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「ad:tech tokyo 2024」に見る"人"への回帰とPRの可能性

【はじめに】

今年度よりオズマピーアールの新たな組織として誕生したマーケティングコミュニケーション領域。クライアントの“売上”にコミットすることを最大ミッションとし、PRを中核に据えたPRエージェンシーならではの発想・手法を軸にしながら、マーケティング思考もプラスすることで独自のポジショニングを構築しています。

10月にこの部署のメンバー2名が「ad:tech tokyo 2024」に参加してきたため、そのレポートをお届けします。

【「ad:tech tokyo 2024」について】

今年で16回目となるアジア最大級のマーケティングカンファレンス。2024年は10月16日(水)〜10月18日(金)の3日間にわたり東京ミッドタウン&ザ・リッツ・カールトン東京にて開催されました。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ写真提供:ad:tech tokyo事務局

「Marketing For Growth テクノロジーの進化と社会的責任」をテーマに掲げて行われた本イベントは、廃棄物を最小限にするサステナブルな運営や、AI同時通訳ソリューションによる昨今の技術を体感・実感できるものとなっていました。
開催3日間では、4つのワークショップ、7つのキーノート、そして40のカンファレンスが行われ、合計来場者数は1万4,991人(リアル参加:9,915人、アーカイブ視聴:5,076人)という、会場全体が大変な熱気に包まれたイベントでした。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ写真提供:ad:tech tokyo事務局

本イベントのタイトルに“ad”と入っていることから、一見するとPRとは距離のあるイベントではないか?と考える方もいるかもしれません。しかし、昨今のマーケティング領域の中にはad、PRのみならず様々な手法や手口がアメーバ状に混在しており、このイベントでもPRパーソンが知っておくべき最新の事象や取り組みが多く盛り込まれていました。

このマーケティング領域の変化を象徴するように、日本マーケティング協会は2024年に「マーケティング」の定義を34年ぶりに刷新。『(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。』と定義しています。この内容はPRパーソンも常に意識すべき要素が複数盛り込まれており、マーケティングの考え方が、PRの役割に非常に近づいているという印象を受けました。

【“人”への回帰】

キーノートでも触れられていましたが、ここ数年は一般生活者の中に少しずつ生成AIが浸透してきたタイミングでした。したがって今回のイベントでもAIに関する話題やAIを活用した事例の発表が多くありました。

参加したメンバーも「ad:tech tokyo 2024」ではどんな話が聞けるのか期待しながら参加。2名は別々のカンファレンスに参加しましたが、結果的に全く同じキーワードを持ち帰ってきました。それは、『人への回帰』です。

昨今では「マーケティング5.0」が謳われています。ざっくり言えば「発展するテクノロジーをパートナーとして活用し、顧客体験価値を高める」時代の到来を表した考え方です。様々な会社や団体が、「データドリブン・マーケティング」や「予測マーケティング」、「アジャイル・マーケティング」などAIやデータを活用した高度なマーケティング活動を行っています。本イベントでもこれによって成功を収めた例が多く紹介されていましたが、どの事例でも最も重要なことは常に“人(=生活者)”を意識することだと強く感じました。

例えば、18日(金)に『Well-being、サステナビリティ✕マーケティング』をテーマにしたカンファレンスが開催されました。そこで登壇した、ある生命保険会社の新規ビジネス企画担当は「Well-beingのエコシステムを作る際、重要なのは自社ではなく“人”を真ん中に据えて考えることだ、と社長からよく話がある。」とコメント。“人”を起点にマーケティング活動を実践する重要性を体現した一つの例だと感じました。

『“マーケティングトレンド”の過去と未来』がテーマの回では、「広告のコンテンツと民主化」について発表がありました。一つのガジェットレビューが企業を倒産に追いやってしまった事例や、中国では当たり前となっているライブコマースなどが紹介され、SNSの登場で情報発信のパワーが企業から個人へと移行していることを再認識しました。さらに「これから流行るトレンドは“倫理”である」といった意見もありました。生成AIなどの技術が急速に進歩する中、“人”が持つ影響力に注目していく必要があると深く考えさせられました。

『人への回帰』の言い換えは『人間志向』です。これは「マーケティング3.0(ネットを使ったマーケティングが主流になり、CSRが謳われるようになった時代)」でも提唱されました。瞬時に高度なデータ収集ができたり、顧客とのコミュニケーション自体がデジタルにシフトしたりと、無意識のうちに“生身の人間”と距離ができてしまう昨今。“人”を置き去りにすることなくステークホルダーと適切なコミュニケーションを図って関係を構築し、企業・ブランドのメッセージや生活者が有益と感じる情報や商品を届けていきたい、という強い思いを多くの登壇者のコメントから垣間見ました。

まさに、刷新されたマーケティング定義に通ずる内容であり、また多くのステークホルダーと合意形成を図りながら活動するPRとも共通する点だと感じました。

【まとめ】

「ad:tech」という名前を冠したセッションでも、“顧客や社会と共に”活動を行う重要性が説かれていることを再認識しました。これはオズマピーアールが長きにわたって取り組んできたPR活動そのものだとも感じます。
PRでもデータやデジタルを活用したコミュニケーションの重要性が説かれ、実践されています。一方で、ステークホルダーと合意形成を図りながら双方向コミュニケーションを行うというPRに欠かせない考え方が、今の時代のマーケティング活動やコミュニケーション活動で最も重要な要素の一つだと、改めて確認することができました。

「ad:tech tokyo 2024」への参加を通じて感じた『人への回帰』というキーワードは、技術の進化に振り回されることなく人間の本質を見極める重要性を多くのマーケターが感じている示唆でもあると思います。
生活者一人ひとりのメディアとしての影響力が高まっているからこそ、生活者を起点にマーケティング活動を行うこと。IT技術が進歩したからこそ適切な倫理観を持って生活者視点を大切にすべきこと。PRを核とした発想・手法をもとにマーケティングを行う私たちにとっても必須な視点であり、全ての活動の根底にあるべき最重要事項だと再認識しました。

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