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コロナ禍でも立ち止まらず、先進的な取り組みを実践する患者会の秘訣!「NPO法人 東京乾癬の会P-PAT」メンバーが語る “巻き込み力”とは。(後編)

かゆみや痛みといった身体的な辛さだけではなく、症状の見た目に対する偏見や誤解を持たれやすいなど、精神的なストレスを抱えている人が多い乾癬。

こうした辛さや悩みを患者さん同士で共有出来る場をつくるだけではなく、医師やメディアを巻き込みながら、社会へ積極的に発信し続けるP-PATのエネルギッシュで先進的な活動事例を紹介します。

聞き手:ヘルスケア本部 肥高 結衣(左)、池田 奈穂(右)
※文中のイラストは池田がお話を伺いして書き起こしています。


密度の濃い!医師とのコミュニケーション

メンバー同士の団結力に加え、P-PATの活動で特筆すべきは乾癬に精通する医師との風通しのいいコミュニケーション。イベントや勉強会には毎回各地から相談医を招き、医師と患者さんの交流を図っています。

上岡さん:P-PATに入って一番驚いたのは、世の中にこんなに素晴らしい先生方がいるんだということ。20人近くの先生が協力してくれてるよね。そういえば、最初はどうやって先生方とつながっていったの?

添川さん:ちょうど東京で患者会を作ろうとしていた頃、2001年9月に幕張で日本乾癬学会学術大会と同時に開催された全国乾癬学習懇談会で 、東京のあたご皮フ科 副院長の江藤 隆史先生に講演していただいたんです。

その講演がすごくおもしろくて! 参加した患者さんのほとんどは学習懇談会なんて初めてで緊張していたところ、笑いをとりながら話してくれて、なんておもしろくて楽しい先生なんだろうと(笑)

いよいよ患者会を立ち上げるという話が具体的になった時、江藤先生に相談医をお願いしたいと会いに行ったんです。診察以外で医者本人を訪ねるなんて経験は誰もなかったし、今よりももっともっと医者の敷居が高い感じだったので、当時の設立メンバー4、5人ですごく緊張して向かったのを覚えています。

いざ江藤先生にお会いしてみると、とても気さくな方で、真摯にわたしたちの話を聞いてくださり、我々の緊張もほぐれました。「君の主治医の先生は誰?」と聞かれて答えると、すぐに電話をかけて、「いま先生 の患者さんが来てて、患者会をやるそうなんだけど相談医やる? オッケー、やるって〜」という感じで、その場で3人の相談医の先生が決まったんですよ。

その後も、江藤先生が全国のいろんな先生方とつないでくださり、これまでの講演会ではたくさんの先生方にご協力いただきました。 気がつけば、これだけ想いのある先生方がP-PATに集まってくださったんです。

大蔵さん:先生方は、「P-PATに来ると元気になる」って言ってくれるんです。ここにいるコアメンバーは今のように治療法も薬もつながりもなくて、とても辛い思いや苦労をしてきた人が多いので、自分と同じような辛い思いをしてほしくない、情報に辿りつけずに人生を棒に振ってほしくない。そういう思いだけでやっていて、何の打算もないというか。たぶん、先生方も知らないうちにそういう熱に巻き込まれているような気がします。

添川さん: いろんな 先生方を 巻き込んでくれたのが江藤先生で、先生同士で理解を促す動きをしてくれました。そのおかげで、だんだんと先生方からも、乾癬の患者団体は一緒に歩むべき存在だと認められていきました。我々の活動の裏側では、心ある先生方が手厚くバックアップしてくれています。

大蔵さん:先生方とこんなに仲のいい患者会って、他にあるのかな? たぶん乾癬の患者会ならではだと思う。

(メンバー全員、同時に深くうなずく)

添川さん:先生方に相談すると、いつも期待値以上のことを返してくれるんです。例えば、雑談の中で今度こんなことできたらと思っています〜とか言うと、勝手に、と言うと変ですが(笑)、先生同士で話を通してくれていることもよくあります。小さな夢を具現化してくれるというか。我々が活動に注ぐ情熱を、先生方も同じくらい注いでくれる。それは本当にありがたいですね。

大蔵さん:ただ、P-PATが全国ネットワークになり、いろんなエリアの情報を耳にするようになると、やっぱり地域によって医療格差があるなと感じています。地方では自分の居住エリアにバイオ(生物学的製剤)を打てるところがなかったり、かかりつけのクリニックに行ってもバイオのことを知らないケースもあったり。東京近郊は恵まれているけど、やっぱり乾癬の患者さんは全国にまんべんなくいるので、この格差は何とかしないとなあと……。

今、私たちと関わってくださっている先生方は十分すぎるほどのサポートや助言をくださっているけど、地方の患者さんたちのことを思うと、小さなクリニックでも当たり前にすべての乾癬の治療の情報が知れたり、説明をもらえたり、大きな病院と連携しながら治療が受けられたりするといいですよね。

添川さん:そうだよね。 うまく医療のネットワークを使って 、地域の垣根を越えて、全国の乾癬を診てくださる開業医の先生方のネットワークが広がると良いなと思います。

そういう意味では、地方で乾癬の講演会などを行う時に、患者さんのリアルな声を聞いてもらったり、問題意識を共有したりできるのかなと思います。これは僕の個人的な思いですが。

まだまだいろんな先生方に、我々との関わりを持ってほしいというのはありますね。こちらは保守的に囲うつもりはまったくないですし、いつでもオープンでいたいと思っています。

YouTube、オープンカフェetc. 乾癬をざっくばらんに語り合える社会に向けて

自分たちが経験してきた治療や薬のこと、患者当人だからこその悩み、相談医の先生方から得た情報やアドバイスなどを、惜しみなくオープンにして、ひとりで悩んでいる患者さんを勇気づけようと活動するP-PATの皆さん。これからさらに力を注ごうとしているのが、今よりももっとざっくばらんに乾癬の話ができる“場づくり”だといいます。

木戸さん:主要メンバーで月1のミーティングを開いて、「次は何やりたい?」「こういうのはどう?」と意見を出し合って、今後の活動の内容や目標を決めています。イベントに参加してくれた患者さんからのアンケートやSNSの反応を参考にすることも多いですね。

オンライン化できてからは、参加してくれる方の幅も広がって、この間は小学生の女の子が参加してくれて、感動したよね

大蔵さん:そうそう、アメリカから参加してくれた方 もいたよね。切羽詰まってアクセスしてくる人が必ずいるんです。その時に鈴木さんが言ってたけど、「あの人が救われただけでも今日の会をやってよかったね」って皆で話したりしてます。

鈴木さん:ああいう瞬間こそ、患者会をやっててよかったなと思いますね。コロナ禍の今はもうオンラインがニューノーマル。リアルとのハイブリッドで、どこにいても患者同士がつながることができるのは大きな価値ですよね。

木戸さん:せっかくオンライン化できたから、小中高生にもぜひ参加してもらいたいですね。

鈴木さん:確かに。若い患者さんの方がひとりで悩んでいる人が多いのかもしれない。我々の発信に使うツールによっては、今まで患者会にアクセスできなかった若い患者さんがもっともっといるんじゃないかなと。今後はその隠れた需要をすくいとっていくことが重要なのかなと個人的に感じました。

大蔵さん:そうですね。間違いなく今は動画の時代で、動画配信に力を入れれば若い人をどんどん巻き込んでいけると思う。YouTubeでP-PATチャンネルをつくろうという企画は前からあるんだけど(2020年7月に単発で実施)、実際は動画を撮ったり編集したりと、人手も時間もお金もかかり、そういう意味でまだ力が足りていないんです。

YouTubeでテレビの深夜番組みたいな気軽なノリで、「乾癬のこれってどうなってるの?」「軟膏の塗り方、やってみよう!」みたいな。乾癬について気軽に話しながら伝えていけるようなP-PATチャンネルをやりたいですね。

木戸さん:最近は音声メディアも流行ってるよね。ポッドキャストでやるのもありかも。

大蔵さん:もうマスメディアではなく、個人でどんどん発信していく時代だもんね。そういう気軽に乾癬を語り合える発信に加えて、患者さんのメンタルをどうサポートしていくかがこれからの大きなポイントだと思っています。今までは治療法がなかったけど、それができるようになった。その次は、治療法についてどうやって情報を拡散 し、治療 に前向きになりみんながどう人生を取り戻していくかが課題ですね。

ただ、治療していくのにはお金がかかるし、さらに自己免疫疾患だから消えてなくなるわけではなく、寛解はするけど完治はしない。そこのメンタルをどうしていくのかっていう時に、単なる医療ではなく、「メンタルの応援」というか、仲間とつながっていったり励ましあったりする中で、勇気をもらうことってあると思うので、ピアカウンセリング的なことが今後の患者会の課題かなと思います。

木戸さん:P-PATとしてはそういう意識の高まりから、皮膚科医兼臨床心理士の先生に協力してもらい、メンタル面の悩みを分かち合う「乾癬ハート」というオンライン交流会を始めました。

大蔵さん:仕事の 辛さや人間関係とか、社会的なストレスが引き金になることもあるのが乾癬という病気。病院では皮膚科専門医にその悩みを伝えても、精神科を勧められるという感じがほとんどなので、患者会ならそこにもう少し手を伸ばせるかなと、企画しました。

乾癬はいろんな意味で自尊心が下がっていっちゃうから、どうやって自己肯定感を上げていくか。私個人的には今そういうアプローチをやりたいと思っています。「ひとりじゃないよ」というメッセージは発信し続けながら、みんなで楽しく上を向いて行けるような。コロナ禍が収束したら、そういう患者教育みたいな研修会を、温泉とかでやりたいねって話しています。

上岡さん:今、大蔵さんの話を聞いていてふと思いついたのは、コロナ禍が落ち着いたら、こども食堂みたいに、「気軽にコミュニケーションがとれたり集まれる患者食堂」とかやってみるのもいいかなと!

わが家は20人くらいなら入れるから、場所だけは提供できるし。各々で食べものや飲みもの持ち寄ってさ。男でも女でも。愚痴を話す場所みたいな。

(全員:いいねいいね〜)

大蔵さん:それに近いこととして、今、LINEのオープンチャットを使ったコミュニケーションの場があるよね。P-PATが作ったことをきっかけに、東北や関西にも広がり、孤独な患者さんが少しは減ってきたかな、と思います。まさにP-PATが掲げる「ひとりじゃないよ」が一気に広がって、孤独からの卒業ができてきつつあるよね。

鈴木さん:目指すものとして、究極的には乾癬だからっていうのを意識しないで居られる場づくりなのかなと。

木戸さん:そうそう。患者会はいつでも癒しの場でありたくて。リアルで会ってる時は、普段は必死で隠している自分の皮疹を「ここにできてるんだ」って気軽に見せられる場所にしたい。悩みを患者会に来て話すことで、ひとりじゃないんだ、大丈夫なんだと安心して帰ることができるような。だからYouTubeとかSNSとか、もっともっと発信を頑張って、早くアトピー性皮膚炎みたいなメジャーな立ち位置になりたい!

(全員:本当にそうだよね〜!)

鈴木さん:だから、今もオズマさんに協力してもらっているように、定期的にメディアには乾癬 の疾患啓発のメッセージを出してほしいですね。やっぱりメディアの力って大きいし、我々だけでやるのとは違ってくるのかなと思います。

大蔵さん:そうだね。大きな力はないけれど、私たちができることとしては、やっぱり患者同士がお互いに話し合える場を作ること。例えば、何曜日の何時から何時まで開設していますといった感じで、あの場所に行けば患者さんやP-PATのスタッフが必ずいて話を聞いてくれるみたいな。

自己免疫疾患の乾癬はずっと付き合っていかなくちゃならない。だからこそ、たとえ病気 をかかえていても話を聞いてもらえるだけでいい。そういうよろず相談ができる場を作って、もっと広い意味でのケアをやっていきたいですね。


NPO法人東京乾癬の会P-PATは、こちらからご覧ください。


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