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子どもから家族へ『逆・授業参観』「SDGs」をもっと身近なものへ -後編-

前編はこちら

子どもから保護者へつなげるSDGs理解。

気候変動、環境汚染や貧困問題・・・これらの問題をそのままにしておくと人間がこのまま地球に暮らし続けていくことが難しくなるかもしれない、という危機感から2030年までにクリアすべき具体的なゴールをまとめた持続可能な開発目標「SDGs」。これには、世代や世界を超えて誰一人取り残されることなく尊重される社会を目指す上での世界共通の17の目標が設定されています。

2016年から世界的に取り組んでいる「SDGs」の目標は、いまや小学校や塾などではこれについてのカリキュラムが組まれ、子どもたちは日常的に触れる機会が多い一方、親世代は学ぶ機会が多くないのが現状です。

オズマピーアールでは、世代や世界を超えて取り組むべき課題であるならば、家庭の中でもみんなが同じ目線で「SDGs」について知識を持ったほうが良いという考えのもと、昨年よりCSR活動の一環として「生活の中でSDGs理解を深める」機会創出に取り組み始めました。
その活動の一つとして実践されたのが2022年9月〜11月にかけて行われた、「子どもから親へSDGsを伝える、逆・授業参観」です。
「子どもから親への授業」を通して、親子で知識をシェアし、親世代のSDGs理解と、家庭での日常生活でSDGs貢献行動を促すためのカリキュラム。この「逆・授業参観」の舞台に選ばれたのは、柏市立高柳小学校です。
東京都市大学の杉浦正吾教授(環境学)を特別講師に迎え、小学5年生に向けてのワークショップと、ワークショップで学んだことを生かし子どもが保護者へプレゼンテーションをする「逆・授業参観」が行われました。

最初のワークショップから「逆・授業参観」までは約2ヵ月。その間、子どもたちはグループワークをメインにSDGsと向き合い、準備を重ねた

カリキュラム内容は

  1. 【9月】 <子どもたちのSDGs理解を深めるインプット授業と、ワークショップを実施>
  2. 【11月】 <そこで学んだ知識をもとに子どもが先生となり、保護者にプレゼンテーション。家で実践できそうなSDGsの取り組みを保護者と一緒に考える>
  3. 【11月以降】 <親子でディスカッションをしながら日常生活の中でSDGsを意識した行動につなげる>

という三段階。

本記事では、2)で子どもたちがおこなった保護者へのプレゼンテーションの様子と、その後の家庭での取り組みを取り上げます。
※1)9月のインプット授業については前編をご覧ください。

ワークショップで得た学びを自分たちの言葉で資料化

9月のインプット授業では「SDGsが生活とどんな繋がりがあるのか?を他人に言えるようにしよう!」をゴールに、「具体的な17の目標」「17の目標を達成したらどうなるのか?」という具体例、さらには「暮らしの中でSDGsを実践するための考え方」などを学んだ子どもたち。グループごとのワークショップでは、「いま学校、地域、家庭で困っていること/やりたいことと、SDGsをつないでみよう」という課題に挑戦しました。

9月のインプット授業とワークショップの様子。

今回保護者への「逆・授業参観」を行うにあたっては、子どもたちが杉浦教授のインプット授業やワークショップで学んだことを総合の授業内でグループごとに資料化。杉浦教授が「プレゼンテーション資料が整っていてびっくりした」と驚くクオリティの高い資料を使いながら、保護者たちに自分たちの言葉で「SDGs」とは何かを説明する導入から始まり、家族も含めてみんなで取り組めることはどんなことなのかをプレゼンテーションしました。

同じ導入部分でも、資料のスタイルはグループごとで様々。

家庭内で実践できそうなことをグループで考え、発表する

「SDGs」の概要を説明した後は、子どもたちが考える「家庭内で実践できそうなSDGs」の発表。「SDGs」の17の目標の中から、自分や家族の行動範囲内で実践できそうなものを説明しました。

例えば、水資源管理に関しては「入浴時はこまめに水を止める」、エネルギーの持続供給に関しては「電気を消し忘れない」、世界に広がる貧困の改善には「食べ残しをしない」、海洋プラスチックごみ問題へは「エコバッグの常備」など、家族みんなで身近に取り組めそうなことを提案。
目標をいくつか選び、それに対しての行動指針を発表するスタイルだったためファシリテーター役と発表役に分かれるなど、各グループでプレゼンテーションの工夫も見受けられました。

先生が「通常の授業参観よりも保護者の出席率が高いです」というほど、保護者の注目度も高いカリキュラムに。

保護者と一緒に考えるディスカッションを経て、「家庭でできるSDGs」の実践へ

どの目標に対して、家庭内でどんな行動ができるのかを発表後、保護者からの質疑応答も。子どもたちにSDGsの概要について深く聞いたり、「いま目標◯番に対して挙げた行動は、●番にも通ずるのでは?」という鋭いツッコミもあるなど、子どもと保護者の積極的な意見交換が行われました。
お互いが意見交換や情報共有をしながら、一つのテーマを考えることはまさに杉浦教授が目指してきた「みんなでつくる探究型授業」の形。正解が一つではないからこそ、子どもも保護者も様々な意見を出し合える機会になったはずです。

逆・授業参観内では、保護者から質問がとんでも先生がアシストするわけではなく、あくまでも保護者も含めたグループで解決をするスタイル。

逆・授業参観で重要なのは「家族でSDGsへの知識をシェアし、日常生活での意識を高めること」。
子どもからの発表、家族での意見交換を経て、日常生活でSDGsを意識できるようになるまでがプログラムとなります。そのため「逆・授業参観」を経て、各家庭では保護者と一緒に「家庭でできるSDGs」の行動目標と数字目標を設定し、「ふりかえりシート」にその達成度や気付きを記入してもらうようにしました。
ふりかえりシートをみてみると、「●●をやる」だけではなく具体的に数字目標を作ることで、行動への意識が高くなっていることがよくわかりました。
例えば節水や節電に関して取り組んだ家庭では、家族と一緒にどれくらいのエネルギー量や水の量を使っているのかという現状を把握し、水や電気を使う心がけを変える前後で数字の変化を感じられた様子。「●●をやった」という行動の達成だけではなく、数字で具体化された達成感を得られたことは、「自分の行動で改善ができる」という大きな経験にもなったようです。

子どもだけでなく家族全員が同じ目標に取り組むことで、家族みんながSDGsについて知識を深めるきっかけに。

ご参加いただいた保護者向けの事後アンケートでは、まず前段として「あなたはSDGsについての知識が充分にあると感じますか?」という質問を投げかけたところ、82%が「あまりそう思わない」「ややそう思う」と回答した一方で、「そう思う」と回答した人数は18%にとどまる結果に。
何となくSDGsという言葉は聞いたことがあるものの、具体的な知識に自信がある人は少ないことがわかりました。
実際に「SDGsの詳しい内容を知らないから、知っていることしかできていない」という回答も挙がり、自分が知っている知識以上の意識や行動は難しいということが伺えます。

そのうえで、「逆・授業参観」実施後の自宅での取り組みや、子どもからの「ふりかえりシート」を回答して、あなたのSDGs意識に変化はありましたか?」という質問を投げかけたところ、9割近くから「そう思う」「ややそう思う」とポジティブな回答が得られました。

この結果については、「子どもたちと勉強したことで、SDGsに対する意識が変わりました。目標を決めたことに対し、継続して取り組むことが難しいと感じることもありましたが、今後も自分たちでできる範囲でSDGsを意識して生活していきます」という回答も。
「逆・授業参観」という、子ども世代の視点を交えながらのワークショップにより、普段とは違った角度でSDGsについて考え、意識をアップデートする機会を創出できたことが分かりました。

枠にとらわれすぎず、楽しむことが意識を継続させるカギに

柏市教育委員会のメンバーも参観した今回の「逆・授業参観」。
「子どもたちの積極性がすばらしく、チームや家族みんなでSDGsに取り組むという意識が見ている側にも伝わってきました」
「わからないことを親が子どもに聞くというのはあまりない機会だが、親も新鮮でよかったのでは」
というコメントも。参加した誰しもがSDGsを“自分ごと”としてとらえる良い時間になったのではないでしょうか。
また、今回講師を務めた杉浦教授からは、
「今はネットでなんでも情報が得られる社会。でも、それを鵜呑みにせず子どもたち同士や家族と問いを立てることで新しい発見があるかもしれません。今回も、紙ストローは本当に環境にいいの?エコバッグは本当に必要なの?など、保護者から多くの質問が投げかけられていましたが、それをすぐに解決しようとするのではなく、家族みんなで考えて、自分たちなりの正解を導くのも良い経験になると思います」とのコメント。
SDGsは世代や世界を超えて向き合う課題だからこそ、家庭や学校、職場で自由に意見交換をしつつ、枠にとらわれず楽しみながら取り組むことが、意識の継続につながっていくのではないでしょうか。

教室内ではどのグループも活発な意見交換をする姿が見受けられた。

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