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JFOODO統合型マーケティングコミュニケーション事例

日本の誇り「日本酒」が、美食大国・シンガポールに挑む!

近年 、世界各国で和食がブームになり、日本の農林水産物・食品に注目が集まっています。なかでも、輸出額が増加している品目の一つが「日本酒」“SAKE”。 日本酒の海外輸出額は右肩あがりに伸びており、10年前の約3.3倍、234億円に達しています。いまやオスカーの授賞式やノーベル賞の晩餐会でも振る舞われる大人気の日本酒。フランス料理の巨匠、故ジョエル・ロブション氏が日本酒に惚れ込んでいた話は有名です。また、高級シャンパン・ドンペリの巨匠、リシャール・ジェフロワ氏も、富山で日本酒づくりをはじめました。

クライアントは2017年に日本貿易振興機構(ジェトロ)に設置された日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)。日本産農林水産物・食品のブランディングのためにオールジャパンでの消費者向けプロモーションを担う組織です。私たちは日本酒に魅せられる海外のファンをもっと増やそうと、シンガポールで日本酒の統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)を展開しました。

課題と戦略

シンガポールは日本からの日本酒の輸出額が6番目に多い国で、今後もさらなる成長が期待できる市場です。しかし、まだまだ日本酒のシェアは低く、アルコール市場全体に占める割合はわずか0.9%。そこで、私たちは「魚介類に最も合う食中酒は日本酒である」というコンセプトのもと、シンガポールで日本酒の統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)を展開しました。

課題

  • シンガポールのアルコール市場全体に占める日本酒の割合はわずか0.9%

アプローチ戦略

  1. まずは現地事情を知ることから。美食への関心が高い「富裕層」をターゲティング
  2. 多様なジャンルのトップレストランとコラボし、日本酒ペアリングメニューを提供
  3. メディアミックスの展開

PR施策 活動内容

[アプローチ戦略1]まずは現地事情を知ることから。美食への関心が高い「富裕層」をターゲティング

海外に輸出される日本酒は、どうしても輸送費や関税の影響で価格が高くなり、ときには国内の小売価格の4倍程度にも跳ね上がることもあります。そこで、本プロモーションのターゲット消費者を「高額な日本酒を購入・注文しうる層、つまり『富裕層』(上位30%程度)」に設定しました。シンガポールには家で自炊をする習慣がほとんどなく、圧倒的な外食文化が根付いています。そんな外食産業においても出費を惜しまない富裕層は、グルメへの関心が非常に高い傾向にあります。

料理ジャンルではなく、食材との相性で日本酒の魅力をアピール

日本酒の魅力を伝えるプロモーションの場として候補に挙がったのが、富裕層たちが足を運ぶミシュラン級のトップレストラン。シンガポールにおける日本酒の市場拡大のためには、外食産業の中でも特に非和食レストランでの取扱いを拡大させることが重要です。そのため、今回は和食をあえて候補から外し、フレンチ、スパニッシュなどの西洋料理やインド料理など、多彩な食文化が融合する美食の国・シンガポールならではの、幅広いジャンルのレストランを選定しました。

これまで日本酒のイメージのないジャンルの料理との組み合わせをシンガポールの人たちに伝えるにあたり、統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)のコンセプトは、「SEAFOOD LOVES SAKE」としました。「和食」という料理ジャンルではなく、「魚介類」という食材との相性を訴えることで、日本酒の可能性を実感してもらうのです。

[アプローチ戦略2]日本酒と魚介類との相性を体験できる「レストランキャンペーン」

海外における日本酒市場の拡大という結果につなげるためには、ただ「知ってもらう」という情報発信だけでは不十分で、実際に「飲める(体験できる)」環境整備のための流通や小売関係者の巻き込みが不可欠です。

シェフらのクリエイティビティを刺激

まず、飲食業界において絶大な信頼を得ているコーディネーターがトップシェフたちを一人ずつ口説き落とします。自らの料理に高い誇りを持っているシェフたち一人ひとりに、キャンペーン条件を説明し、彼らのクリエイティビティを刺激する日本酒ペアリングを提案していく“合意形成”こそが、PR会社の腕の見せどころ。作り手たちの愛と情熱が詰まった日本酒の魅力を熱心に伝えて、シェフの食材に対する追求心をくすぐり、酒造りのクラフトマンシップへの共感を生むよう働きかけました。

12店舗で2ヵ月間、日本酒ペアリングメニューを提供

次に、シンガポールで日本酒のディストリビューターを兼業する日本酒ソムリエが、他の同業者を巻き込み、日本全国の酒蔵から厳選したプレミアムな日本酒を30銘柄以上、用意します。1店舗ずつ、望む日本酒はすべて異なるので、それぞれ試飲して決めていく必要があります。その後シェフだけでなくソムリエやスタッフへの日本酒知識のレクチャーを実施、さらにパンフレットやHP用の写真撮影、取材対応など、着実に準備をこなしていきました。

 最終的に22銘柄の日本酒と12店舗のシェフ考案の魚介類レシピが完成。キャンペーンの開始日は10月1日、そう「日本酒の日」です。選ばれた日本酒と一緒に、シェフ考案の特別ペアリングメニューをお客様へ提供しました。

〔日本酒ソムリエによる店舗スタッフ・ソムリエへのレクチャーの様子〕
※美食に対してのこだわりとクリエイティビティが交錯する熱い場面でした

ポイント 現地で培った信頼とネットワーク

今回シンガポール在住のコーディネーター(日本人)ならびに日本酒ソムリエ(シンガポール人)の方に協力いただきました。レストランのシェフだけでなく、現地で日本酒を輸入し販売する流通の要であるディストリビューターまで巻き込むには、現地での信頼そしてネットワークなくして実現することはできません。

[アプローチ戦略3]日本酒の魅力をメッセージやビジュアルで届ける「メディアミックスの展開」

消費者のコンセプト理解を深めレストランでの体験機会を促すためにメディミックスを展開しました。富裕層に情報を届けるために、彼らにアプローチできるハイエンドなカルチャー雑誌やフード系のWebメディアなど10媒体を厳選し、キャンペーンの紹介記事を掲載。また、富裕層でグルメなファンを抱える15人のインフルエンサーが実際にレストランでペアリングを体験し、消費者の言葉でその実感を発信してくれました。

ポイント 国民性を理解し、科学的根拠に基づく情報をふんだんに

メディアやインフルエンサーからの発信をプロデュースするうえで、どんな情報を盛り込むべきか、そのヒントになったのが、シンガポール人の典型的な国民性を表す「キアス」という言葉です。実は、シンガポール人は他人よりも抜きん出たいと競争心が強く、野心的に知識を習得する傾向があると言われています。そのため、人が知らない情報や新しい発見を見つけ、周りにうんちくを話すことが好きなのです。プロジェクトを通してこの国民性を理解することの重要性を痛感し、しっかりと念頭に置いてコミュニケーション設計を行いました。日本酒の魅力をメディアやインフルエンサーに伝える際には、あえて科学的根拠に基づく情報を多めに使用しました。

成果

2ヵ月間で計3000人以上の方々が注文し、喜びの声も

結果的に、2ヵ月間で計3000人以上の方々に注文していただきました。お客様からは「スタッフに勧められたので、いつものワインをやめて日本酒を飲んでみた。日本酒は和食のときだけだと思っていたけど、ブラックペッパークラブとも相性最高!」といった喜びの声が届きました。

海外で日本人の常識は通用しません。ターゲット国(今回はシンガポール)の価値観や商習慣、ライフスタイルを把握したうえで、日本酒が「新しい文化」として根ざすようにコミュニケーションを設計することが大切です。現地の文化とも真塾に向き合いながら、「郷に入っては郷に従う」、このバランス感覚が必要です。オズマピーアールでは、遠く離れた海外市場だからこそ、情報の定着や話題づくりだけでなく、消費の現場との連動やステークホルダーとの共鳴をプロデュースすることが、日本文化・食品のアウトバウンドPRのポイントだと考えています。

プロジェクトメンバー

榑林 佐和子

今回のプロジェクトを通して、シンガポールの方がはじめて日本酒に出会い、感動してくださる場面を見ることができました。日本人以上に日本酒に惚れ込み、自国に広めようと熱い情熱を注ぐシンガポール人にも出会いました。また、海を越えた先にいる消費者とつながった酒蔵の担当者は、やりがいに満ちあふれて幸せそうでした。日本の誇りであり国酒ともいえる日本酒が、海外で愛されファンを獲得していく、そのお手伝いができたことは、日本人として、PRパーソンとして、心からうれしい経験でした。

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