【開催レポート】 イシュー研究会 第7回「欧州グリーンディールから読み解くEUのルール形成メカニズム」
社会課題を起点としたルール形成(パブリックアフェアーズ)を提供するオズマピーアールパブリックアフェアーズチームが運営する「イシュー研究会」は、2022年6月29日に本研究会の7回目として、一般財団法人日欧産業協力センター主席研究員である新開 裕子氏を講師に「欧州グリーンディールから読み解くEUのルール形成メカニズム」と題した会を開催いたしました。
新開氏の講演では、
●欧州連合(EU)でのルール形成パワーを生み出すファクターとして市場規模、規制能力と仕組み、欧州社会の規制受容等をあげ、欧州グリーンディールにみられる「ブリュッセル効果」について検討した。
●EUは加盟国が締結する基本条約を基盤に成り立ち、条約改正を重ねて統合を深化させてきた。現行の基本条約であるリスボン条約には様々な機構制度改革が盛り込まれたが、なかでもEU理事会の意思決定に特定多数決方式が導入されたことや、EUと加盟国の間の権限分担が明確化されたこと等、EUのルール形成プロセスを理解する上で基本となるポイントを整理した。
●EU拡大に伴い、加盟国間の意見相違や格差も存在するが、環境を含む多くの政策分野において“Upward harmonization”(EUの中でも高いレベルの基準を持っている国に合わせる上方調和)の取組が行われている。
●各加盟国は自国企業の競争優位性を高めるため、EU基準を目指す。EU基準が世界ルール化されることによって厳しい基準に順応したEU企業が世界で競争優位に立つ、という内部から外部にも波及した好循環が見られるが、欧州グリーンディールもその一例と思われる。
●欧州グリーンディールは、単なる環境政策ではなく、EU全体の気候中立目標達成と経済発展の両立を目指す新しい成長戦略であり、長期的には、世界におけるEUのリーダーシップ回復と、グローバルアジェンダ化を目指している。
●カーボン・リーケージ問題(環境規制の緩い生産国からの輸入品の流入や規制が緩い地域への製造拠点の移転が生じ、結果的に世界全体での排出量削減に繋がらなくなること)が起きており、CBAM(炭素国境調整メカニズム)案の審議が重要な局面を迎えている。
など、具体的な事例を交えながら、解説いただきました。
当日参加された企業の方々からは、
●欧州委員会の形態が優秀だと講演を通して思ったが、どういった人が委員会に所属しているのか。各業界の経験豊富な人材などなのか。
●日本でこれから決定する政策などが全てEUのレギュレーションに沿った形で策定されていくのか。
●海外進出する際に、ルールの厳しいEUにどこまで合わせる必要があるか。EU抜きの製品・サービス開発に妥当性はあるか。
など、たくさん質問が上がり、本会終了後も時間いっぱいまで講師や参加者同士の交流で盛り上がりました。
※講演内容は新開氏の個人的見解であり、所属組織の公式見解ではありません。
【イシュー研究会について】
イシュー研究会とは、「倫理や社会規範、世論等に基づく新しい社会課題(=イシュー)」のメカニズムを研究し、イシューが企業に引き起こすコンフリクトや新たなビジネスチャンスを可視化し、ソリューションについて共創するプロジェクトです。
●本研究会の機能
①【研究機能】倫理や社会規範、世論等に基づくイシューのメカニズムの研究
②【共有機能】イシューが企業に引き起こすコンフリクトや新たに生み出す
チャンスの可視化・共有
③【共創機能】イシューに基づくコンフリクトを解決するソリューションの共創
●構成メンバー
【顧 問】
株式会社オウルズコンサルティンググループ代表取締役CEO/
多摩大学ルール形成戦略研究所副所長 羽生田慶介氏
【研究員】
継続的に参加できる企業を推奨。1回のみの参加も可
【事務局】
オズマピーアール パブリックアフェアーズチーム
※他、イシューの専門家(企業担当者、有識者・NGO)ならびに
ルール形成に関係するステークホルダーを招聘予定
●本研究会で扱うテーマ
①まだ争点化していないが、将来の企業活動に大きな影響を与えうるイシュー
②すでに企業活動に大きな影響を与えているイシュー
例)生命倫理、テクノロジー倫理(AI、バイオなど)、ビジネスと人権
(強制労働、児童労働など)、地政学リスク(経済安全保障など)、
ソーシャルメディアリスク(キャンセルカルチャーなど)、
気候正義 等
【関連リンク】
オズマコンサルティングはこちら
【本件に関するお問合せ】
株式会社オズマピーアール パブリックアフェアーズチーム
TEL:03-4531-0220
Mail:public-affairs@ozma.co.jp
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