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  3. 訪日外国人に向けた日本食文化のファンづくり

日本産農林水産物・食品の消費拡大を見据えた、日本食へのファン化促進を図るインバウンド向け施策

コロナ禍を経て訪日旅行が再開され、2023年の訪日外国人総数が2019年比の8割程度まで回復してきた中、円安が追い風となってインバウンド消費額は過去最高の5億円超えに達しました。このように驚異的な回復を見せたインバウンド需要と日本の農林水産物・食品の輸出の相乗的な拡大を図るべく、それぞれの管轄組織となるJNTOとJETRO、その傘下にあるJFOODOの3者は2022年12月に相互連携に関する覚書を締結し、 2023年3月に戦略的な取り組みが設定されました。

今回、私達は上記背景の下、JFOODOの事業を通じて日本産農林水産物・食品の消費拡大を見据えた、日本食へのファン化促進を図るインバウンド向け施策を企画・運営しました。訪日外国人旅行者に日本食のファンになってもらうには、日本食の奥深さに対する理解を深化させ、結びつきを強化する必要があります。そこで私達は「日本食への探求心を刺激」し、「食体験の焼き付けと拡散」を通して日本食へのファン化促進を図りました。

戦略①:日本食の奥深い楽しみ方を、訪日外国人旅行者の理解度に合わせて発信

日本食は「季節性=四季毎に楽しめる旬な食材」や、「地域性=その地域ならではのご当地グルメや郷土料理」、そして「多様性=同じジャンル内でも様々な種類がある」といった特長から来る幅広さと奥深さがあり、訪日の回数や訪問先、理解度によって楽しみ方が無限にあります。訪日外国人旅行者の日本食への探求心を刺激するために、まずはそうした日本食の奥深い魅力に気づいていただくことが重要です。

旅ナカ、すなわち旅行中に日本食をより深く楽しむことは、帰国後も日本食や日本産食品を自国・地域でも継続的食べたい、購入したいという意欲につながります。私達はこれを目標に、初訪日の方はもちろん、リピーターの方でも楽しめるように、日本食の幅広さを入口にしながら、地域性や季節性にも重きを置いて魅力発信することを狙いました。

戦略②:カスタマージャーニーに沿って各施策を展開し、より深い日本食のファン化へと促す

私達は訪日外国人旅行者の、滞在中の日本食体験の記憶の焼き付けと拡散アクションを通じたファン化を狙いました。誰もが滞在中の思い出を振り返る帰国前の空港というタイミングを捉え、滞在中の日本食体験の記憶を改めて思い出し、共有を促す仕掛けのあるイベントを開催。この帰国時のタイミングでの思い出し=記憶の焼き付けをゴールに、旅ナカのタッチポイントとなる駅や商業施設などでは体験促進とともにイベント告知・誘導を行い、更にオンラインではキャンペーンサイトやSNS、国内外の広報協力を通して日本食の魅力に旅マエから触れてもらうなど、訪日外国人旅行者のカスタマージャーニーに沿って各施策の役割を設計し、展開してきました。

PR施策 / 活動内容①:開催場所の特徴を生かし、地域性をはじめとした日本食の魅力を訪日外国人旅行者に向けて発信

前述した戦略を踏まえ、私達は年間を通じて訪日外国人旅行者の利用度が高い6空港(成田、羽田、関西、中部、新千歳、那覇)に延べ13回、所在地域名や該当地域の日本食を散りばめた写真スポットを設けたブースで広報イベントを開催しました。会場では、訪日外国人旅行者に滞在中の日本食体験を思い出して自身のSNSで指定のハッシュタグをつけて共有してもらうだけでなく、日本食の奥深い魅力に触れながら、持ち帰ってもらえるカプセルトイなどのツールの配布を通して、日本食体験の焼き付けと拡散の強化を図りました。

また日本各地の商品を取り扱う商業施設では、広報イベント開催空港の所在地域の日本食に合うお酒(日本酒、焼酎、泡盛、ウイスキー)を試飲できる参加型アクティビティを提供しました。各地域別に代表的なメニューと、それに合うお酒のタイプをパネルで紹介するとともに、試飲を通して地域性豊かな日本の食とお酒の両方を実感してもらう構成にしました。空港と同様に、開催場所の特徴を生かして地域性をはじめとした日本食の魅力を発信しました。

PR施策 / 活動内容②:訪日外国人旅行者に人気のカプセルトイを「興味・関心の惹きつけツール」のみならず、「日本食の魅力発信ツール」としても活用

空港や駅、商業施設でよく見かけるカプセルトイは、小銭で気軽に持ち帰れるお土産、そして日本らしい体験の一つとして訪日外国人旅行者に人気を博しています。イベントでも目玉として見せることや景品とすることも多いですが、私達は目を引くための「惹きつけツール」として巨大ガチャガチャを活用した他、カプセルトイ自体を「魅力発信ツール」として活用する可能性にも着目しました。

カプセルトイの中身を「空港所在地域の日本食」をテーマにしたキーホルダーにしながら、付属の取扱説明書を季節性や地域性を中心とした「日本食の魅力」ガイドブックに仕立てました。キーホルダーは、一般的に知られている日本食の他に「地域限定版」も設けておくことで、定番ものに当たった人には共感と記憶の深化、まだ広く認知されていない地域ものに当たった人には知るきっかけづくりに繋げ、同封のガイドブックと併せて持ち帰って読んでもらうことで、帰国後や次の訪日時の楽しみになることも目論んでいました。

活用の結果、訪日外国人旅行者の参加度を高めることができ、アンケート調査でも高い継続喫食意向と周囲へのお勧め意欲に反映され、「記憶と拡散の最大化によるファン化」といったゴールは達成できたと考えられます。

まとめ

日本食へのファン化促進を図る今回のインバウンド向け施策では、訪日外国人旅行者に、滞在中に食べた中で最も気に入った日本食の写真を、自身のSNSに指定のハッシュタグをつけて投稿してもらうキャンペーンを中心に、前述した空港や商業施設での広報イベントをメインに展開しました。他にも、訪日外国人旅行者が旅ナカで利用する駅に広告を掲出することや、日本食・日本食文化の魅力や地域のご当地グルメを紹介する特設サイトを開設する施策も行いました。

参加された訪日外国人旅行者に対するアンケート調査の結果から、8割を超える来場者が「自国・地域に戻った後も日本食を食べ続けたい」、また7割を超える来場者が「日本食を友人や同僚に10点満点で勧める可能性がある」との回答を得られ、訪日をきっかけに日本食の更なるファンになり、そこから自国・地域での消費拡大や周囲への広がりが期待できる結果となりました。

オズマピーアールでは、本事業でも注目している「訪日インバウンド」と「産品アウトバウンド」の循環づくりを自社の取り組みとしても推進しています。これまでの両領域への支援から見えてきた「コミュニケーション」と「ディストリビューション」の分断を課題として捉え、その状態を解消していくことが今後の日本全体の海外事業成長に繋がっていくと考えていることから、早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所と産学連携での研究を実施してきました。

その上で、両領域を統合して循環させる「X-Bound(クロスバウンド)」という考え方から、体験によるストーリー構築型の消費行動モデル「ExDCATS(エクスディーキャッツ)」を新たに提唱しました。本事業をはじめ、「訪日インバウンド」と「産品アウトバウンド」の循環づくりに寄与する支援や取り組みを、今後も引き続き行って参ります。

<関連サイト>
早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所との産学連携研究 
https://ozma.co.jp/news/detail/158
体験によるストーリー構築型の消費行動モデル「ExDECATS」 
https://ozma.co.jp/news/detail/163

プロジェクトメンバー

執行役員 兼 リレーションズデザイン本部 本部長 榑林佐和子 
コーポレートコミュニケーション本部 副本部長 谷澤和哉 
統合コミュニケーション戦略2部 コミュニケーション・ディレクター 馮惠芸 
統合コミュニケーション戦略2部 コミュニケーション・ディレクター 久保木麻衣 
統合コミュニケーション戦略2部 シニアアソシエイト 植村勇希 
統合コミュニケーション戦略1部 シニアアソシエイト 森夏海 
ブランドデザイン2部 シニアアソシエイト 宮崎由美 
ブランドデザイン2部 アソシエイト 吉田周平

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