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「インバウンド回復に備える! Withコロナにおける海外生活者の情報収集・観光ニーズの変化と対策 ~台湾訪日旅行担当者とのライブセッション~」セミナーレポート

みなさん、こんにちは。オズマグループ、ピーアールコンビナート2年目の宮崎です!オズマグループに就職する前は、台湾の大学に4年間留学していました。そんな私ですが、今年のゴールデンウイークは台湾で過ごすことを計画していた矢先、コロナで緊急事態宣言となってしまったため、台湾から日本に帰国後、まだ一度も台湾に戻れておりません!大学時代の友人にも早く会いたいのですが、直接会うことの出来ない状況が続いていると、やはり一体いつ台湾に行けるのだろうと、心配になります・・・そんななか、社内で、台湾の旅行会社やマーケティング会社の方を招いたライブセッションがあると聞いて、参加してみました。

台湾はコロナの抑え込みに成功したとして、皆さんも印象深いかと思います。今回はいち早くアフターコロナの動きが出てきそうなエリアとして、台湾現地で訪日旅行のプロモーションと商品造成を担当されているJWI Marketing 日本部・係長 呉祝華(ゴ・シュクカ)氏と台湾最大の旅行会社グループ Lion Travel 東北アジア部・部長 温怡誠(オン・イセイ)氏が登壇され、台湾のコロナ禍における観光状況について解説いただきました。

このレポートはセミナーを通して、新型コロナウイルスによって大きな影響を受けた訪日インバウンドをどのように回復させていくのか、そのヒントを探っていきたいと思います。

第一部:台湾のコロナの現状と、コロナ前後で変わった消費者の情報収集行動

~台湾のコロナの現状~

セミナーでは、まず台湾出身の先輩馮(ひょう)が、簡潔に直近の現状を共有しました。台湾は、感染者数が減少した後も、公共交通機関や飲食店、宿泊施設をはじめ、公の場で引き続き検温やマスクの着用を必須にするなど、コロナ対策を徹底することで、早期の封じ込めに成功しました。そのため、日常生活はほぼ通常通りに戻ってきており、日本や諸外国のように、オンラインに傾倒しておらず、依然としてオフラインでの活動が主流となっているそうです。国内旅行も様々な対策を講じられた上で盛況となっているため、今後海外旅行が解禁になった際には、他国にも自国と同レベルの感染対策を求めるということでした。

台湾といえば、「コロナ対策の優等生」として有名ですが、私の台湾人の友人によると、台湾人一人ひとりのコロナに対する意識が高く、自ら決めて行動した人が多かったこと、そして政府の方針に対して協力的だったことが早期にコロナ封じ込めに成功した要因だと語っていました。その基準で今後海外旅行に臨まれるとしたら、確かに訪日インバウンドを再び活性化させていくために、私たちは今まで以上に意識を高めていかなければならないと思います!

~コロナ前後で変わった台湾旅行者の訪日ニーズ~

馮の解説後に呉さんからJWI Marketingが8月始めに行った調査の結果が共有されました。台湾の人が訪日旅行において何をしたいか、のコロナ前後の比較です。

新型コロナウイルスの影響によって、コロナ自粛や生活様式の変容から、開放的な空間でゆったりのんびり過ごしたいというニーズが増加している傾向がうかがえます。また、訪日リピーターの多い台湾人は、その土地ならではの隠れた日本の魅力を知りたいと思っているので、地域を絞ってディープな旅行をしたいというニーズがあることもわかりました。一方、これまで人気だった都市型観光地も依然としてニーズはあるので、きちんと対策をすることが人気再燃のキーポイントとなりうると話されていました。

~今後旅行したい時期とそのために求める情報

更に同調査によると、もし今年10月に海外への渡航が解禁される場合、90%以上もの人が、2021年内までに日本へ旅行をしたいと答えたそうです。日本へ安全、安心な旅行ができるとわかったらすぐに行きたいと考えている人が多いことが分かります。

しかし旅の計画を練るための情報収集において、コロナの影響によって日本からの情報発信がなくなったことで、実情を知る術もないので却って心配になるとの声が寄せられているということでした。

コロナでネガティブな情報が多く出回っている今だからこそ、各観光地に関わっている人たちが元気に過ごしている姿、今後のためにきちんとした対策が取られているモデルコースやスポット、アクセスに関する情報を継続的に発信する必要があるともお話されていました。訪日インバウンドを回復させるには、こうして私たち日本側の各地域が積極的に“今”を伝える情報発信をしていくことが大切なのだと痛感しました。

~今後のPR情報発信において、日本側で今からできること~

続いて、まだ観光の渡航が解禁されてないこの時期に日本側でできること、についての話題となりました。大切なのはやはり迎え入れの準備で、訪日旅行者が再び戻ってくる時のために、感染症対策情報をSNSで発信する等、コロナで変わったポイントをきちんと押さえた情報発信がまずは必要だそうです。さらに、事前に彼らのニーズを捉えるためのアンケート調査や繁体字も含めた多言語対応等、時間がある今だからこそ、迎え入れの基盤整備もしておくとよいのだとか。また、情報発信の仕方についても、台湾旅行者の共感を生み出せる、現地トレンドを取り入れた情報発信をすることが大切だということでした。この点について先輩の馮が直近の例を挙げてくれました。セミナーの約1ヶ月前に台湾ではSNSで『「像極了愛情」=まるで恋のようだ』と文末を締めくくるポエム調の投稿で詩人気分を楽しむムーブメントがあるのですが、情報発信の際、まじめに必要事項を伝達するだけではなく、こういう発信トレンドを反映すると相手からの共感も生みやすいそうです。

実際に私も自身のインスタグラムで台湾トレンドに乗っかって投稿することも多くありますが、台湾人の友人たちの反応は極めて良いです!『「不要假裝台灣人~!」=台湾人ぶるなよ~!』とツッコまれたり、やはり現地のトレンドをうまくキャッチした情報発信は、相手の共感をくすぐり、親近感も生まれるので、遠くにいても心の距離が近く感じられると実感しています!

この部の締めくくりとして、馮からは、いずれ来てもらう=インバウンドのための情報発信も大切だが、一方で地域の特産品や工芸品などを知ってもらう=アウトバウンドの情報発信も今できることではという話がありました。台湾の人は、いま行けないからこそ日本を応援したいという気持ちもあるので、買うことでその地とのつながりを感じられる工夫をすることで、地域のファンとなり来訪動機につながるのではということでした。

第二部:コロナ前後で変化した、台湾の国内旅行とこれからの訪日旅行

~コロナ前後で変化した、台湾の国内旅行~

第二部では、まず旅行トレンドの変化について、今度はLionTravelの温怡誠さんから解説がありました。台湾ではコロナによる外出自粛の反動で、「リベンジ旅行」と称されるほど国内旅行が爆発的なブームを迎えているそうです。中でもとりわけ特定の目的を持った「テーマ旅行」が人気で、その理由としては、限られたお金と時間を自分の一番好きなものに使いたいというニーズがあることがあげられます。また、海外に行きたいのに行けない今だからこそ「疑似海外旅行」も人気を博しているということでした。クルーズに乗って離島を周遊するアイランドホッピングや、台北の松山空港を発着地として台湾上空を一周して戻ってくるツアーなど、海外旅行の気分を味わいたいニーズをうまくとらえた旅行パッケージの人気が高いそうです。

私自身も振り返ってみると、今年6月くらいから夏休みにかけて、台湾人の友人の国内旅行に関するSNS投稿が多くなった印象があります。特に若い子には大自然の中でおしゃれにキャンプをする「グランピング」が流行っていました。また家族で旅行している友人は高級ホテルに滞在したり、豪華な食事を堪能したりと、今まで外出できなかった分を取り戻す、「『報復性消費(リベンジ消費)』、『報復性旅行(リベンジ旅行)』」が活発になっていて、日本もコロナの抑え込みに成功したら、今の台湾のような消費ブームが到来するかもしれません!

~今後の訪日旅行商品造成の方向性~

台湾の旅行会社における、今後の訪日旅行商品造成において、温さんは、5つの方向性を示しました。

①密回避型旅行:人が集まるスポットを避け、お客さまに安心して旅行して
 いただくことを重要視した小グループ向け行程づくり。

②対策ガイドラインの徹底:一般消費者の不安を払拭するために、行程に
 取り入れる施設・スポットには徹底した防疫ガイドラインや動線確保など
 の対策を求める。

③訪問先分散の工夫:見学時間帯を分散させるための予約制や実名制を導入
 しているスポットや施設を訪問先として優先的に検討。

④キャンセルポリシーの緩和:キャンセルポリシーの条件緩和や撤廃などに
 関する手続きやフローの明示が望ましい。

⑤保険と医療体制の整備:滞在中にコロナ感染や病気になった場合に安心して
 治療を受けられるように海外旅行保険並びに医療支援の強化が不可欠。

~コロナ後の旅行商品造成・送客にむけて日本側で今からできること~

さらに、台湾の旅行会社は、日本側からのサポートを求めているというお話もありました。具体的には、下記の4つの情報・資源提供です。

①基本情報:安心安全につながるコロナ対策&それに対応した最新の観光情報
②フィジビリティ情報:オーバーツーリズムを防ぐための受け入れ
 キャパシティの情報(駐車場、宿泊数など)

③各種補助金:密回避によって上がった旅行単価を補助できる助成金
④来訪動機づくり:取り組み&台湾旅行者の共感を呼ぶ“応援したくなる“情報

まず台湾旅行会社が一番に求めるのは、安心安全につながるコロナ対策と、それに対応した最新の観光情報です。その基盤が整ったうえで、爆発的な回復によるオーバーツーリズムを避けるためのフィジビリティ情報や、密回避によって旅行単価が上がっても送客し続けるための補助金制度も重要だそうです。そして最後には台湾人の心を動かす、共感・応援したくなる情報発信が今後の訪日インバウンド回復のカギとなる、だからこそ日本側はぜひポジティブな情報を寄せてほしい。ご自身も日本が大好きという温さんからの熱いメッセージでセッションは締めくくられました。

【ライブセッションに参加しての感想】

新型コロナウイルスの影響を受け、すっかり下火となってしまった訪日インバウンドですが、「コロナ対策」を徹底したうえで、「日本が元気に訪日外国人を受け入れる準備が整っていること」を発信していくことが、現地消費者を安心させ、旅行会社の積極的な送客再開を促す、訪日インバウンドの回復のための重要なカギとなることが分かりました。

また、情報発信もただ単に観光情報だけでなく、積極的に「来てね」と呼び掛けづらい今だからこそ、地域産品の海外展開を通じてファンを作り、いずれ渡航解禁となった時に来ていただけるような取り組みも有効かもしれないという先輩のお話も興味深く聞いていました。

実際のところ私の台湾人の友人からも、「日本が早くコロナ対策を完璧にして、感染者数が減ったらすぐに遊びに行けるのに~!」と言われること多く、私が考えるに、台湾が“コロナ対応の優等生”といわれる所以は、政府の積極的な介入と、台湾人生活者一人ひとりの意識の高さにあり、訪日インバウンドを回復させるためにも、台湾をお手本に、私たちも一人ひとりがもっと意識を高く持たなくてならないと強く感じました。

※登壇者馮によるレポートはこちらをご参照ください。



宮崎由美 ピーアールコンビナート PR1部
ラグジュアリーブランド、FMCG領域の担当クライアントをメインに、スイーツ施設、大手メーカーのPRに携わる。
編集部・美容ジャーナリスト・美容ライターへのキャラバン経験も豊富で、入社2年目ではあるがメディアプロモート実績は社内トップクラス。
また、大学では四年間台湾に正規留学し、アジア女子の流行に敏感。打たれ強い性格とフットワークを最大限に活かし、日本語、中国語を駆使した提案を得意とする。

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