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シリーズ:リスクとレピュテーション~危機管理広報最前線~/②新しいリスクとして人権が登場

オズマピーアールは、これまで多くの企業・団体に対して危機管理広報のサービスを提供してきました。近年では、SNS炎上時の顧客対応や地域住民団体とのコミュニケーション支援など、従来のリスク・クライシス発生時のメディア対応サポートに留まらず、事業領域が拡大しています。広がり続ける危機管理広報の現状について、弊社コーポレートコミュニケーション部の担当チームが執筆するコラムの連載をスタートさせました。

- オズマピーアール コーポレートコミュニケーション部 部長 西山卓

リスク要因の多様化

これまで危機管理広報の対象は企業不祥事や事件・事故、スキャンダルなどが一般的でした。これらの事象は現在も重要であり、引き続き注意が必要です。

一方で、近年では様々なタイプの新しいリスク要因が登場し、従来の守備範囲だけを見ていれば安心できる状況ではありません。これらのリスクは現在進行形であり、レピュテーションに与える脅威度も日々変化しています。そのなかでも本稿では、最近特に注目が高まっている人権を取り上げたいと思います。

ビジネスと人権について考えるとき、SDGsESG投資の影響を無視することはできません。いまやすべての企業はサステナビリティに配慮した経営を求められています。日本企業はこれまでESGでいうE(環境)とG(企業統治)を中心に取り組みを進めてきましたが、ここに来てS(社会)への関心が世界的に高まっており、企業に変革を求める動きが見られます。

コロナ禍と人権

背景としていくつかの要因が考えられますが、ここでは2つに絞りたいと思います。

一つ目は新型コロナウイルスの問題です。コロナ禍で企業とステークホルダーの関係に大きな変化が起きています。たとえば、経済状況が急速に悪化し、従業員を解雇する企業が増えています。特に非正規雇用の方が深刻で、多くの労働問題が発生しています。

また春には新卒者の内定取り消しが相次ぎ、社会問題化しました。コロナ下の解雇や内定取り消しはメディアの関心も高く、対応を誤るとレピュテーションの毀損に直結します。コロナ関連では雇用の他に、労働環境の問題もあります。従業員に対する安全配慮義務として企業には職場の感染防止対策が求められています。

しかしなかには対策が徹底されていないとして、従業員が不満をネットに投稿し、炎上してしまった企業もあります。テレワークなど新しい働き方を導入する企業も増えていますが、実施環境やルールが整っておらず、従業員とトラブルになったケースもあります。

海外で進む人権意識の高まり

要因の二つ目は海外で進む人権意識の高まりです。性的マイノリティに対する差別やサプライチェーンにおける児童労働などが欧米を中心に問題視され、それが日本に還流するという現象はこれまでもありました。近年はこの流れが強まっています。一見すると自社とは無関係に思われる問題が、ある日突然関連付けられ、糾弾される。そんな現象があちこちで起きています。

たとえば、黒人の人権尊重を訴えるBLMBlack Lives Matter)運動があります。人種にもとづく差別や格差は古くからある問題ですが、今回がこれまでと違うのは政治や社会問題と距離を置いてきた企業が態度表明や事業戦略の修正を求められている点です。あるSNSプラットフォーマーは人種差別への意識や取り組みが弱いと指摘され、大口顧客の広告を失いました。

逆にある化粧品会社はスキンケア製品で“ホワイト”や フェアといった名称の使用を廃止すると決め、同業他社が追随するなど業界全体に広がりを見せています。BLM運動以外にも衣服原料のサプライチェーンにおける強制労働が欧米で争点化しており、投資家や消費者などが日本企業に対してこれらの問題への見解や関わりを説明するよう求めるケースも増えています。

人権を意識したレピュテーション・マネジメント

このように国内と海外では人権問題に対する意識にギャップがあり、潜在的なリスク要因としての脅威は高まっています。同時に、国内でもLGBTのムーブメントが注目されるなど変化の兆しが見られます。

特に2030代のミレニアル世代やその下のZ世代は気候変動や人権問題などの社会課題にどの世代よりも敏感だと言われます。次の社会を担う若者の価値観が変化している以上、「面倒な問題には首を突っ込まず、黙々と稼いでいればいい」という姿勢はステークホルダーの理解を得られない恐れがあります。

再度ESGで言えば、自社のサプライチェーン上で人権問題を引き起こしていないかチェックするなどの「守りのS」はもちろん、自社の活動を通じてよりフェアで生きやすい社会を創り出していく「攻めのS」にも目を向けていく必要があると思います。

西山卓(にしやま・たく)

株式会社オズマピーアール コーポレートコミュニケーション部 部長
多摩大学ルール形成戦略研究所客員研究員
早稲田大学 招聘講師(PR論)

全国紙記者として事件事故や行政取材などを経験した後、オズマピーアールに入社。新聞記者とPRコンサルタントとしての経歴を背景に、メディアと企業広報の双方に通じたハイブリッド人材として活動。​年間100人近い経営幹部に対峙し、攻めのPRから守りの危機管理広報までハンズオンで提供。経営×コミュニケーション領域におけるパートナーとして、幅広いクライアントから評価を受けている。2020年度からは社会課題と公共政策のコミュニケーションを担当するパブリックアフェアーズチームのリーダーも務めている。

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