
- 日本産食品プロモーションセンター(JFOODO)
日本産コメのさらなる消費拡大に向けたリアルとデジタルを横断したプロモーション
日本産コメの持つ「甘み」や「冷めても美味しい」など特長を訴求したプロモーションを、リアル/デジタルを横断して香港・シンガポールにて実施
日本政府は農林水産物・食品の輸出を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という輸出額目標を設定しており、その重点品目にコメ・パックご飯・米粉及び米粉製品が選定されている。その目標の達成に向けて日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)では、香港とシンガポールにて日本産コメの消費を拡大させるべく、日本産コメの特長を軸にした消費拡大プロモーションを実施しました。
今回、私達は企画・進行統括として事業に携わり、現地の若年層と有子家庭層に対して、SNSやWEBサイトの制作、広告配信などのデジタルコミュニケーションと、現地飲食店とコラボレーションしたワークショップや店舗キャンペーンなどのリアルコミュニケーションの双方向からターゲットに働きかけることで、香港とシンガポールの生活者に対して「冷めても美味しい」や「甘み」と「高品質」など日本産コメの特長の理解と喫食意向の向上を目的に事業を手がけました。
課題と戦略:香港・シンガポールの若年層と有子家庭層に対して、訴求する日本産コメの特長を伝えて喫食意向の向上を図る
定量調査の結果などを元に、消費者が日本産コメに対して何を求めているのかを考察し今回のターゲットである若年層と有子家庭層の消費行動を分析し、週1回未満の頻度または喫食しない低頻度層と、週1回以上の頻度で日本産コメを喫食する高頻度層で、特長に対する理解度が異なることが分かりました。
低頻度層は日本産コメの「高品質」なイメージは根付いているものの、具体的な食味に対する理解が低いため「シンプルな白米の喫食」などの体験の提供と、「うまみ」や「甘み」、「もっちりふっくら」など、既に高頻度層では理解の高い特長の訴求を図ることとしました。
一方、高頻度層はさらなる喫食頻度の向上を狙い、「新たな発見のある仕掛け」を交えた体験の提供と、中華圏では冷めた食べ物が敬遠されやすいからこそ「冷めても美味しい」ことなどの訴求と、有子家庭層に向けては、現地で注目を集め始めている食育の観点から「丁寧な農法」で作られていることの訴求も合わせて図ることで、それぞれのターゲットに対してアプローチして事業目的の達成を目指しました。
戦略①:現地で日本産コメの訴求を表現するキービジュアルとコピーなどのクリエイティブ開発
日本産コメの特長は「甘み」など味わいから「丁寧な農法」など生産される背景まで幅広く表現できます。そこで現地の消費者に対して、それを的確に表現するために「五感で味わう、日本産コメ」というクリエイティブ開発の軸となるコミュニケーションコンセプトを開発しました。
今回のプロモーションでのクリエイティブの役割は、統一的に使用するプロモーションの顔になりブランディングに寄与するものであり、消費者が直感的に見て覚えてもらいやすく、顧客や見込み客の心に印象を残すためにあります。
それを踏まえて、キービジュアルはインパクトがあり、瞬間的に消費者の注目を惹かせることを目的に、日本産コメの思わず食べてみたくなるような表現を強調するコンセプト訴求として、お米の艶感、粒感、湯気、香り立ちを「五感で味わう」ことを感じられるように意識して開発を進めました。
コピーは注目した方に日本のコメの魅力を端的に理解させることを目的に、味わいなどの機能的な特長と、作り手の思いやこだわりなどの情緒的な特長の2つのポイントを表現できるよう工夫しました。具体的には音感・語感を意識、文字数のシンプルさ・読みやすさなどの言語的な受容性と、キービジュアルの訴求内容との親和性を担保して開発を進めました。
このキービジュアルは、現地では日本産コメの品質の高さなど機能的な特長だけでなく、生産者のこだわりなど情緒的な特長も訴求も狙い、後述する各施策で幅広く用いられました。
戦略②:現地飲食店とコラボレーションしたワークショップで特長の理解獲得を狙い、店舗キャンペーンなどリアルコミュニケーションを軸にした喫食機会の創出を図る
現地では和食が広く普及し、日本でも目にするようなチェーン店を街中で見かけることが多くあります。しかしながら日本人のように手巻き寿司やおにぎりを作るなど、コメを触れたり、料理したりすることはまだ多くありません。
そこで香港では5店舗、シンガポールでは3店舗の飲食店とコラボレーションして合計17回、202名が参加したワークショップを開催しました。このワークショップでは試食だけでなく、おにぎり作りなどを通じ、触る、嗅ぐなど五感を刺激するデモンストレーションやワークを通じて、日本産コメのおいしさの元となる特長の理解と喫食意欲の獲得を狙いました。
その結果、高い満足度の獲得だけでなく、「冷めても美味しい」ことや「丁寧な農法」で作られていることなど、機能的と情緒的な特長の両方の理解も獲得することができました。
さらにワークショップ以外にもリアルコミュニケーションとして、香港では14ブランド、シンガポールでは9ブランド、合計71店舗の飲食店とコラボレーションして、日本産コメの特長を感じられるメニューを提供する店舗キャンペーンを2023年12月から2024年2月にかけて開催しました。
期間中は2万食以上のメニューが提供され、開催した店舗からは「このようにブランド認知を高める活動により、日本産コメの関連商品の購買意欲を高めることに繋がった」や「特長などの良さをより実感していただけたことは、日本の農産物全体の信頼性の向上につながったと思う」などのコメントをいただき、店舗キャンペーンによって特長の理解の獲得以外にも、日本産品そのもののブランド向上にも寄与しました。
戦略③:喫食機会の創出のために欠かせない情報発信のアシストはデジタルコミュニケーションを中心に実施
今回のプロモーションを実施した香港とシンガポールは、ターゲットが20~40代をカバーする若年層と有子家庭層ということもあり、デジタル分野での情報発信が欠かせません。
そこで、日本産コメを紹介やワークショップと店舗キャンペーンの開催情報を掲載する特設WEBサイトを制作し、閲覧者を増やすためにデジタル広告をターゲットに集中させて配信したことで約9万ものユーザーがWEBサイトを閲覧し、プロモーション全体の認知獲得を図りました。
合わせてワークショップや店舗キャンペーンの参加店舗などの情報を、積極的に配信するためにSNSアカウントの運用と現地のグルメインフルエンサーと共に情報発信を行い、SNS上の幅広いユーザーに対して喫食を促す情報を発信し、約20万ものリーチを獲得し、ワークショップや店舗キャンペーンの情報と接触しました。
それだけでなく、コラボレーションいただいた店舗にはキービジュアルを活用したポスターやチラシを提供し今回のプロモーションではデジタルを中心にしつつも、リアルを掛け合わせて消費者に日本産コメの喫食意向の獲得に向けてラストワンマイルまでコミュニケーションを図りました。
まとめ
統合型マーケティング・コミュニケーションのプロモーションということもあり通常の広報とは異なり、ひとつのコンセプトテーマ「五感で味わう」を軸にして、輸出拡大の期待される2地域・国において幅広い施策を連動させて、このプロモーションを実施しました。
日本と同じくコメ食文化の香港とシンガポールで実施するからこそ、日本産コメを食べる理由を見出す難しさに直面することは度々ありました。日本産コメの良さを訴求するだけで、「主食」や「おかずと一緒に食べるもの」というように既に日常食として深く根付いているコメを、現地価格の2~3倍もする日本産コメに切り替えるには、情報の訴求だけで押し切ることはできません。
多くの産品プロモーションを手掛けていて、発信した情報を現地で体感できる仕掛けがなければ、その訴求力は半分以下の効果しか発揮できないと感じます。当たり前のことを言っているように聞こえますが、この「体感できる仕掛け」の設計が意外と難しいポイントで、どのような価値を誰に対して訴求するかによってコラボレーションする店舗の価格帯やジャンルはおろか、インフルエンサーの方向性や制作物のトーンアンドマナーも全く異なるため、現地での調整力が大きく問われる部分になります。
そこで今回のプロモーションのように、消費者の行動変容を促す統合マーケティング・コミュニケーションではコンセプトの企画・設計がカギとなります。私達、オズマピーアールはさまざまな日本産品の普及に向けて、海外消費者の行動と思考を起点とし、これからも人の心を動かすカギを武器にしてブランドデザインに挑戦し続けます。
関連サイト
日本産食品プロモーションセンター(JFOODO)
https://www.jetro.go.jp/jfoodo/