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コミュニティと共に課題を解決し、良好な関係をつくる「コミュニティ共創」とは?

インターネットデバイスやソーシャルメディアの進化により、情報流通の構造はかつてない変化を迎えています。企業や自治体と個人の距離が狭まり、個人の情報発信力も高まっている中、情報発信は生活者の共感なくしては拡がりにくい世の中になってきています。一方で、生活者に共感されさえすれば、情報は長く拡散していく世の中ともいえます。

オズマピーアールは、従業員や顧客、市民こそが、企業や自治体のコミュニケーションにおける最大の鍵であると捉え、コミュニティを開発し共創することで、生活者に共感・共有されやすい情報発信や、新たな魅力創造を行う「コミュニティ共創プログラム」を発表しました。

プログラムを主導するコミュニティ開発部の濱地徹(はまぢ・とおる)に、そもそもコミュニティ共創とは何なのか、そして現代に適したコミュニケーションはどんなものか聞きました。
(聞き手:オズマピーアール広報担当)

プレスリリース:企業や自治体の認知や顧客拡大の秘訣は“身内”にあり コミュニティ共創型プログラムを提供開始

コミュニティ共創がなぜ必要か

―今、コミュニティ共創に注力しているのはなぜなのか、その背景をお聞かせください。

広く社会に情報を伝えたいとき、効果的な情報伝達経路のひとつがマスメディアです。PRにおいては、最適なメディアを通じて効果的に情報を伝えるメディアプランニングとプロモーション活動が重要な戦略であることはいうまでもありません。

しかし、インターネットやSNSの発達によってこれだけ個人の情報発信が活性化し、情報伝達のありかたが変容を遂げている今、メディアを介したコミュニケーションだけが最善かというと、必ずしもそうではない。もっと幅広くコミュニケーションの方法を探っていく必要があります。

PR、つまりパブリック・リレーションとは、(公社)パブリックリレーションズ協会の定義によると「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係をつくり出すための考え方および行動のあり方」です。PRというとメディアリレーションのイメージが強いかもしれませんが、ステークホルダーが良好な関係性を築くことができれば、本来はコミュニケーションの経路はなんでもいい。

そのようにフラットな視点に立つと、マスメディアを介さず当事者から情報発信していったほうが、ときにはより強いメッセージ性をもって効果的な情報伝達が成立するケースもあることが見えてきます。今は企業や自治体からの一方的な情報ではなく、より自分たちの目線に近く共感しやすいコミュニケーションが受け入れやすい時代です。住民や従業員など、自治体や企業を取り巻くステークホルダーを最初から巻き込んで、私たちも一緒に、どんな情報をどうやって発信していくか考えていったほうが、より強い情報となり得るし、伝えたいことのズレも生じにくくなります。

もう一つのポイントは、コミュニケーションの主体が継続的になり得ることです。長くお付き合いが続くクライアントもありますが、単年から長くても3年間程度で活動終了となる事業もあります。しかし、コミュニケーション活動の主体を、我々PR会社ではなく当事者たちのコミュニティにずらすことで、プロジェクトは終わってもコミュニケーションは継続できます。5年、10年と中長期的にコミュニケーション活動の主体となりうるコミュニティは、クライアントにとってはそれ自体が大きな資産になります。この点でも、コミュニティ共創は高い価値を生み出すと考えています。

そもそも「コミュニティ共創」とは何だろう?

―コミュニティという言葉の使われ方は多岐にわたり、実体がつかみにくいようにも感じます。ここでいう「コミュニティ」とは何なのか、「共創」とは何なのか、まず定義づけることでイメージがつかめると思うのですが。

そうですね。「コミュニティ共創」とひとことで言ってもさまざまな属性や活動内容があり、ひとつに括りにくいものです。

ただ、私が定義しているのは、ここでいうコミュニティとは「何らかの課題を共有しており、解決しようとしている人たちの集合体である」ということです。この条件を満たしていない場合は、それはコミュニティではなく、単なるカテゴライズと考えています。

例え話をしたほうがわかりやすいと思うので、地域のコミュニティを考えてみましょう。東京都23区の……私の名前が濱地なので、「浜区」という架空の区にしましょうか。
「浜区の住民」は、コミュニティでしょうか?――違います。浜区に住んでいる、という共通の属性があるだけでは、コミュニティとは呼べません。しかし、浜区のゴミ問題について問題だと思っていることがあり、それを解決したいと思っている人たちが呼びかけ合ってサークルをつくったとしたら、それはゴミ問題という課題を共有しているコミュニティとなります。

―コミュニティで共有する「課題」というのは、どんなことが挙げられるのでしょうか。

課題と聞くと、大きくは社会課題があると思います。少子高齢化や自然災害、環境問題などスケールの大きな問題や、何か深刻な問題が生じていて、マイナスをゼロに戻さなくてはいけないというようなネガティブな課題のイメージがあるかもしれません。ただ、ここではそういった問題に限らず、日常生活でちょっと困っていることを解決したり、良い情報を知ることで、大なり小なりその人の生活がよくなったりすることであれば、課題になり得ると考えています。

「課題があり、それを共有していること」が重要なのは、巻き込む人を増やすことができればコミュニケーションはより活発になり、解決への推進力になるからです。逆に、社会性を帯びた課題がなければ、ジブンゴト化できた方々でコミュニティが形成され機能するだけの求心力は生みにくいとも言えます。

―なるほど。課題はいろいろな場面で想定できますね。
では、課題を共有している人たちによるコミュニティに対して、オズマピーアールはどのように関わっていくのでしょうか。

私たちは、コミュニティは大きく3つの段階に分けられると考えています。コミュニティがどの段階にあるかによって、私たちの関わり方は異なります。先ほどの「東京都浜区」の例えをもう一度出してお話しましょう。

(1)コミュニティがない:
課題を自覚して共有している集団がいない状態。先ほどの「浜区の住民である」という状態がこれにあたります。この場合は、こちらからコミュニティ共創の意義を理解していただき、声がけをして人を集め、コミュニティを形成していくお手伝いをしていくところから始めます。
浜区の中に、ゴミ問題を改善したいと思っている人がいれば、その方々を集める。ゴミ問題の専門家をアサインして、どうするか一緒に考える。このようにコミュニティをゼロから開発していくことが私たちの仕事です。

(2)コミュニティがあるが、動いていない:
課題を共有しているけれど、情報発信や課題解決に向けたアクションなど、コミュニティから外部に対する働きかけをしていない、していても有効に機能していない状態。この場合は、インターナルコミュニケーション、つまりコミュニティの内部の情報共有や意思統一を改善するお手伝いをしたり、情報発信やアクションの発想、手法を一緒に考えて実践していったりする必要があります。
これはたとえるなら、浜区の中に「浜区のゴミ問題を考えるコミュニティ」がある。でも活動がコミュニティの内部だけで完結している、という状態です。そこに解決のアクションを加える。ゴミを出さないためのアクションとして、浜区で割り箸を使っていた飲食店すべてに、「浜区ものづくり学校」で区民が作った木の箸を配るというプロジェクトをコミュニティと一緒になって立ち上げる。すると区民が作った箸となれば愛着も出る。より多くの人の参加意識を醸成することもできます。
このプロジェクトで必要なのは、コミュニティと共創しながら進めていくこと、浜区ものづくり学校と組むこと、箸づくりのワークショップをすること、それをお店に配布すること。これは浜区のステークホルダーの良好な関係性を構築すること、つまりパブリックリレーションそのものといえます。

(3)コミュニティがあり、動いている:
コミュニティが情報発信やアクションを実践できている状態です。この場合でも、私たちの出番がないかというと、そんなことはありません。私たちはPRのプロの視点で、より広く情報発信を行っていく、より深く理解を促す、あるいはステークホルダーの関係性をより強固にしていく手法を提案し、コミュニティの課題解決に貢献することができます。

―コミュニティに寄り添って、良い方向に回っていくよう手助けをするイメージですね。
コミュニティ共創をしていく中で活かされる、オズマならではの強みはどんなところでしょうか。

すべての段階を通じて言えることですが、PRをなりわいとしているオズマピーアールの強みは、やはり情報発信の精度を高めていく領域で専門性を出していけるところだと考えています。企業や自治体の内部のコミュニケーションについて、ワークショップなどを通じて円滑にする、事業のアドバイスをするといった関わりかたは、人事系の企業やコンサル企業にもできることかもしれません。ただ、それらの企業との最大の違いは、コミュニティが抱える課題を解決するために必要となる、さらにその先のアウトプット、つまり伝えたい人に伝えたい情報を届けるための綿密なプランニングと確実な実践が設計できる点と言えます。

私のチームでは、地域をテーマにした移住特化型のWEBマガジンの先駆けとして「雛形」があり、これまで100人以上にインタビューを行い、記事を制作して発信してきています。取材させていただく方に時間をかけて寄り添い、その人の考え方を一緒に深堀りしていくことで、読者に反響が着実に生まれていくメディアとなっています。そんな「雛形」だけでなく、その他のコミュニケーション業務を通じて、さまざまなクリエイティブワークを行ってきました。オウンドメディアやカフェの立ち上げ・運営、空間プロデュースやフェスなども実施。その中でつちかってきた外部のクリエイター、専門家との繋がりにも支えられ、どんなカタチのアウトプットにも対応できる準備が整っています。

「コミュニティ共創プログラム」は、ここまでお話してきたような考え方に基づいたコミュニケーション活動全般を指しています。「プロブラム」と銘打ってはいるのですが、決まった型やメニューがあるわけではありません。企業や自治体などクライアントが抱える課題はさまざまです。それをコミュニケーションで解決するためにはどうしたらいいんだろう、と突き詰めた結果、私たちが導き出した方法論のひとつだと思ってもらえればと思います。

―コミュニティ共創プログラムを実施するのに適したクライアント、事業領域は想定されていますか。

公共性の高い課題をもつ自治体や製薬企業、大学などの教育機関などが挙げられます。ただ、先ほども言ったように、生活や業務のうえでの身近な課題であっても、コミュニティ共創は可能です。また、社内で埋もれている事業や組織の価値を掘り起こすインターナルコミュニケーションなどにも応用でき、社内横断型の広報チームの設立など、実際にその引き合いは多くあります。

コミュニティ共創がめざすもの

―コミュニティ共創のゴールはどこにあると考えていますか。

コミュニティ共創のゴールは「その課題が解決できたのか?」という一点に尽きます。解決できたということは、伝えたいことが伝わり、人が動いたということです。そしてそれは、より大きなコミュニティへと広がっていく可能性に満ちています。オズマピーアールが関わるプロジェクトが終了したあとも、コミュニティが課題解決に向けて自らの力で活動を推進し、よりよいコミュニケーションを実践していくのが理想の姿のひとつですね。

―「コミュニティ共創プログラム」によって、社会にどんなインパクトを与えていきたいと考えていますか。

今、PRによる「課題の解決」は世界的に見ても大きな潮流になってきています。生活者のソーシャルグッドに対する関心は高まっており、企業姿勢に対して個人が「いいね!」ボタンで意思表示することもあれば、社会風潮に逆行した広告は大きな批判を受けることもあります。そんな時代だからこそ、私たちは課題を解決するコミュニケーションに対して、より真摯な姿勢で向き合っていかなければなりません。

課題を解決するコミュニケーションといっても、大衆にリーチするTVCM、話題化を狙う動画PRなど、手法はいろいろあります。それぞれに効果があり、意義のある活動です。
コミュニティ共創がすべてにまさっていると言いたいわけではなく、あくまで手法のうちのひとつと考えています。ただ、個人の意思が発信されやすくなっている今、ステークホルダーを見直し、巻き込んでコミュニケーションしていくことは、当事者から思いを込めて発信された情報が強く伝播していくという点で、これからのコミュニケーション活動において大きな力を持ってくると思います。

アメリカのPR会社は選挙戦でも参謀を務めて情報戦を展開するなど、国を動かすレベルで人々の生活に関わっています。一方、日本でのPR会社の存在意義は方向性が異なり、誠意を持って少しずつ話し合いを重ね、社会の合意形成を図っていくところにあるのではないでしょうか。コミュニティの力を活かして課題を解決していく手法は、こういった日本の社会のありかたにもフィットしていると感じています。コミュニティ共創に取り組むことが、日本の中でPRの社会的価値を高めていく一助でもありたいと考えています。

濱地 徹(はまぢ とおる)
株式会社オズマピーアール ビジネス開発本部 コミュニティ開発部 部長

編集者として出版界に10年近く身を置き、PR業界に。関わった雑誌は、BRUTUS、ソトコト、PAPER SKY、COYOTE、SWITCHなど旅やカルチャー系の雑誌が多く、数々のPR案件に編集者として取材や執筆に携わる経験も多々。当社入社後は、外務省や復興庁等の官庁や地方自治体のPRを中心に担当。2018年、兵庫県豊岡市の移住促進プロジェクトにてPRアワード2018 ブロンズ受賞。また、2015年4月から2018年3月までの3年間跡見学園女子大学兼任講師として『取材学』等の講義も受け持ち、現在は嘉悦大学にて『広報論Ⅰ・Ⅱ』の非常勤講師を務めている。弊社が運営するWEBメディア『雛形』(2015年1月開設)の発起人でもある。

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