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  • PRアワードグランプリ2021 ブロンズ受賞
  • 2022年 第14回日本マーケティング大賞 奨励賞
  • 長野県佐久市

長野県佐久市のデジタルコンテンツ「リモート市役所」制作

「面白さ」「カッコ良さ」では物足りない! 生活者の行動変動を意識した仕組みをつくる

PR会社ならではの視点でデジタルコンテンツをつくると、どこがどう違ってくる? 何を起点にプロジェクトを考えるのか、どんなことを意識してアイデアを形にしているのか。PR視点でのデジタルコンテンツの“つくり方”の秘密に迫ります。
さまざまな形でお仕事をご一緒している株式会社ブルーパドルの佐藤 ねじ様と、当社担当者・早藤、登坂の2名を交え、プロジェクトにおけるデジタルコンテンツの制作背景やポイント、また相互のパートナーシップなどについて振り返っていただきました。

佐藤 ねじ氏
株式会社ブルーパドル代表 アートディレクター/プランナー
1982年生まれ。小さくてもいいから新しい発見「0→0.1」を多く見つけていくことを目標に株式会社ブルーパドルを設立。代表作に、「不思議な宿」「NARUTO WORLD」「変なWEBメディア」「小1起業家」「5歳児が値段を決める美術館」「Kocri」「貞子3D2」など。
著書に『超ノート術』(日経BP社)。主な受賞歴に、文化庁メディア芸術祭、Yahoo Creative Award グランプリ、グッドデザイン賞BEST100、TDC賞など。

制作の背景・ポイント

プロモーション後もずっと使い続けられる仕組みを

―― テスト運用を経て、今年1月25日に本格オープンした佐久市「リモート市役所」。移住希望者向けの情報発信の仕組みとして、自治体初の取り組みをされているということですが、何が新しいのでしょうか?

早藤:「リモート市役所」は、自治体としては初となるSlackを活用した移住のオンラインサロンです。自治体がSlackを活用し、かつ自治体主導でオンラインサロンの運用を行っているという点が新しいポイントだと思っています。
このオンラインサロンは、移住の新しいプラットフォームとして、佐久市や移住のリアルな情報発信や、市民との気軽な情報交換をしています。さらに、サロンの中で佐久市や移住の課題に対してブレストをしていて、課題解決につながるアイデアは、実現に向けた取り組みも進めています。

登坂:おかげさまでリリース直後はもちろん、現在も各所から反響をいただいています。

早藤:ねじさんにお声がけしたのは、単発のプロモーションではなく、プロモーション後もずっと自治体の方や市民の方が使い続けられる仕組みとして機能する装置をつくってみたかったのと、企画からいっしょに考えることができて、デザイン、クリエイティブ、HP制作ができる人!という理由でした。面白法人カヤック出身でいらっしゃることにも惹かれました。

課題を起点にすえ「行動変容につながるか」の視点で

―― どのように企画から実施まで進めていたのでしょうか?

 佐藤:“オンライン的な構造のもの” “一方的でない、双方向のもの”というイメージは最初からありました。 コンセプトやアイデアを文言化・構造化して企画書に絞りこむのは早藤さんの担当、僕はビジュアル化やUIの観点で落とし込んでデザイン。アイデアはどっちの担当というより、「どういうのがいいんだろう?」ってみんなで話をいろいろしていくなかで、自然に決まっていった感じです。

早藤: ねじさんと打ち合わせするなかで、いつも気づかされて、自分自身も意識しているのは、課題を起点にすえることでしょうか。何が本質的な問題なのかが把握できていないと、アイデアが解決策につながらないので……これまでの反省も踏まえ、よくある“行政の面白アクション”から一歩踏み込んだものが創れるよう、「課題から入る」ことを心掛けました。「露出しやすいかどうか」ではなく、「行動変容につながることができているか」という視点が大事だな、と。

 登坂:補足すると今回、いわゆる“打ち上げ花火”施策にはしたくなかったんです。それだと派手だしわかりやすいですが、課題の解決につながらないと、あとに何も残らないので。仕掛けっぽいものを多く手掛けていらっしゃるねじさんには、その点でも安心感がありました。

佐久市・移住者・PR会社。三者三様の課題を三方良しのアイデアで突破

―― それぞれの立場から課題に対し向き合った結果、すぐれたアイデアが生まれた……という印象です。「課題」について、もう少し掘り下げていただけますか?

早藤:佐久市側の課題は「コロナ禍で移住希望者が直接足を運ばなくても、佐久市の魅力を伝える術はないか」ということでした。一方で、移住希望者側からみれば「移住検討先の情報の手触りがわからない。現地の生身の情報が足りない」ということが課題です。また、私たちPR会社からみれば「移住のための情報発信において、打ち上げ花火的な施策になってしまう」こと。こういった施策はわかりやすいけれど、認知度に影響はなかったり、作り手の自分としてもむなしい気持ちになったり、本質的な課題解決につながらないことが課題でした。

―― なるほど。次のステップは課題を解決する“アイデアを形にすること”だと思うのですが、そのタイミングで普段から意識されているPR視点はありますか?

佐藤:そうですね、僕自身、いわゆる“ザ・デザイナー”というか、作家型ではないので……本質に本質を突き詰めてゆくことより、発信した情報がどのように受け取られるのかが気になります。また「的外れなことで話題になっても仕方ない」とも思うので、ときには時代に合わせることもします。
 カヤックに在籍していたころ、「オモシロ表現よりも、世の中の課題やちょっとした悩みを解決するオモシロい仕組みや構造の方がニュースになりやすい」ことに気づいて、課題に向き合うPRの大切さを感じました。以来、Twitterでのシェア文言にはちょっとこだわります。本番を迎える前に受け手の反応を1回試すというか、実験して確認したり。仮説を立て、それを検証することは大事なポイントだと思っています。

早藤:私は突っ込まれる要素というか、いじられポイントをあえて作るのが“PR発想のコンテンツ”かなと思っています。みんなが反応しやすいかどうか、「どれだけ多くの人が共感できるか」ということですね。
 何か実利があって「ひとこと」、ファンの熱量から「ひとこと」、さらにそれぞれの言及ポイントから「ひとこと」。共感から生まれた「ひとこと」の掛け合わせが行動変容を促すのだと思いますし、課題からのアプローチだからこそ、それが可能になるのかなと思います。

成果

「リモート市役所」参加者の移住希望者の100%が「佐久市に移住したくなった」と回答

―― 「課題からのアプローチ」、先ほどからのキーワードですよね。「課題からのアプローチ」の結果、「リモート市役所」はメディアやSNSなどで、話題を集めることになったと理解できました。ほかにも「リモート市役所」を実施した成果があったら教えてください。

佐藤:「リモート市役所」のおかげで、実際に移住した例があるんですってね。リリース2ヵ月ですごいですよね!

早藤:先日、アンケートを実施したのですが、「リモート市役所」参加者の移住希望者の100%が「佐久市に移住したくなった」と回答しています。関係人口(出身者や仕事で関わりのある人、何度も観光できたことがある人など)の人も、90%の人が「佐久市に興味をもった」「親しみやすい街だと思った」と答えてくれました。*

登坂:テスト運用のときから、市長など地元のキーパーソンに積極的に参加していただいているのも大きいかもしれませんね。いまは800人弱のSlackメンバーが在籍してくださっています。

佐藤:初期は質問を投げたり、空き家バンク情報を投稿したり、Slack上の“空気をよくする”活動もしましたね。正解はないと思いますが、健全な運営のために手を入れることや運営を仕組み化することも大事だと思います。

早藤:はい。運用面での行動変容という視点も、持ちたいと思います。

登坂:つくったものが移住したい人に刺さったというだけでなく、移住したい人が抱える悩みを解決できて、さらに、プロモーション後もずっと自治体の方や市民の方が使い続けられる仕組みとして機能する装置が「できた」という高い次元で、PRとして成功した事例だったと思います。そのうえで、クライアントと一緒に汗をかくというか、関係構築できるコンテンツともなりました。わかりやすくて、目立つ一発のプロモーションではない、地味だけれどとてもいいPR事例になったと思います。

*「リモート市役所」Slack参加者調査
調査日:2021年2月16日~2月28日
調査手法:インターネット調査
調査対象:「リモート市役所」Slack参加者99名

プロジェクトメンバー

早藤 優樹
企業や自治体など、幅広いプロジェクトに参画。「2016年度PRアワードグランプリ」にてシルバーを受賞した岐阜県関市のSEKIシティプロモーションでは、スターウォーズとコラボレーションしたプロモーションを企画立案。さまざまな関係者や団体を巻き込んだプランニングの設計・実行力が強み。

登坂 泰斗
2015年よりデジタル×PRソリューションの深掘りを開始、この4月よりPRドリブン・コミュニケーションを推進するリーダーに。早稲田大学商学部 招聘講師、産業能率大学 地域創生・産学連携研究所 客員研究員、宣伝会議 デジタル広報講座他レギュラー講師 等、登壇経験も豊富。

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