職場のおじさんがトレカに!?楽しみながら脱炭素に挑戦「省エネおじさんカード」
近畿地域を管轄する経済産業省の出先機関「近畿経済産業局」エネルギー対策課では、近畿管内の主に中堅・中小企業のカーボンニュートラル促進をミッションとしており、企業に向けて研修や省エネ技術指導員による省エネ診断を提供しています。しかし、これまでの活動で省エネ活動の必要性について理解はいただけているものの、実際の現場で一歩進んで実際の省エネアクションに進んでもらうことに課題があり、十分に浸透しているとは言えない状況が続いていました。それは、中小企業の省エネアクションを担当する方々には総務部など技術系以外の職員も多く、「コンプレッサ」や「インバータ」などマニアックな用語が度々登場する省エネの世界を自分ゴトとして捉えられていない、さらにアクションの効果も見えにくいため行動意欲につながらないことが原因と考えられました。
行動経済学ナッジ → 金融機関のドアノックツール → トレーディングカード!?
そこで私たちオズマピーアールは、難解な理屈の前にまずは「楽しく」省エネに触れていただき、「わかりやすく」効果を可視化することで省エネへの行動喚起に繋げたいと考え、楽しみながらわかりやすく理解することに優れた行動経済学のナッジ理論に着目。そこからゲーミフィケーションの要素を取り入れ、楽しみながら省エネアクションを学べるボードゲームなどのゲーム制作を提案しました。
さらに、中小企業への窓口として日々協力していただいている地域の金融機関を巻き込み、このゲームを、金融機関が取引先である中小企業に向けて省エネアクションを提案するためのドアノックツールとして活用してもらうことも合わせて考案しました。しかし、当初イメージしていたボードゲーム形式は、持ち運びやチュートリアルの難しさから簡単なコミュニケーションが求められるドアノックツールには不向きでした。
そこで、着目したのが“名刺交換”です。初回の打ち合わせ(ドアノック)では、名刺交換が必ず行われます。そこで名刺ではなく、カードを交換(トレーディングカード)することで省エネに関する知見を広めていくことができるのではないかと考えました。ただのプロモーションカードを配布するのではなく、簡単なゲーム対戦をすることによってゲーミフィケーションを図っていく参加型のカードゲームをイメージしています。
こうして、トレーディングカード形式のゲーム制作が決定しました。

職場で4名のチャーミングな「おじさん」を発見!
トレーディングカードは、カードの表面に登場する「キャラクター」が重要になります。まずは、戦隊ヒーローのような魅力的なキャラクターを求め、近畿経済産業局様へ取材したところ、省エネ技術指導員と呼ばれる4名の「おじさん」が所属されているとの情報をお聞きしました。
4名の「おじさん」は、電力会社など第一線の現場で長年省エネのプロとして活躍されており、定年退職後の第二の人生として近畿経済産業局内で省エネ技術指導員として勤務されています。普段は、省エネ法で企業に提出を義務付けられている複雑な書類の確認作業を、職場でまじめにこつこつ行っており、省エネアクションの普及にもっと自分にできることがないかと内なる情熱を燃やしていました。ご自宅でも省エネ効果が認められているエアコンの室外機熱交換器フィンの清掃は毎年欠かさず行われているとのことで、ご家族も認める「省エネおじさん」です。まさに本プロジェクトの主役として戦隊ヒーロー以上に「省エネおじさん」がふさわしいとプロジェクトの全員の意見が一致した瞬間を覚えています。
おじさん方皆、トレーディングカードになるという突拍子もない提案にも関わらず、「省エネアクションの普及に繋がるのであれば」と快くモデルを引き受けてくださり、チャーミングな笑顔とポージングで全種類魅力的なカードに仕上げることができました。

カードデザインは「行動喚起のプロフェッショナル」が監修
実際の省エネアクションに繋げるために、カードの仕様設計を行動経済学者の竹林正樹先生(青森大学客員教授)に監修いただきました。
行動経済学のナッジ理論から、人は得した時の喜びより損した時の苦痛を強く感じるという「損失回避バイアス」の要素を取り入れ、「会社の照明を高効率照明に交換」「コンプレッサの吐出圧力を減らす」などの省エネアクションによって、CO2がどのくらい削減されるか、コストが何円削減されるかをわかりやすくデザインしています。
また、火・水・風・光などの属性と、カードに記載されたCO2削減量で誰でも簡単にカード対戦ができ、まさに「ドアノックツール」として、金融機関が企業とカードを通じてコミュニケーションが取れることも大きな特徴です。

おじさんの省エネ愛×行動経済学のエッセンスで「省エネおじさんカード」ついに完成! 初披露した交流会では、ポジティブなリアクションが多数!
2025年2月、金融機関の法人取引担当者約50人を招いた大阪市内の交流会「GX CROSSROAD」で「省エネおじさんカード」を初披露しました。実際にカードで対戦した金融機関からは「ゲーム形式になると、専門用語が身近に感じ、企業に関心をもってもらえると思う」というポジティブな声もいただけました。また、テレビ3局、大手新聞社にもご取材いただき、想定以上に大きな反響がありました。さらに、体験いただいた金融機関の職員の多くが「おじさん」であり「おじさん」が「おじさんカード」で遊びながら真剣にカーボンニュートラルについて考えているという全「おじさん」を巻き込んだ違和感のある画も、多くの方からのポジティブなリアクションに繋がったポイントと感じています。
交流会終了後、報道の反響から経済産業省より問合せがあり、彼らが開催する金融機関と省エネ支援機関向けのイベントでも発表されることとなりました。初回ロット1,000枚も3カ月で無くなり再版印刷も行いました。
この反響の大きさから第二弾を2026年発表に向け制作中です。次なる展開に是非ご期待ください。

近畿経済産業局・ご担当者様より
「何これ?」、「すごいカードやな!?」。カードを使って金融機関で勉強会をした時の反応です。
ただ、私どもがこれまで省エネの取組について色々なところでお話しをさせていただいた時にはこんな反応はなく、「何の話をしているのかさっぱり分からない」という顔をされていたり、時には寝息を立てられたりということもありました。
少し「クセのあるカード」にしたことで、カードに書いていることが正確に理解できなくても関心を持ってもらえているということをとても感じています。また、CO2削減量、エネルギーコスト削減額という「数字」のインパクトは大きいようで、「こんなに減るんや!」といった声も数多く聞かれます。このような「関心」が次の省エネアクションにつながるものと考えています。
私どもは「省エネおじさんカード」を使って金融機関の方ももちろん、その先の地域の、特に中小企業の方々に省エネの取組について気づきを得てもらうこと、また、取り組みたいと考えている方々の後押しをしていきたいと考えています。
2050年カーボンニュートラルの実現には一部の方々だけではなく誰もが取り組まないと達成できない目標です。「省エネおじさんカード」もその実現に向けた一助となるようにしていきます。

竹林正樹先生(青森大学客員教授)より
カーボンニュートラル促進は、「面倒が発生するのは今、効果が発生するのは将来」という性格を持つため、つい後回しにされやすいのです。このカードゲームでは、人間心理を踏まえ、終わった後に「現場の声を聞いてみるか」「見積もりを取ってみるか」と踏み出したくなるような設計にしています。特に工夫したのは、「対策しない時の具体的な損失額」を紹介したことです。これは「損失回避バイアス(得した時の喜びより損した時の苦痛を強く感じる心理)」に訴求したものです。ただし、カードの最初に損失表現があると、全体の印象が悪くなる可能性が高まるため、カードの下半分に記載しました。現場の経験と研究の知見を組み合わせてできたカードゲーム。ぜひ手に取ってみませんか。

<協力パートナー>
カードデザイン 壽山吉隆 様 (HAREBARE inc.)
https://office-harebare.co.jp/
<行動経済学専門チーム「OZMA Nudge Social Design Unit」>
ナッジの専門知識を活用した情報発信支援やオリジナルのナッジ研修メニューを提供しています。
https://ozma.co.jp/news/detail/83
