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企業イメージ失墜を招く「ネットリスク(炎上リスク)」を防ぐためには

業務効率化や広告など、あらゆる側面において、もはや欠くことのできないインターネット。その一方で、様々な「ネットリスク」が生まれているのも事実です。

サイバー攻撃による不正アクセスなどで、個人情報など機密性の高い情報が盗まれるようなリスクに対して、「ネットリスク」という言葉が使われることもありますが、当コラムで定義する「ネットリスク」とは、インターネット上での投稿を発端とする「炎上」によって、組織のイメージが損なわれ、損害を発生させる可能性について言及します。「ネット炎上リスク」と言い換えてもよいでしょう。

近年はソーシャルメディアの普及に伴い、組織に関するネガティブな情報が拡散・炎上し、大きな問題に発展することも少なくありません。中には、大きな経済的損失を発生させ、時として、組織の存続を脅かすものさえあります。

具体的にどんなことが発端となってネットリスクが生じるのか。万が一、ネットリスクが生じた際に、ダメージを最小限に抑える炎上対策はあるのか。まずはネットリスクを知り、発生時における対応を理解しておくことが、いま組織にとって非常に重要となっています。

【目次】

  • ネット時代の「炎上」とは
  • 炎上を加速させる3つの要素
  • ネット炎上に潜むネガティブ要素
  • 炎上リスクが高いテーマとは
  • ネットリスク発生時に「すべきこと」と「やってはいけないこと」
  • 組織として備えておくべきネットリスク対策

◆ ネット時代の「炎上」とは

近年よく耳にするようになった「炎上」という言葉。これは、批判や抗議が集中的に寄せられ、なかには誹謗中傷も多数含まれて、収拾がつかない状態のことを指します。「悪事千里を走る」ということわざがあるように、これまでもメディア報道やクチコミによって、企業が「炎上」することはありました。しかしインターネットがより身近になると、「炎上」につながるリスクの幅は広がり、火の手の広がるスピードや延焼する規模は格段にスケールアップしています。

たとえば、企業の人間がSNSで不適切な発言をして、それが瞬く間に広がって「炎上」――。
アルバイトが(提供する食品を不衛生に扱うなどの)悪ふざけをした写真をSNSにアップして「炎上」――。
消費者が企業に問い合わせを行い、その返答が誠意に欠いたものだった。そのやり取りが録音されていて、インターネットに晒され「炎上」――。

このように、ネットリスクから炎上に発展した事例は数多くあります。

◆ 炎上を加速させる3つの要素

こうした炎上を加速する要素として挙げられるのが、「SNS」、「まとめサイト」、そして「ネットメディア」の存在です。

昨今の炎上事案を振り返ると、「Twitter」や「Facebook」などSNS上の投稿が起点となっていることが多々あります。大きな特徴として、「リツイート」や「シェア」などでどんどん拡散され、SNSで一度火がつくと、一気に炎上に至るということがあります。

炎上を拡散する上で大きな役割を果たしているものの一つが、「まとめサイト」です。「まとめサイト」とは、ネット上に散らばる情報をテーマごとにまとめるサイトのことです。個人・団体を問わず誰でも開設することができるため、事実とは異なる客観性に欠いた記事がアップされることも少なくありません。「2ちゃんねる」の書き込みを編集した「2ちゃんねるまとめ」やツイッターの投稿を編集した「トゥギャッター」などがあります。

「ネットメディア」も炎上を加速させる大きな要因となっています。特徴としては、速報性に優れ、炎上事案をキャッチしたら、すぐさま記事化します。拡散力にも優れ、キュレーションメディアを介して、ネガティブな情報がどんどん拡散され、炎上に至るという危険性があります。また、ネットメディアの中には、しっかりとした編集体制を敷いていないところもあり、不十分な取材で記事にしてしまうこともあるため、取材を受ける際には注意が必要です。

◆ ネット炎上に潜むネガティブ要素

そして、ネット炎上には、看過できないネガティブな要素が含まれています。

まずマスコミ報道の呼び水になってしまうことが挙げられます。ひとたびネット炎上が起きると、その情報をキャッチしたマスコミが報道し、ネガティブな情報が全国的に拡散するというリスクをはらんでいます。

マスコミ報道にまで発展してしまうと影響は甚大です。紙面やテレビで露出が増えることで、ネガティブな広告価値換算が億単位になることも珍しくありません。さらに、株価が連動して、下落することもあるのです。

また、炎上した投稿がネット上に残り続けてしまうこともネット炎上の特徴です。炎上が沈静化した後も、「まとめサイト」や「ネットメディア」の記事はウェブ上に残り続け、企業名を検索すると1ページ目に過去のスキャンダルが現れることもあります。

このように、ネット炎上によるイメージダウン、経済的損失は計り知れません。ネットリスクを「小さなこと」と見過ごさず、万一に備えた炎上対策が必須な時代が来ているといっても過言ではありません。

◆ 炎上リスクが高いテーマとは

起業のブランド既存や経済的損失を引き起こす可能性のある炎上リスク。これを回避するためにも、過去の炎上事例を知ることはとても重要です。そこで、これまで行ってきた数々の炎上事例のリサーチを基に、“炎上しやすいテーマ”を複数に分類しました。それが以下の表です。

特定の民族や政治思想がからむと炎上につながりやすいといえます。例えば、アイドルグループがナチスの軍服を模倣した衣装を着て、炎上したということがありました。民族や政治に関わるテーマはセンシティブなため、扱う際には慎重になる必要があります。

宗教も炎上しやすいテーマの一つです。特定の新興宗教を批判したり、賛美したりすると、ネット上では炎上しやすくなっているので、注意が必要です。

いま最も炎上しやすいテーマとなっているのが、ジェンダーに関する問題です。女性を性的に強調したものが炎上しやすく、セクシータレントを起用した自治体のPR動画が、「下品」、「女性蔑視」などとして炎上しました。またオムツブランドの動画広告が、「母親の“ワンオペ育児”を肯定的に扱っている」「女性への偏見を助長する」などとして炎上しました。

企業として倫理観が欠如していると捉えられたり、社会悪だと判断されたりすると炎上します。メガネ専門店が、万引き犯の顔写真をネット上に公開した際には、「私刑は法治国家では許されない」として炎上しました。

社会的に注目されているトピックも炎上しやすいテーマです。大手広告代理店の過労自殺問題があってから、労務管理の問題は大きく注目されています。また最近では、LGBTへの注目が高まっていますので、性的マイノリティーに対して、配慮が欠けるような発言をしてしまうと炎上につながる可能性が高いです。

企業・組織に所属する人間が、問題となるような発言を行った場合、組織の道義的責任が問われやすく、炎上しやすい傾向にあります。飲食店のスタッフが、来店した有名人を隠し撮りした写真をSNSにアップした事案では、本人だけではなく会社自体が炎上しました。

以上のように、「炎上しやすいテーマ」には一定の傾向が見られるため、しっかりと把握しておくことが必要です。企業として、広告やキャンペーンなどを行う際には、上記テーマと照らし合わせ、ネットリスクが潜んでいないかを確認し、未然の防止につなげることが重要となっています。

◆ ネットリスク発生時に「すべきこと」と「やってはいけないこと」

万が一、炎上してしまった際、組織は炎上した理由や拡散の規模や段階において、そのつど適切な炎上対策が求められます。

まず何より大切なのは、迅速な初動対応です。ネットリスクは、SNS上での「リツイート」や「シェア」による転載が容易なため、瞬く間にネガティブな情報が拡散します。それゆえに、初動における炎上対策のスピードや適切さが、その後の事態の悪化や拡大を大きく左右する場合が多いといえます。

具体的には、事実関係の迅速な確認。投稿者の属性や投稿傾向などを早急に特定します。そのうえで、ソーシャルメディアの論調と動向を注視して分析。お客様相談室など顧客窓口となる部署に対し、事態の発生と、それに伴う問い合わせの可能性について周知を図ります。また、電話対応では録音されている可能性についても言及すべきです。そして、炎上の規模に応じたメディア対応の準備を行い、想定問答などの対応方針について、社内でコンセンサスを取ります。ここまでがネットリスクにおける初動の炎上対策です。

一方で、ネットリスク対応として「やってはいけないこと」もあります。そちらを3つ挙げます。

まず1つめは「個人的な反論をしないこと」です。組織として取るべき炎上対策にブレが生じやすくなると同時に、感情に任せた反論となれば、火に油を注ぐことになります。注意したいのは、匿名の書き込みですら特定される恐れがあること。実際に、炎上している会社を擁護する反論を社員が匿名で掲示板に書き込んだところ、投稿の発信元が露呈して大炎上につながったケースもあります。

2つめは「苦しい言い訳をしないこと」。以前、従業員がハンバーガーのバンズの上に寝転がっている写真をTwitterに投稿して炎上しました。その際、企業の公式サイトで「発注ミスで廃棄処分だった」と釈明しましたが、これに対してネット上では、「そんな大量な廃棄が出るわけがない」、「その場しのぎの言い訳だ」などとして、炎上が長引いてしまいました。たとえそれが事実であったとしても、まずは謝意を全面に出すことが求められます。

3つめは、「鎮静後に気を抜かないこと」。コンビニ大手チェーンにおいて、店舗内のアイス冷凍庫に入った写真がネット上に公開され、炎上したことがあります。本社が公式に謝罪し、テレビ報道もされて一旦は沈静化しましたが、そのわずか1か月後に、別のアルバイトスタッフによる不適切なつぶやきから新たなネットリスクが発生。そのスタッフのFacebookから、学校や交友関係が明るみになり、未成年で飲酒・喫煙していることまで判明し、再炎上しました。炎上を招いた企業に対して、ネットユーザーは一定期間厳しく監視する傾向にあるため、鎮静後も気を抜いてはいけません。

なお、事態が鎮静化した後もインターネット上に炎上の記録が残り、批判的な書き込みが目に付く状態が続くこともあります。その際、「外部の専門会社に委託して検索順位を下げること」は、炎上対策としておすすめできません。恣意的に押し下げたことが表面化すると、さらなる炎上を招くからです。ホームページや公式SNSアカウントなどで地道な投稿とプロモーションを続けてネット上のコンテンツを増やし、自然と炎上に関するページの検索順位が下がる「逆SEO対策」こそ、正しい炎上対策の一環といえます。

◆ 組織として備えておくべきネットリスク対策

これまでネットリスクの特徴や対応について書いてきましたが、最後に、今後の備えとして何ができるかについて紹介します。ネットリスク対策・炎上対策として具体的に実践しておきたいことを以下にまとめました。

1. モニタリングの実施

炎上リスク発生時の初動対応を早めるためには、SNS上で何か異変があった場合にすぐ察知できるようにモニタリングを行うべきです。人の手による人海戦術では、広大なネット上を網羅しきれません。そこで、「リスクワード」を自動で検知し、その使用頻度の増減でリスクを察知し、担当者にアラートメールで知らせてくれるモニタリングツールの導入が効率的です。炎上する前はもとより、迅速な対応が求められる「初動時」、火の手の勢いを検知する「炎上中」、再炎上の有無をサーチする「炎上後」、いずれのフェーズにおいても有効です。

2. 社内セミナーの実施

社員の投稿が発端となるネットリスクを防ぐため、SNSを利用する際の留意点などを共有するほか、炎上時には個人的な反論を(匿名であっても)行わないなど、ネットリスクに関する知識を得るのと同時に、意識を高めるためのセミナーを開くことをお勧めします。

3. SNS利用ガイドラインの策定

これも社員の投稿が発端となるネット炎上を防ぐためのアクションです。SNSを利用する際のガイドラインを策定し、遵守するよう促します。採用時の面談や入社後研修においても、ガイドラインを伝えておくとよいでしょう。またアルバイトスタッフや協力会社への働きかけも行うべきです。

4. メディアトレーニングの実践

ネットリスクが起きたことを想定したメディア対応トレーニングを行い、炎上した際の備えとします。見解が歪曲されないようメディアから寄せられる電話対応の受け答えや、報道カメラの前での発言や所作など、平時にトレーニングを行っておくことで、いざという時の対応が変わってくるものです。オズマピーアールでは、これまで様々なメディアトレーニングを行ってまいりましたが、ネットリスクにおけるロールプレイ型のトレーニングプログラムは、最も引き合いのあるトレーニングの一つとなっています。

5. ネット炎上保険の導入

企業によるネットリスクが後を絶たない中、保険各社が炎上リスク専門サービスの販売をスタートさせています。実際に炎上してしまうと、事案の深刻度にもよりますが、沈静化までには高い費用がかかります。企業においては有用な備えになるでしょう。

6. ネットリスクマニュアルの作成

ネット炎上時、どのタイミングで誰が何をすべきか、あらかじめフローを確立しておくと、初動時対応がスムーズです。オズマピーアールでは、炎上の規模をレベル分けしたうえで、企業規模や業種、社内体制に合わせてカスタマイズしたネットリスクマニュアルの作成を手掛けています。ただし炎上が起きた際、最終的に判断を下すのは当事者企業に他なりません。そのため、取りうる行動のパターンを挙げ、それぞれのメリット・デメリットを明記したドラフトを併せて作成し、判断材料として提供しています。

ネットリスクは、業種を問わず発生しうるものです。ひとたび炎上してしまうと、収集がつかなくなり、企業やブランドのイメージを棄損し、時には大きな経済的損失を被る可能性もあります。ソーシャルメディアが普及し、ネットリスクの危険性がかつてないほど高まっているいまだからこそ、ネットリスク対策について真剣に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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