるべき場所に出していくことが、私たちが存在する意義です。

リレーションズデザイン本部 副本部長 兼 マーケティングコミュニケーション1部 部長
2012年オズマピーアールグループに入社。 これまで、マーケティング領域を中心にコミュニケーション戦略のプランニングから実施までを一貫して担当。フード&ビバレッジ、飲食店、一般消費財、商業施設をはじめ、地方自治体や国政を含めた案件を幅広く担当し、各業界のノウハウを蓄積。公益的価値を捉えた “つながりのデザイン”を軸に、ターゲットの買いたい気持ちを刺激する “情報発信戦略の構築”が強み。
【引用元】
●日本マーケティング協会「公益社団法人日本マーケティング協会が34年振りにマーケティングの定義を刷新」(PRTIMES/2024年1月25日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000122632.html
●公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会ホームページ「パブリックリレーションズとは」
https://prsj.or.jp/aboutpr/