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自主研究に取り組む学生の研究アイデア発掘・支援プロジェクト「学生アイデアファクトリー」

学生・企業・社会をつなぐ研究の入口 ──JAAS「学生アイデアファクトリー」の挑戦

科学の普及・促進に取り組む民間団体であるNPO法人 日本科学振興協会(JAAS)。

JAASが主催する「学生アイデアファクトリー」は、自主研究に取り組む学生の研究アイデアを発掘・支援するプロジェクトとして、2023年にスタートしました。オズマピーアールは、『社会の潮流やひとりの声からも新しい「問い」を立て、世の中を見つめ直し、価値観の違いを超えて新しい「あたりまえ」を創り出していく』という企業パーパスのもと、JAASのビジョンや姿勢に共感すると共に、社会課題を科学のチカラで解決しようと唯一無二の自主研究アイデアを持つ学生を応援したいという想いから2024年から本プロジェクトに広報パートナーとして参画しています。また2025年度からは、ゴールドスポンサーとして協賛も行っています。

「学生アイデアファクトリー」が目指す姿や、科学の普及・促進に果たす役割について、プロジェクトを主導するJAAS代表理事の深澤知憲さんにお話を伺いました。

聞き手:一ノ瀬寿人(オズマピーアール 統合ビジネスデザインチーム、「学生アイデアファクトリー」広報を担当)

(写真右)NPO法人 日本科学振興協会(JAAS)代表理事 深澤知憲さん

■研究への一歩目をつくる場所「学生アイデアファクトリー」

一ノ瀬寿人(以下、一ノ瀬):まずは深澤さんから、「学生アイデアファクトリー」についてご紹介いただけますか。

深澤知憲さん(以下、深澤):主催の日本科学振興協会(JAAS)は、「日本の科学を、もっと元気に。」を合言葉に、組織や立場などの垣根を超えて、あらゆる人々が対話し協働しながら科学を振興していくことを目指しています。なかでも「学生アイデアファクトリー」は、若手の人材育成を目的に、2023年に立ち上げたプロジェクトです。学部生・高専生・短大生を対象に自主研究アイデアを募り、選定したアイデアを研究計画へ落とし込んで公開の場で発表する機会を提供しています。

一ノ瀬:ありがとうございます。深澤さんとの出会いは2024年でしたよね。近年、クライアント企業から私たちへは、採用のためのPRの相談が多く寄せられるようになっています。私は当時、JAASさんとはまったく無関係のプロジェクトで、理系人材の採用コミュニケーション策を検討していました。その中で「学生アイデアファクトリー」というイベントがあることを知り、何か協働できることはないかとコンタクトをとったのが始まりでした。

オズマからの突然の問い合わせ、受け取った深澤さんはどう思われたのでしょうか。

深澤:率直に言うと、何かの売り込みなのかなと(笑)。

一ノ瀬:やっぱりそうですよね(笑)。

深澤:まあ一度は話を聞いてみようとお会いしたのですが、よくよく聞いてみたら、学業以外にも何かに熱心に取り組む理系学生を応援する場について意見交換したいというお話で。われわれとしても、企業さんに興味を持っていただき、参画していただくのは大歓迎な話なので、一緒にできることがあればやっていきたいですね、と少しずつ具体的な話をするようになっていきました。

■アイデアは変わっていい。成長を最優先する理由

一ノ瀬:優秀な理系の学生が集まる場として「学生アイデアファクトリー」を認識していたものの、実際に深澤さんからお話を伺い、学生たちの活動を深く知るにつれて「こんなにもハイレベルなのか!」と驚かされました。学術的なレベルも想像以上でしたが、なにより社会課題や身近な問題意識とのつながりがしっかりとあるアイデアばかりだったんです。

私たちも日々、「クライアントが抱える課題」と「社会が抱える課題」を俯瞰してコミュニケーション戦略を立てています。「学生アイデアファクトリー」に集まってくるアイデアは、環境から健康に関わる分野まで幅広く、そして自分の興味と社会課題を掛けあわせて解決を導き出すアイデアは、想像していた以上に磨き抜かれていて、実現可能性も高いものでした。

「学生アイデアファクトリー」では、アイデアの募集はどのように行っているのでしょうか。

深澤:応募条件は、大学1~3年次(短大1~2年次を含む)、高専4~5年次、高専専攻科1年次、短大専攻科1年次の学生による「独創的なアイデア」であることです。自然科学から人文社会科学まで分野は問いません。

大学の研究室などで教員の指導を受けて進めている研究ではなく、あくまで学生自身が温めてきたアイデアを対象としています。オリジナリティを重視しているため、先行研究の有無についても応募段階でしっかり確認してもらいます。

審査では大学名や性別、応募者名は伏せ、純粋にアイデアのみを評価します。社会課題との接続については、実は選考時点ではそれほど重視していません。ただ、サマーキャンプやアクセラレーションプログラムを通じて、学生たちは多様な人と出会い、議論を重ねていきます。その過程で、もともとのアイデアが社会のニーズと結びつき、磨かれていくのだと思います。

一ノ瀬:なるほど、プログラムでの交流を通じてアイデアがさらに磨き上げられて、アイデアと社会課題がミックスされたものに仕上がるんですね。

深澤:そもそも、アイデアは途中で変わってもいいと私たちは考えています。なかにはサマーキャンプに来て、第一声で「この研究、実現不可能だということがわかりました」という学生もいました。そこから改めて議論を重ね、新しいアイデアへと練り直していったんです。最終審査では当初からの変化も議論にはなりますが、結局は「アイデアが良ければ良い」という判断になります。あくまで学生の成長、そしてオリジナルなアイデアの創出が要なんですよね。

■「参加して終わり」にしない、世代をつなぐコミュニティ

一ノ瀬:「学生アイデアファクトリー」は2025年で3回目を迎え、過去の参加者、現参加者による世代を超えたネットワークとしてアルムナイ組織「SparVeX」もスタートしました。現役参加者と卒業生が関わる中で、どのような変化を感じていますか。

深澤:これはまだ発展途上といったところですが、「学生アイデアファクトリー」は学生の自由な研究を応援することを活動のベースとしながら、次のステップとしては、科学あるいは研究に志を持つ若者たちのコミュニティを育てていきたいと考えています。将来、彼らが社会に出たとき、さまざまな形でこのつながりが生きてくるはずです。

アルムナイが運営に加わり、年齢の近い先輩がいることで現役の参加者にとって安心感が生まれます。また、運営側としてサポートする経験がアルムナイの成長にもつながると考えています。

一ノ瀬:コミュニティとしての拡がりはたくさんの可能性が生まれますよね。「学生アイデアファクトリー」を通じた交流について、学生たちからはどんな声が挙がっていますか。

深澤:「大学では研究に興味を持つ仲間になかなか出会えない」という声をよく聞きます。特に学部の低学年では、講義が主体で研究に触れる機会も限られ、モチベーションを保つのが難しいと。

「学生アイデアファクトリー」では、同じ思いを持つメンバーととにかく研究について語り尽くせます。研究にモチベーション高く取り組んでいる学生が日本の中にたくさんいるんだと実感できます。参加する学生にとってはそれ自体が、大きな励みになっているのではないでしょうか。

一ノ瀬:「学生アイデアファクトリー」の意義は、まさにその空白を埋める点にあるんですね。先に参加した学生からの勧めで、「学生アイデアファクトリー」に参加したと話してくれた学生が何名かいました。学年や所属大学を越えて、研究に本気で向き合いたい学生同士が出会い、自由に語り合える場があることで、「同じように悩み、考え、挑戦している仲間がいる」と実感できることは学生の研究へのモチベーションアップにも繋がりますから。モチベーション維持は個人の意志だけでは難しい上、周囲の環境やつながりに大きく左右されるため、このような学生コミュニティが重要なんですね。

■今後の展望~縦と横のネットワークの拡張~

一ノ瀬:今後、「学生アイデアファクトリー」をどのように発展させていきたいか、展望をお聞かせください。

深澤:規模的には現在が適正だと考えていますが、協賛企業が増えれば、アクセラレーションプログラムでの企業訪問の数やエリアを増やしたり、開催の拠点を増やしたりといった可能性も広げていけるのではないかと考えています。

なかでも最も注力していきたいのはアルムナイのネットワークです。一回限りの参加で終わるのではなく、今後も継続していく中で世代をまたいだネットワークを広げていきながら、企業やアカデミア、社会との交流機会も増やしていければ、もっともっと盛り上がっていくのではないかと思っています。

一ノ瀬:拠点が増えると参加学生が増えたり、応援したいという企業も増えるかもしれませんね。

■意欲ある学生と、関係を育てていく場

一ノ瀬:「学生アイデアファクトリー」は企業の採用活動のための場ではないのですが、もともと私たちが理系人材と企業のコミュニケーションの場として、そして学生の皆さんにとっての将来の可能性を拡げる取り組みとしても着目した経緯もありましたので、少しその視点でのお話もさせてください。

私たちオズマピーアールも、「学生アイデアファクトリー」の社会的意義や参加学生たちの熱意、そしてもちろんJAASの皆さんの熱意に心が動かされて、気がつけばPRパートナーという立ち位置で、ほんの微力ではありますが「私たちにできることをサポートさせてください」とお願いするに至りました。

深澤:広報については、われわれだけでは十分に手が回らない部分もありました。オズマピーアールの支援によって、2025年からは複数のメディアが参画し、多くの記事が発信されるようになりました。この広がりは、プロジェクトにとって大きな追い風になっていて、とても心強いです。

一ノ瀬:そう言っていただけると私たちもありがたいです。

2025年には「オズマピーアール賞」も用意させていただきました。その際に学生さんともお話ししたのですが、やっぱりPR会社は、企業や団体を支援するという意味では世の中の人の目に直接触れるような仕事ではないので、皆さんご存知ないんですよね。でも、この場で出会ったことで、PRで社会課題を解決していく会社があるらしいと知ってもらうことができて、彼らが将来会社や研究機関で広報の支援が必要だと思った時に思い出してもらえるかもしれません。

科学分野の企業だけでなく、さまざまな形で研究者をサポートしていける企業はありますから、多様な企業が参画できる可能性があります。企業にとっても、理系学生のコミュニティの中で自社の評判作りに大いに貢献すると思いました。

深澤:実は私の本業は博士人材の育成やキャリア支援が専門で、研究職採用の状況はよく見ているのですが、自社に合った有望な人材を採用しようと思うと、大手の就職サイトを活用していかにリーチ数を増やすか、という戦略をとりがちです。ただそのアプローチで辿りつく学生は、膨大な情報に接している学生ということになるので、その中で自社を見つけてもらって、さらに応募意欲や志望度を高めていくのは難しいケースも多いと思います。

一方で「学生アイデアファクトリー」では、選抜された意欲ある学生が集まっていて、そのコミュニティの中で企業との関係性も密に育んでいくことができます。その環境は、採用やキャリア形成という面でも双方に良い影響があるだろうと思います。

一ノ瀬:採用のコミュニケーションの現場は空中戦が多い傾向にある中で、ユニークな学生と、直接対話できることが大事ですよね。

深澤:社員の人となりを通じて社風も分かりますし、リアルな業務内容など限定された場だからこそ話せることもあると思います。学生も関心を持ちやすいですよね。

また、サマーキャンプに企業の若手社員が参加してくださることも多々あるのですが、その際には「学部生でここまでのことを考えているんですね!」と、刺激を受けているようです。

一ノ瀬:多くの企業が優秀な理系人材の確保には課題を持っていて、「どうすればリーチできるんだ!?」と頭を悩ませています。もう「ここにたくさんいますよ!」と声を大にして言って回りたいです(笑)。やはりまず一回、現場を見に来ていただきたいですね。

深澤:おっしゃる通りです。実際にサマーキャンプなどを通じて学生と交流していただければ、このプログラムの良さは分かってもらえると思います。

学生アイデアファクトリーは毎年多くの企業にサポートしていただいていますが、現在スポンサードしてくださっている企業も、現地で学生の活動を目の当たりにして「来年もスポンサー参加することに決めました!」と、たくさんの方がおっしゃってくださいます。まずは一度見に来ていただき、さらなる発展のために、より多くの企業さんに参画いただけるとありがたいです。

一ノ瀬:企業と学生がアイデアでつながるこの場に、社会に新しいあたりまえを生み出す取り組みとしてたくさんの可能性を感じています。これからの展開に私たちもとてもわくわくしていますし、多くの方に関わってもらいたいと思っています。

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