変動の時代を生き抜く「コーポレートコミュニケーション」#2|広報体制を整える際のチェックリスト
本コラムは「スタートアップ」や「新規事業」に関わったり、「1人目広報」や「1人広報部長」など、コミュニケーション活動の責任者として組織を強化したりする方を対象に、コーポレートPRの考え方や組織設計について解説します。
#1では、組織の成長フェーズに応じたコミュニケーション課題の例や、自組織でコミュニケーション課題を整理するフレームなどをご紹介しました。
(前回のコラムはこちら)
今回の#2では、コミュニケーション活動を行うにあたって必要となる体制や、準備をしておくと良いツールなどをお伝えします。
▼目次
■「広報活動」の体系的整理
■コミュニケーション部門の体制チェックリスト
■避けたい「ネタ切れ」を防ぐには?
「広報活動」の体系的整理
就職活動における「自己PR」という言葉や、ニュースサイトやSNSの広告に「PR」といいう表記が入っているなど、特に日本においては「広報」や「PR」という言葉には、やや偏ったイメージを抱いている方もいらっしゃるので、ここで改めて整理してみます。
<パブリックリレーションズ(Public Relations)の考え方>
・コミュニケーション活動を通じて、組織内外のステークホルダーと良好な関係を構築する取り組み
・組織のフェーズや局面、実現したいことによって、コミュニケーションの相手と伝える内容が変わる
・コミュニケーションの相手に応じて、マスメディアに限定されないアプローチ方法を検討する
<PRの区分け>
【対象】
・エクスターナル=対外的なステークホルダー向けコミュニケーション
・インターナル=組織内の関係者向けのコミュニケーション
【ポジティブな領域】
・コーポレート=組織のことを知ってもらい、良い評判を形成する
・プロダクト(サービス)=新しく提供するモノ・コトを知ってもらう
【ネガティブな領域】
・リスクやクライシス事案が発生した際の対応
コミュニケーション部門の体制チェックリスト
先に述べたように、「パブリックリレーションズ」という考え方は「ステークホルダーと良好な関係を築く」ことを目的としていますので、プレスリリースの配信やメディア対応のみならず、「コミュニケーション」が発生する様々な領域が対象となります。
そこで、私たちが「体制づくり」の相談を受ける際にお伝えしている、コミュニケーション部門として準備しておきたい一般的な内容を書き出すと、下記のような項目となりますので、チェックリストのようにご確認いただければと思います。
なお、これらのなかには、コミュニケーション部門ではなく、デジタル部門や経営企画部門が担当していたりするケースもありますので、あくまでも一般論として見ていただけますと幸いです。
<組織ミッション・ゴール・戦略>
・Why=経営戦略からブレークダウンしたコミュニケーション部門が担う役割
・What=広報活動でどのような認知・評判形成をしたいか
・How=認知・評判形成のためにどのようなファクトを積み上げるか
<リリース配信フローとメディアリスト>
・プレスリリース書式、企業情報などの定型文(ボイラープレート)
・プレスリリース作成・配信フロー(作成者、確認者、承認者)
・メディアリスト(リレーションのある記者の一覧)
<取材対応フロー>
・取材受付窓口および担当者
・取材対応フロー(取材依頼書の有無や取材対象者の選定など)
・取材準備事項(想定FAQ、標準プレスキットなど)
<デジタルコンテンツ(ホームページ・SNS)運用体制>
・ホームページの運用・更新フロー(社内規定、運用マニュアル)
・SNSの運用・更新フロー(社内規定、社外向けポリシー、運用マニュアル)
<インターナル(組織内)コミュニケーション>
・年間、半期、四半期レベルの従業員同士の情報連携・交流機会
・社内報・組織報の制作フロー(編集方針、制作手順書など)
※インターナルコミュニケーションについては、次回お伝えします。
<リスク・クライシス体制>
・発生初期の対応手順(発見・報告のエスカレーションフロー)
・対応検討体制(委員会等組織の組成ルール、構成員、役割)
・想定リスクの洗い出し(リスクレベルの設定、対応方針案まであると良い)
・シミュレーション(記者会見トレーニング、対応検討シミュレーションの実施)
(リスク・クライシス体制についてはこちらのコラムもご覧ください)
仮にすべてが揃っていなくとも、私たちのような外部パートナーと協力することで、委託という形で補完したり、一緒に経験を積むことで徐々に整えていったりと、取り組むべき課題や組織フェーズに応じて柔軟に考えていくことも大切となります。
避けたい「ネタ切れ」を防ぐには?
「体制が整ったので、早速動き出したい!」という段になりましたら、その前にお伝えしていることがあります。
それは「広報カレンダー」を作成しておくことです。
本当によく起きることなのですが、「いざ広報を始めてみたけど、ネタ切れで何を発信して良いのか…」とお悩みになるクライアントさんがいらっしゃいます。
また、出たとこ勝負の情報発信を続けていると、メディアに取り上げられたとしても、都合よく「切り取られた」断片的な情報をステークホルダーが受け取り、誤った印象形成につながってしまうリスクも高まります。
そうした状況を回避し、戦略的にコミュニケーション活動に取り組むためにも、次のような情報を各部門から情報を吸い上げ、集約してカレンダーに落とし込み、「どのタイミングで」「どのテーマを」「どの媒体(タッチポイント)で」伝えるか、先々を見通して検討していきます。
- 国内外の祝日や催事、シーズンイベント、アウェアネスデー(○○の日、○○月間)
- 組織の節目(決算、人事関連、キックオフMTGのような社内催事など)
- 事業の節目(プロダクトやサービスのローンチ、リニュアルなど)
また一度情報が世に出たテーマであっても、「アウェアネスデーと関連させることができないか?」「プロダクトの機能ではなく、開発秘話で打ち出せないか?」など、違った捉え方をすることで再び扱える場合もあり、私たちはそれを「切り口を変える」と言います。
以前も述べた「目的志向」で、形成したい組織イメージから逆算し、情報コンテンツとメッセージを開発、能動的なコミュニケーション活動を仕掛けることが、戦略的なPRパーソンとして求められるのです。
次回は、広報の力で組織のエンゲージメントやパフォーマンス向上に貢献する「インターナル(組織内)コミュニエーション」についてお伝えします。