株式会社オズマピーアールは2026年8月、生成AIがブランドに関する回答を作る際に、どのようにウェブ上の情報を探索し、どのような情報源を参照するのかを分析するパイロット調査を実施しました。調査の結果、単純な知識取得型の質問ではブラウジング率が4.2%にとどまる一方、理由・根拠・比較を求める質問ではブラウジング率が最大100%に達することが確認されました。この結果は、企業の情報がAIに参照される機会が、生活者の「なぜ」「どちらが良いのか」といった問いの場面で増えることを示しています。
本コラムでは、調査結果をもとに、AI検索時代に企業が取り組むべき情報発信の3つの視点を、PRの立場から提案します。
生成AIの普及が変える情報探索 ― 検索量25%減少予測と生活者行動の変化
ChatGPTをはじめとする生成AIが、情報探索の新たな起点として定着しつつあります。企業の広報・PR活動でも、生成AIの回答に自社やブランドの情報がどのように取り上げられるかという「AIO(AI Optimization=AI最適化)」への関心が高まっています。
ただし、生成AIは、どのような質問に対しても同じ方法で情報を集めているわけではありません。質問の内容によって、ウェブを検索するかどうかも、検索する情報の範囲も変わります。
これまでの情報探索では、検索エンジンにキーワードを入力し、表示されたリンクをクリックして、複数のウェブサイトを読み比べるという流れが一般的でした。現在は、生成AIに質問して情報を整理した回答を受け取り、その後、必要に応じてウェブサイトを確認するという使い方も広がっています。Gartnerは2024年、AIチャットボットなどの普及により、2026年までに従来型検索エンジンの検索量が25%減少するとの予測を発表しました※1。これは2024年時点の予測ですが、企業が従来の検索エンジンに加えて、生成AIを通じた情報接点を意識する必要性を示しています。
生活者の行動にも変化が表れています。Hakuhodo DY ONEが全国の18歳から69歳までの2,800名を対象に2026年3月に実施し、同年6月に公表した調査では、AI検索利用者の72.9%が「1年前と比べてAI検索の利用頻度が増えた」と回答しました※2。AI検索を利用したことによる変化としては、「新しい発見があることが増えた」が67.8%、「目的に到達するまでの迷いが少なくなった」が61.8%となっています。一方で、8割近くが現在もWeb検索を利用しており、AI検索を利用した後に約7割がWeb検索へ移行しています。生活者はAI検索とWeb検索のどちらか一方を選ぶのではなく、目的に応じて両者を行き来していることがうかがえます。
こうした変化は、広報・PR活動にも直結します。企業のプレスリリースや広報ブログ、調査データ、第三者メディアの記事は、生活者に直接読まれるだけではありません。生成AIが回答を組み立てるための材料として参照される可能性があります。
企業は「何を発信するか」に加えて、「どのような質問を受けたときに、その情報がAIの探索対象になるか」という視点を持つ必要があります。
AIOとは何か ― SEOとの違いとPRとの関係
従来のSEO(検索エンジン最適化)では、検索結果ページで上位に表示され、ウェブサイトへの流入を獲得することが主要な目標でした。これに対してAIOでは、ChatGPT、Gemini、Perplexityなどが生成する回答の中で、自社やブランドがどのように説明されるかが焦点になります。AIOに近い概念として、LLMO(大規模言語モデル最適化)、GEO(生成エンジン最適化)、AIビジビリティなどの用語も使われています。名称や定義はまだ統一されていませんが、生成AIによる情報探索と回答生成を踏まえて、企業の情報発信を見直すという問題意識は共通しています。
AIOをウェブサイトの技術的な調整だけで捉えるのは十分ではありません。AIが参照する可能性があるのは、企業の公式サイトだけではなく、報道記事、比較記事、専門メディア、調査データ、レビューなどを含む広範な情報だからです。企業が自ら発信する情報と、第三者が企業について発信する情報。その全体をどのように形成していくかという点で、AIOはPR活動と深く関係しています。
オズマピーアールが実施した「生成AIブラウジング行動調査」の概要
オズマピーアールでは、AI検索時代の広報・PR戦略を実証的に考えるため、「生成AIのブラウジング行動に関するパイロット調査」を実施しました。
| 調査項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名称 | 生成AIのブラウジング行動に関する調査 |
| 調査目的 | 生活者の検索・質問行動を想定したプロンプトを用い、生成AIがどのような企業・ブランドを推奨し、どのような情報源を参照するかを分析 |
| 調査対象・方法 | ある製品カテゴリを対象に、24種類のプロンプトを各6~10回入力し、計198件のAI回答を取得、分析 |
| 主な分析項目 | ブラウジングの有無、サブクエリ数、引用・参照された情報源、回答に登場した企業・ブランド、推奨理由 |
| 使用サービス | 調査時点のChatGPT |
| 調査期間 | 2026年8月 |
| 調査主体 | 株式会社オズマピーアール |
調査では、生活者が製品について概要を知る場面、複数のブランドを比較する場面、自分の条件に合う製品の推奨を求める場面などを想定し、内容や複雑さの異なるプロンプトを設定しました。最終的な回答だけではなく、生成AIが回答時にウェブを参照したか(ブラウジングの有無)、質問をどのような検索テーマへ分解したか(サブクエリ化)にも注目しています。
質問の仕方でブラウジング率が4.2%から最大100%に変わる
調査で最初に明らかになったのは、プロンプトの種類によって生成AIのブラウジング率が大きく異なることでした。
例えば、次のような単純な知識取得型の質問です。
- 「○○を教えてください」
- 「○○とは何ですか」
オズマピーアールの調査では、このような質問に対するブラウジング率は4.2%にとどまりました。一方、理由や根拠、比較を求める質問では、ウェブ上の情報を参照する割合が大幅に高まりました。
- 「なぜそう言えるのか説明してください」
- 「根拠も含めて教えてください」
- 「比較しながら解説してください」
- 「メリットとデメリットも説明してください」
このようなプロンプトでは、ブラウジング率が100%に達するケースも確認されています。
オズマピーアールの2026年8月パイロット調査(計198件分析)によると、単純な知識取得型の質問に対する生成AIのブラウジング率は4.2%にとどまった一方、理由・根拠・比較を求める質問ではブラウジング率が最大100%に達した。
生成AIは、どのような質問に対しても同じようにウェブを調べているわけではありません。単純な概要を尋ねられた場合は、すでに保持している情報を中心に回答します。それに対して、判断の理由や他社との違いまで求められると、回答を裏付ける情報をウェブ上で探す可能性が高まります。企業の情報がAIに参照される機会は、生活者が「詳しく知りたい」「比較したい」「理由を確かめたい」と考える場面で増えることになります。
複雑な質問ほどサブクエリが増え、情報探索が多くの論点に広がる
ブラウジング率とともに大きな違いがみられたのが、「サブクエリ」の数です。サブクエリとは、生成AIが回答を作るために、ユーザーの質問を分解して生成する、より細かな検索テーマを指します。
「おすすめの製品を教えてください」という質問であれば、比較的少数の検索テーマで回答できるかもしれません。一方、「安全性、価格、使いやすさを比較したうえで、なぜその製品がおすすめなのかを根拠とともに説明してください」という質問では、安全性、価格、機能、レビュー、比較情報など、複数の観点から情報を探す必要があります。
オズマピーアールの調査では、単純な知識取得型の質問に比べ、理由や比較、追加説明を求める質問では、生成AIが生成するサブクエリの数が大きく増える傾向が確認された。
この違いは、PRにとって重要な意味を持ちます。企業名が直接質問されたときだけが、AIに参照される機会ではありません。価格、安全性、環境対応、使いやすさ、導入効果といった個別の論点についても、自社の情報が検索対象になる可能性があります。AIO対策では、企業名や商品名の露出だけを見るのではなく、生活者の質問からどのような論点が派生し、その論点について自社が参照可能な情報を持っているかを点検する必要があります。
AIが推奨するブランドは認知度だけでは説明できない ― 質問の条件で推奨が変わる
調査では、生成AIが回答の中で推奨した企業やブランドと、その際に参照された情報源についても分析しました。AIが推奨したブランドの周辺では、次のような情報が確認されました。
- ニュースサイトや専門メディアによる言及
- 「おすすめ○選」「○○比較」などの比較記事
- 口コミやレビューなどの評価情報
- 特定の課題やテーマとブランドを結び付ける記事
著名な企業や市場シェアの高いブランドが回答に登場しやすい傾向はあります。しかし、認知度だけですべての回答を説明することはできません。同じ製品カテゴリでも、質問で重視する条件が変われば、回答に登場するブランドも変わります。安全性を尋ねるのか、価格を尋ねるのか、環境性能を尋ねるのかによって、参照される情報や推奨理由が異なっていました。
オズマピーアールの調査では、同じ製品カテゴリでも質問で重視する条件が変わると、生成AIが回答で推奨するブランドも変わることが確認された。AIO対策では、企業名の露出量だけでなく、自社のブランド名がどの課題や評価軸と結び付いているかという「文脈」を捉える必要がある。
調査結果をPR実務に生かす3つの視点
オズマピーアールでは、今回の調査結果を踏まえ、企業の広報・PR活動において次の3つの観点から情報発信を点検することを提案しています。
視点①:企業名ではなく、生活者が尋ねる論点から情報を設計する
生活者は、必ずしも企業名やブランド名を指定して生成AIに質問するとは限りません。「安全性の高い製品はどれか」「初心者でも使いやすいサービスは何か」「環境への負荷が少ない選択肢を知りたい」といった、課題や条件を起点とする質問も多く想定されます。
今回の調査でも、ブラウジング率やサブクエリ数は質問の内容によって大きく変動しました。この結果を踏まえると、企業側には、自社が伝えたいメッセージから発想するだけでなく、生活者が何を知り、何を比較し、どのような根拠を求めるかという視点が必要です。その質問から派生する論点を洗い出し、それぞれについて回答材料となる情報を整備する。これがAIOを考える最初のステップになります。
視点②:主張と根拠を切り離さず、セットで発信する
「高品質」「先進的」「環境に配慮している」といった企業の主張だけでは、生活者が比較や根拠を求めたときの回答材料として十分とは限りません。なぜ高品質なのか。何をもって先進的と判断できるのか。環境負荷をどのような方法で測定しているのか。企業の主張と、それを支える数値、調査結果、導入事例、専門家の見解などを近い位置で示すことが重要です。
オズマピーアールの調査では、理由・根拠を求める質問でブラウジング率が大幅に高まることが確認されました。このことは、生成AIが「根拠となる情報」を探すタイミングで、企業の情報が参照される可能性があることを意味しています。
ウェブコンテンツでは、見出しだけでも全体の流れが分かるようにする、複数の要素を箇条書きや表で整理する、数値には出典を添えるといった工夫も考えられます。これはAIだけに向けた対応ではありません。人にとって理解しやすく、確認しやすい情報は、生成AIが回答を作る際にも参照しやすい情報になる可能性があります。
視点③:第三者による言及の「文脈」を点検し、情報環境を整える
PR活動では、メディアへの露出件数が成果指標として用いられることがあります。しかしAI検索を考える場合、掲載件数だけでは十分ではありません。確認すべきなのは、企業やブランドがどのような文脈で取り上げられているかです。
- ブランド名と数値や具体的な取り組みが結び付いているか
- 他社との違いが説明されているか
- 特定の社会課題や業界課題への対応が紹介されているか
- 専門家や利用者の評価が、具体的な理由とともに記載されているか
オズマピーアールの調査では、AIが推奨するブランドの周辺に、こうした文脈を伴う第三者情報が確認されました。文脈を伴う第三者言及は、生活者にとって信頼を判断する材料になるとともに、生成AIが比較や推奨の回答を作る際の材料にもなり得ます。だからこそ、プレスリリースや取材対応でも、企業の主張を伝えるだけでなく、記者や第三者がその主張を具体的に説明できる材料まで提供することが重要になります。
AIOを「情報環境の設計」として捉える ― オズマピーアールのアプローチ
今回のパイロット調査から、AIO対策は自社サイトだけで完結するものではないことが見えてきました。生成AIが参照する可能性がある情報は、自社サイト、プレスリリース、報道記事、専門メディア、調査データ、比較記事、レビューなど、さまざまな場所に存在します。言い換えれば、生成AIが参照するのは、企業が伝えたい自己紹介だけではありません。企業やブランドが社会の中でどのように語られ、どのような根拠とともに評価されているかという、情報環境全体です。
これまでPR会社は、企業と社会の間にどのような情報や認識を形成するかを考えてきました。AI検索が広がる環境では、その設計対象に「生成AIが回答を作る際に参照する情報」も加わります。自社のことをAIに伝える、というだけではありません。社会の中に存在する自社に関する情報を把握し、生活者が比較や根拠を求めたときに、適切な情報が参照される状態をつくる。オズマピーアールでは、この取り組みを「情報環境の設計」と捉えています。
AI検索時代における広報情報設計のために
今回のパイロット調査によって、次の問いに対応することが重要であることが示唆されました。
生成AIが根拠や比較を求められたとき、自社やブランドについて参照できる情報が存在しているか。
単純な知識取得型の質問ではブラウジング率が低い一方、理由、根拠、比較などを求める質問では、ブラウジング率が大幅に高まりました。また、質問が複雑になるほど、生成されるサブクエリも増え、情報探索が複数の論点へ広がっていました。企業に求められるのは、基本情報をウェブサイトに掲載することだけではありません。生活者がさらに詳しく知ろうとしたときに生じる疑問を想定し、その疑問に答えられる数値、事例、比較軸、第三者の評価を形成しておくことです。
一見すると、これは生成AIの登場によって生まれた新しい課題に見えます。しかし、信頼できる情報を適切な文脈で社会に届け、企業とステークホルダーの間に理解を形成するという点では、PRがこれまで担ってきた役割の延長線上にあります。AIOはまだ発展途上の概念です。また、今回の調査は一つの製品カテゴリと調査時点のChatGPTを対象としたパイロット調査であり、他のカテゴリや生成AIサービスでも同じ結果になるとは限りません。
それでも、AIがどのような質問でウェブを参照し、質問をどのような論点に分解するのかを理解することは、これからの広報情報設計を考える重要な出発点になります。
オズマピーアールでは今後、対象となる製品カテゴリや生成AIサービスを広げ、生成AIによる外部情報の参照傾向をさらに検証していく予定です。企業やブランドが社会からどのように理解され、どのような根拠とともに説明されるべきか。オズマピーアールは、AI検索時代における企業の情報環境の把握と設計に、PR会社として伴走していきます。
AIOを踏まえた広報・PR戦略の立案や、生成AIにおける自社ブランドの見え方の分析にご関心をお持ちの方は、オズマピーアールの問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. AIOとSEOは何が違うのですか?
SEO(検索エンジン最適化)は、検索結果で自社サイトを見つけやすくし、検索ユーザーとの接点を増やすための取り組みです。一方AIO(AI Optimization=AI最適化)は、生成AIが回答を作成する際に、自社やブランドについて適切に説明できる情報を整える考え方です。SEOが検索結果を通じた情報発見性の向上を重視するのに対し、AIOは自社サイトやプレスリリース、報道記事、調査データなどを含め、生成AIが参照する情報環境全体を整えることに重点があります。
Q. 自社でもブラウジング行動調査はできますか?
生成AIに自社の製品カテゴリに関する質問を入力し、どのような情報源が参照されるかを確認することは、自社でも試みることができます。ただし、体系的な分析には、プロンプトの設計や結果の分類など専門的な方法論が必要です。オズマピーアールでは、こうした調査の設計・実施・分析についてもご相談を承っています。
Q. AIO対策として、まず何から始めるべきですか?
オズマピーアールでは、まず生活者が自社の製品やサービスについてどのような質問をするかを洗い出すことを出発点として推奨しています。その上で、各質問に対して自社の主張を裏付ける数値・事例・第三者評価が存在するかを点検します。不足している情報があれば、プレスリリースやウェブコンテンツ、メディア対応を通じて整備していくことが重要です。
著者プロフィール
古橋 正成(ふるはし・まさなり)
株式会社オズマピーアール 上席執行役員 兼 社会潮流研究所 主席研究員
投資銀行業務を経て、米系PR会社にて主に危機管理広報、パブリックアフェアーズ、イシュー啓発に関するコンサルティング業務に従事。2015年オズマピーアール入社。2018年より現職。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。
出典
※1 Gartner, “Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents,” February 19, 2024. [gartner.com]
※2 博報堂DYホールディングス、2026年6月10日「Hakuhodo DY ONEの『ONE-AIO Lab』、AI検索による検索体験の変化や検索サービスの利用実態をまとめた『ONE-AIO Lab AI検索 生活者利用実態レポート 2026』を発表」 [hakuhodody...ings.co.jp], [hakuhodody-one.co.jp]