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見過ごされがちなターゲットを発見し、新たな価値を創出 「新しいつながり」をつくるイベントPRとは(前編)

アフターコロナでリアルな体験価値の需要が高まり、「推し活」の隆盛や没入型体験などにみる“コト消費”の流行などとともに、生活者が実際に体験できる場としての“イベント”の役割は大きく変化しています。一方で、イベントを実施する企業の中には「開催は決まったが、何から手を付けてよいのかわからない」「自社商材の体験の場をつくりたいが、どう設計すると来場者の体験価値が最大化するかわからない」といった悩みを抱えられている方も多いのではないでしょうか。

オズマピーアールのマーケティングコミュニケーションチームでは、「社会デザイン発想®」に基づき、商品・サービスを見つめ直し、まだ顕在化されていない生活者・社会が求めている新たな価値“公益的価値”を見つけ、新たな需要を喚起していくことを軸に、戦略設計から実施まで一貫して支援。生活者向けイベントの領域では、イベント告知のためのパブリシティにとどまらず、インフルエンサーや共創パートナーの巻き込み、LP制作、効果測定、さらにはイベント企画そのもののアップデートまで、複層的なサポートを行っています。

この記事では、マーケティングコミュニケーションチームの3名が手がけてきた「イベントPR」を、前編・後編の2本構成で紐解いていきます。

前編では、パブリシティの獲得や話題化だけにとどまらないイベントPRを実現するために、3人がどのように目的を捉え直し、ターゲットと情報の流れを設計してきたのかを紹介します。

【スタッフプロフィール】

杉本
PR視点を持ったトレンド分析・ニーズ把握、​SNSのソーシャルリスニングをもとに、ターゲットインサイトに重点をおいたプランニング経験が豊富。​​来店促進・商品​販売促進などマーケティング活動への寄与や、ブランド/事業戦略を世の中にわかりやすく“伝わる”ことを​意識したストーリーづくりを
         心がけている。

小野寺
イベント会社で展示会や企業ブランディング、PRを目的とした空間設計・イベント企画運営の営業を経験。その後、オズマピーアールに入社し、生活者のライフスタイルに寄り添った企画やコミュニケーション設計を担当。ターゲットやメディア、KOLのリアルな声をもとに、「新しいつながり」を生み
         出すプランニングを強みとする。

相崎
企業、自治体、非営利団体など多様な分野のプロジェクトに携わった経験から、目的や課題に深く寄り添うクライアントワークが強み。企画・戦略立案からメディアや外部パートナーとのリレーション構築まで一貫した幅広いPR業務を担当し、生活者視点に立ったコミュニケーション設計を通じて、
         新しい価値の創出を目指している。


【本記事で紹介する3つのイベントPR事例】

杉本:Z世代向けポップアップイベントPR
Z世代に向けて若者の利用率が減りつつあるアナログな文化・サービス体験の拡大を図るポップアップイベントを開催。これまで東京および関西圏にて複数回開催し、想定を上回る来場者が参加し、異例のヒット。 芸能人を登壇させたオープニングイベントからその後の来場促進まで、トータルにコミュニケーション活動を行った。

小野寺:周年記念展覧会イベントPR
子どもをメインターゲットとするロングセラー商品の周年記念で開催された大規模企画展覧会。商品の楽しみ方の新たなトレンドを提唱しつつ、子どもやその家族だけでなく、大人のファンや過去に親しんでいた人など幅広いターゲットに訴求して来場者数を拡大。

相崎:既存の商業施設イベントでのテナント限定メニュー開発
複合商業施設で毎年開催される人気のカルチャーイベントで、クライアントの「施設テナントに還元したい」という課題に応えてイベント限定メニューの提供を企画して実現。テナントとも合意形成を図りながら、コンテンツづくり=メニュー開発まで踏み込み、イベント来場者にテナントでの購買、周遊を促す仕組みを構築。

1|目的の再定義
——見過ごされがちなターゲットを発見し新たな価値を創出

杉本:生活者向けイベントとひと言でいっても、規模や目的、開催形態はさまざまです。

もちろん来場者数の最大化はどのイベントにも共通するゴールですが、パブリシティの数を増やせば成果につながるわけではありません。

ターゲット設定やアプローチを誤れば、パブリシティがどれほど得られても来場にはつながらない。
さらに、クライアントが目指す価値を生活者にきちんと届けられず、イベント体験の質も下がってしまいます。

だからこそ私たちはまず、「イベントの目的は何か」「何を達成できれば成功なのか」を再定義し、そのうえで最適なコミュニケーションを設計することを重視しています。

杉本

小野寺:施策ありきで議論が進んでしまうことは、イベントPRではよくあります。
だからこそ、まずは「誰に届けたいのか」「どのような行動につなげたいのか」という目的に立ち返って、施策全体を見直すことが重要だと考えています。

杉本:ターゲット設定は基本ですが、実際に全体を俯瞰してみると、メインターゲットの外側に“動く可能性のある層”が見えることも少なくありません。
Z世代をメインターゲットにした案件でも、来場者アンケートを見るとファミリー層が数多く来ていることがわかりました。これは「次世代にサービスをつないでいきたい」という事業目的からすれば、新しい市場の発見でもあります。

もちろんメインターゲットは外さずに、さらにイベントの奥にある事業課題に寄り添うことで、新たなターゲットを捉えていく。ここにPRとしての価値があると感じています。

私と小野寺さんのケースは来場者増がゴールとなるコミュニケーション活動でしたが、相崎さんは、集客とは異なる視点でのイベントPRのサポートを担当していましたよね。

相崎:そうですね、私は商業施設のクライアントから「集客はすでに十分なので“イベントを起点に施設全体の価値を高められないか”」というお題をいただき、その視点で携わらせていただいた経験があります。

打合せの中でそれとなく挙がった相談だったのですが、自主提案に近いかたちで、テナント飲食店と連携した“イベント限定テイクアウトメニュー”を企画したんです。来場者に新しい体験価値を提供しながら、テナントにも還元できる施策で、結果として、イベントとテナント、施設全体をつなぐ新しいコミュニケーションが生まれました。

杉本:パブリシティの獲得ではなく、イベントに伴う施設の回遊施策を提案したんですね。
 
相崎:イベント会場自体にキッチンカーなどが出店されますし、持ち込みも自由にできるので会場近くの店舗で買ってくる方もいます。複合商業施設がやるイベントはそもそも館全体への集客という形でテナントに還元するために行うものですが、この事例では、施設だけでなく周辺の街一帯が盛り上がるイベントとして、 地域貢献にもなっているんです。一方で全体の集客ということのみならず、施設側としては個々のテナントへの集客や収益という形で還元を具体化したい、施設そのものの価値も示したいという課題も残されていた。これに対して、私たちから施策をご提案してイベントに組み込んでもらったかたちですね。

小野寺:来場者、テナント、地域までステークホルダーを広げてつながりを設計し、価値を生む。まさにクライアントの課題に寄り添うオズマらしいプラニングですよね。私もこの企画を聞いて、すごく刺激を受けました。

2|ステークホルダーの行動心理を読み解く
——メインターゲットだけにとどまらないイベントへの巻込

杉本:イベントの目的に基づいて情報発信の整理をしていく。これはPRには欠かせないポイントです。商品やサービス自体のファンに届く情報発信をするのはもちろん、イベント会場の周辺にいる人々を呼び込む屋外広告や交通広告等の設計も適切に行います。

いわば“情報や立地の導線上にいる人”は確実に押さえる。その上で、さらにマーケティングコミュニケーションでは、その“導線外”の人に対しても興味を持っていただき、行動を促すのかが肝になってくると考えています。

小野寺:先ほど杉本さんが話していたように、メインターゲット以外にも潜在的なターゲットは存在する、その見極めは重要です。

私が担当した案件の商品は子どもがメインターゲットのロングセラーブランドではありますが、大人にも根強いファンがいます。

昨今の「平成レトロ」ブームの影響もあり、SNS上では彼ら発信の「懐かしい!もう一度集めたい!」といった投稿が増えていることを、事前のリサーチで掴んでいました。そうした動きから、“大人世代が改めてその商材に魅力を感じ、楽しむムーブメント”が形成されつつあると捉え、イベントのコミュニケーションターゲットとして、この層も組み込んでいきました。

小野寺

杉本:来場者アンケートなども見て生活者のリアルな行動を検証していけるのも、イベントPRならではですよね。
私が担当したイベントPRでも当初想定していたターゲットはZ世代の女性でしたが、蓋を開けてみると、実際はお子さま連れのファミリー層の来場が多かったのです。こうしたメインターゲット以外の動きを発見できれば、施策の軌道修正を図ったり、次回以降、その層に向けたコミュニケーションをどう設計するかを検討したりできて、とても有意義な手法だと感じました。

小野寺:ファン層だけでなくどのような層にアプローチするのか、それによってコミュニケーションデザインをクライアントと一緒に考えていくことで、目的に沿ったかたちでの来場者拡大につながっていきますよね。

相崎:杉本さん、小野寺さんのケースでいうと来場者の行動を設計していくところが要となっていますが、私が担当した案件の場合は「協働するパートナー=テナント」の参画をサポートするのも大きな役割でした。

商業施設では多くのお客さまにショッピングやイベントの体験を楽しんでいただく上で、テナントとの関係構築も重要です。今回のイベント限定メニューの提案は、イベントの盛り上げ施策であると同時に、施設側がテナントとの良好な関係構築を果たし相乗効果をもたらすことを目的とするものでもありました。
年間の予算がある中での試験的な取り組みですから、潤沢な予算をテナントに配分できる状況ではありません。オペレーション上でもテナントに過大な負担を強いるものにならないよう、企画を提案する上では配慮しました。

相崎

杉本:イベントのために初めて特別メニューを作ってもらうだけでもチャレンジで、複数あるテナントの皆さんを説得して巻き込んでいくのも簡単なことではないですよね。どうやって成し遂げたのか興味があります。

相崎:まずメニューに関しては、まったく新しいメニューを考案する必要はなく、既存のメニューのアレンジによってその日だけの特別メニューにしていただくことでテナントの負担を軽減。また類似のイベント限定メニューの事例をいくつか準備して、メディアでの露出機会が増えてテナントそのもののPRにも貢献できることをお伝えしました。

参加は必須ではなく協力いただける範囲で、と相談をしたのですが、結果としては、規定でオペレーションを変えるのが難しい店舗を除いてほとんどのテナントが参加してくださいました。私たちも企画では参加しやすい配慮をしましたが、快く協力していただけたのは、元々の施設とテナントの関係性に加え、来場者に新しい体験価値を提供しながら、テナントにも還元できる施策に設計できたからかと思っています。

3|情報流通の設計
——ターゲットが心地よく受け取れるかたちで情報を届ける

杉本:イベントPRにおいて、単に情報を“出す”だけでは生活者の行動は変わりません。重要なのは、「いつ・誰に・どんな情報を届ければ行動が起きるのか」という情報流通の設計です。PRとマーケティング双方の観点でコミュニケーションターゲットを見極めた上で、どのようにアプローチしていくかを丁寧に整理する必要があります。

新聞、雑誌、Webメディア、SNS、さらに会場周辺のポスターや交通広告まで――生活者とイベントのタッチポイントは多岐にわたります。ターゲットの行動導線上に、必要な情報を最適なタイミングかつノイズにならないかたちで配置していくことが、PR視点を持つ私たちの役割だと考えています。

小野寺さんの案件は本当に参考になりました。施策を洗い出し、それぞれのリーチ数を試算して、最も効果が出るコミュニケーションを設計していましたよね。

小野寺:各種メディアやSNSはもちろん、会場周辺の屋外広告に至るまで、リーチ数と来場者数を試算し、予算の配分まで含めたトータルの情報流通設計を行いました。
会期中には実際の来場者属性を見ながら、施策を追加したり強化したりするなど、リアルタイムでディレクションを行っています。

杉本: ターゲットの動きを見ながら、情報が自然に流れていく“タイムライン”を描くことも大切です。イベントの立ち上がりでは初速が重要なため、芸能人やインフルエンサーを招いたオープニングイベントを企画し、認知を一気に拡大させました。芸能メディアだけでなく、経済関連メディア・一般メディア・おでかけ関連メディアといった多様なカテゴリのメディアに向けても取材機会をつくり、ターゲットに向けて複数の文脈で広く情報を届けられる設計にしています。

その後のコミュニケーション施策は、パブリシティの“量”だけを見るのではなく、ターゲットの方々に、どれだけ深い情報を届けられるかという“深度”を重視した設計を行っていきます。
たとえば、イベントコンテンツのひとつに“推し活”といったトレンド要素が盛り込まれている場合、その点に着目し、推し活に特化したメディアやインフルエンサーへのアプローチを強化することで、より興味を持っていただける発信を心がけました。
世の中の時流や生活者のインサイトを取り入れながらさまざまなターゲットを模索し、丁寧に情報の流通を扱っていくのは、PR視点を持ったオズマだからこその戦略だと自負しています。

小野寺:イベントPRは、施策の成果が来場者数やチケット販売数としてダイレクトに表れる領域です。だからこそ、クライアントと連携しながら数字を見据えて施策を組み立てていく必要があります。たとえば、もともとのファン層には十分に届いていると判断できたら、次にアプローチするべきターゲットとタッチポイントを見極め、新しい層を広げていく――そのような判断が求められます。

杉本:長年継続しているイベントであれば、来場者アンケートを参照しながら“次に掘り起こすべき層”を見極めますよね。

小野寺:ええ。数字を見ながらターゲットの広げ方を検討していくわけですが、そこにはやはりPRパーソンとしての“肌感覚”も欠かせません。肌感覚といっても、これまで数多くの案件で培ってきた PR発想・メディア知識・生活者インサイトの積み重ねが裏打ちになっています。

杉本:来場者アンケートで「イベントを知ったきっかけ」を尋ねると、SNSを挙げる方が多いんですよね。ただ実際には、複数の接触機会がある中で“印象に残っていた情報”を回答しているケースも多い。だからアンケート結果だけを鵜呑みにすると、本当に効いていたタッチポイントを読み違える恐れがあります。

小野寺:そのとおりです。イベント情報自体は公式サイトや公式SNSで取得していても、「イベントに行ってみよう」と背中を押した情報は、また別の場所で触れている。接触ポイントは多層的なんですよね。

相崎:行くと決めた後も、生活者は日常の中でさまざまな情報に触れています。その中では、印象が薄れたり埋もれたりしてしまうことも多いわけで。たとえば「テナント限定メニューをやっているらしい」と知っていても、会場での体験後に実際にテナントへ足を運んでもらうためには、駅から会場までの動線にポスターやサイネージを配置して“思い出してもらう”設計が必要です。デジタルとリアルを連動させながら、迷わず行動に移せる導線づくりが重要だと感じています。

小野寺:イベントの魅力をしっかり伝える“最後のひと押し”の部分では、メディアやインフルエンサーの情報発信を最大限に活用するのもPRならではの技ですよね。
以前、私が担当していたイベントでは、メディアプロモートでの会話をきっかけに、雑誌側で特集を組んでいただけることになりました。その際、「この企画に合わせた商材のグラビアを撮りたい」と雑誌編集部からご相談をいただき、コラボモデルを新たに制作することに。完成した特別仕様のモデルは雑誌特集に掲載されただけでなく、イベント会場にも展示できないかと交渉し、実現することができました。メディアとタッグを組んだことで新しいターゲット層の来場を促すきっかけとなり、大きな成果につながった点も非常に良かったと感じています。

杉本:メディアが独自の視点で企画を広げてくれると、タッチポイントが増えるので本当にありがたいですよね。
情報流通は不確定要素も多く、すべてをコントロールできるわけではありませんが、時流や新しいターゲットの動きを読み取り、ポジティブな文脈へと転換していくのもPRの重要な役割だと思います。



後編では、PR発想による企画のアップデートや成果を振り返りながら、生活者・テナント・地域など、多様なステークホルダーとの「新しいつながり」を生み出すイベントPRの可能性を探ります。

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