高い熱量で2年間トコトン議論を深めた大阪府・河内長野市のブランディング事業 。市職員と見つけた河内長野の魅力とは。
河内長野市は、大阪府の南東にあり、金剛山地を隔てて奈良県と、和泉山地を隔てて和歌山県に接しています。市の面積の7割が森林で、大阪の中心部から電車で約30分という距離にもかかわらず、ホタルも見られるという緑ゆたかなまちです。高野山詣でに多くの人が利用した高野街道が通り、中世の歴史的建造物が残っているのも魅力です。
ベッドタウンとして一時は大きく人口が急増したのですが、現在、大阪府下でもっとも人口減少、少子高齢化が進み、それがまちの課題となっていました。



2023年4月、河内長野市のブランディング事業にオズマピーアールも参画しました。高齢化のイメージが先行してしまっているけれど、実は空き家率はとても低く、子育て施策が手厚く、犯罪率も低い安全・安心なまち。そんなポジティブな河内長野をもっと発信したい。そのために、市の職員が同じ方向を目指し、市の魅力について意識を共有しておきたい。ブランディングを進めるうえで、最終的には、意識を共有するためのブランドブック、対外的に市の魅力を伝えるブランドメッセージを作りたいというご依頼をいただきました。
私たちオズマピーアールは、ブランディングのプロセス自体がその浸透・定着を見すえた活動になるよう、市職員が主体となって、同僚や市民を巻き込みながら自らの手で作り出すプロジェクトを進めていきました。
話し合いのプロセス
職員によるプロジェクトチーム結成!
ブランディング事業が開始。市の様々な部署で働く若手・中堅職員から約20名でプロジェクトチームが結成されました。チーム名は、Kawachinagano Future Factory(略してKFF)。河内長野の未来を作るチームです!この活動を職員の皆さんにも広く知っていただくため、チームロゴを作成しました。河内長野の自然と、未来を生み出す工場の煙突をイメージしています。また、活動の様子はKFFニュースとして発信しました。プロジェクトメンバーの士気も高まり、庁内にも活動を知ってもらうプラットフォームができました。

話し合いながら河内長野の魅力を探る
~自由な意見がどんどん出る「場」づくりの工夫
KFFでは、月に1回のペースでワークショップを行い、ブランディングに向けた議論を行うことになりました。固定観念にとらわれないアイデアを出すこと、自分の意見を積極的に話すこと、メンバーのアイデアにプラスしてアイデアを加えることなど、創造的で活発な議論のエンジンをかけるべく、オズマピーアールのメンバーがファシリテートしながら、議論にも参加しました。
プロジェクトの最初では、意見を出しやすい雰囲気を作ることを重視し、ワールドカフェのスタイルを取り入れました。4-6名のグループでメンバーチェンジをしながら数ラウンド議論をするのですが、他のグループの議論と混ざり合ってアイデアが増幅する楽しさと、一人ひとりが必ず発言できる気楽さが魅力です。この意見交換の場をきっかけに、相手の話を聞き、自分の意見を加えて前向きに議論をしていく空気が生まれました。ワークショップを重ねるごとに、積極的に意見を出してくれたり、部署の意見を集めてくれたり、調べものや作業を買って出てくれるなど、メンバーの皆さまの強みが爆発、ワークショップが静まりかえる瞬間はまったくありません。


河内長野を形づくる6つの要素を見つける
KFFでの議論を深めるために、私たちは市職員以外からもさまざまな意見を集めました。地元の不動産会社へインタビューを行い、住まいとしての河内長野市の魅力について調査しました。さらに、市内で行われたイベントで、子育て世代に「河内長野のここがスキ!」を葉っぱ形の用紙に記入していただいたり、子育てセンターの利用者に町の魅力についてインタビューを行うなどの活動を地道に行いました。

プロジェクトチームでは、これらの市民の声を参考に、市内の様々な業務を担い、市民との交流の多い市職員だからこそ知っている河内長野市の魅力について話し合いました。「道に寝ころべるほど綺麗なまち」「お化けスポットもあるんだって」といった素朴なものから、「市民の人との関りで感じるのは、親切だけどやや控えめな人が多いのかな?」「子育てや教育について充実した施策が多い」「古くから住んでいる高齢者の方と新しく住み始めた若い人の間に温かい交流が生まれている話を聞いた」など、さまざまな意見が出てきました。
そこから、数か月の議論で「市民と職員がもつ市のイメージには、どのような共通点・ギャップがあるのか?」「河内長野市の強み・弱みは何か?」「河内長野らしさとは何か?」を整理していきました。

これらの議論を経て、河内長野の魅力として6つのキーワード(要素)が浮かび上がってきました。犯罪発生率が低く、地盤が強いことに代表される「安心」、大阪でありながら緑あふれる「自然」、おだやかで心地よい「つながり」、中世の歴史が今も残る「千年」、新しい取り組みや開発などの「変化し続ける」、ここに暮らすことを誇りに感じる「愛着」です。

ここから協力パートナーのコピーライターにも加わってもらい、6つの要素をもとにいよいよブランディングの神髄に向けた議論が始まりました。6つの要素を煮詰めていき、職員や市民と共有できる言葉をどう作っていくかの議論が続きます。もう、冬が近づいていました。
ロゴマークの決定とブランドメッセージへの道のり
2024年の初めには、市政70周年のロゴを制作しました。これまで議論してきた「河内長野を形作る6つの要素」を葉にみたて、河内長野の自然を想起させるクスノキをモチーフにしたロゴが完成しました。プロジェクトチームで話し合ってきたことを、形として市民に伝える最初の機会です。
早速、ロゴのモチーフがデザインされた法被を制作し、市の職員のみなさんがイベントで着用。その後、市役所のあちこちにロゴが掲出されました。



河内長野の魅力をわかりやすく伝える言葉づくり
2024年度は、市の職員が目指す方向の整理と、それをわかりやすく市民に伝える「ブランドメッセージ」を固める議論が続きました。ブランドメッセージは、コピーライターの創作とメンバーが考えたものを含めると100案以上!
並行して、ブランディングを職員に定着させるためのブランドブックの制作も開始しました。こちらも、私たちがファシリテーターとなり、プロジェクトチーム主導で制作していただきました。絵が上手な職員の方が手書きでさらっとかいたキャラクターがプロジェクトチームで大好評となり、「河長(かわちょう)さん」という名前で、ブランドブックの案内係を務めることになりました。

ブランドブックが完成!今後のインターナルブランディングに向けて
2024年度も終わりに近づいた3月、ブランドメッセージ、ブランドブックが完成しました。また、プロジェクトメンバーの働きかけや活躍が評判を呼び、ここでの議論は、市の総合計画にもアイデアとして提示されました。
2年がかりのロングランプロジェクトでしたが、すべてのプロセスで市の職員~プロジェクトメンバーに関わっていただいたことで、彼らが今後のインターナルブランディングを自ら担ってくれる土台ができました。


プロジェクトメンバーの持つ「巻込」の力を引き出す
このプロジェクトを大きく牽引した力は、メンバーの皆さんが発信し、周りの人を巻き込みながらすすめたことでした。部署や同期など職場はもちろん、コミュニティの知り合い、同市でも有名なだんじり祭りの仲間、仕事で出会った事業者の方々など、メンバーそれぞれのつながりがどんどん広がって、様々な意見や知識のインプット、新しいアクションが生まれました。
メンバーの得意分野がかけ合わさって、「河長さん」というキャラクターも生まれました。プロジェクトメンバーを核に職員や周囲の多くの想いが「6要素」や「河長さん」を生み、このプロジェクトの目的である「職員みんなが同じ方向を向く」ということも実現できたと思います。
プロジェクトチームが前向きにクリエイティブな活動となるよう、政策企画課のご担当者と私たちでとことん話し合いながら走ってきた2年間でした。2年目には大阪・関西万博の機運醸成に向けた市民団体とのイベント企画にもオズマピーアールが参加することになり、市の職員の皆さんとの関わりから、市民の皆さんと共創する活動へと広がりました。
これからは、ブランディングを定着させる新しいフェーズが始まります。「かわらずながーく、ふだんのしあわせ」が市を飛び出して、関西、日本、世界に広がっていくことを祈っています!
協力パートナー
コピーライティング:うたみな 山中貴裕 https://www.utamina.com/
ロゴデザイン:コージィデザイン 佐藤浩二 https://cosydesign.com/
デザイン(KFFロゴ・ブランドブック):米本塁人