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  • 株式会社 Mizkan Holdings/日本女子大学

学生の視点でこれからの日本の食の未来を探求・創造する「にっぽん食プロジェクト」

【にっぽんの食プロジェクト事例記事:前編】 学生の視点で、伝統をアップデート。 5年目を迎える、ミツカン×日本女子大 共創プロジェクトの現在地とこれから

ミツカンと日本女子大学が産学連携で進める「にっぽん食プロジェクト」は、同大学の学生を主体に、和食文化の継承と現代の食における課題解決を目指す取り組みです。2022年に始動してから年々活動の幅を広げ、2025年には考案したメニューをスーパーマーケット「ライフ」で試食提供をしたり、日本調理科学会で口頭発表をしたりと進化しています。今回は、2025年度の活動を中心的に担った学生2名と、サポート役の大学院生、そして活動を支える関係者の方々にインタビュー。お話を通して、長く続く共創プロジェクトの秘訣を探りました。

「にっぽん食プロジェクト」

ミツカン×日本女子大学でスタートした、中長期的な共創プロジェクト。“これからの日本の食”をテーマに、若者の視点で「にっぽん食」を探求。現在は「ごはん時間で、つながろう。」をコンセプトに、「共食/コミュニケーション」「旬」「簡便」の3要素を掛け合わせ、学生によるレシピ開発やSNS発信、スーパー店頭での試食提供などを実施している。レシピはミツカングループのウェブサイト内「おうちレシピ」の公式メニューとしても掲載。

同じ方向を向いて始まった共創プロジェクト

――2022年に始動した「にっぽん食プロジェクト」は、もうすぐ5年目を迎えますね。まず、産学連携での取り組みが立ち上がった背景をうかがえますか?

ミツカン 亀山勝幸さん(以下、亀山):スタートの決め手は、世の中の課題に対する認識と目指すべきゴールが、我々と日本女子大学さんとで同じ方向を向いていたことでした。

当社は創業220年以上になりますが、近年は常に「食の多様化」や「生活者の価値観の変化」という激しい波に直面しています。特に、2018年には10年先を見据えて「ミツカン未来ビジョン宣言」を発表し、新たに「おいしさと健康の一致」に取り組もうとしていました。食品に携わる企業として「おいしさと健康の両立を実現すること」を私たちの重要なテーマとしてかかげていました。

その折に、オズマピーアールさんから「若者の視点で、日本女子大学さんと共にこれからの食を考えてみませんか」と提案いただいたんです。お話をうかがう中で、長期的に組ませていただけると思い、プロジェクトの発足に至りました。

オズマピーアール 佐藤(以下、佐藤):当社は以前から日本女子大学さんとご一緒させていただいており、産学連携にも積極的だと当時の担当者が存じ上げていました。そこから、オズマピーアールが架け橋のような役割として、共創プロジェクトをご提案したと聞いています。

私は途中からの参加ですが、産学の垣根を越えて、プロジェクトに関わる皆さまの真摯な向き合い方は共通していると感じています。

亀山: 企業だけの取組みでは得られる視点や実行できる範囲も限られるなかで、大学との共創によって、食の豊かさの向上に、より寄与できているのではないかというのが今の実感です。

――大学側としては、企業との共創というお話を聞いて、どのように感じられましたか?

日本女子大学 飯田文子教授(以下、飯田):本学は1901年の創立以来、120年以上にわたって、食の教育と研究を続けてきました。その中で、伝統的な食を含めた調理学や、官能評価という“おいしさ”の評価を専門とする私の研究室では、味覚だけでなく健康への寄与や食卓への普及も常に考えてきました。このプロジェクトは、そうした点から、本学の広報課を通じて当研究室にお声かけいただきました。

ミツカンさんが掲げる「おいしさと健康の一致」という考えは、まさに私たちの研究理念と合致するものです。日本を代表する食の企業とタッグを組めることは、学生にとっても社会にとっても大きな意義があると考え、ぜひご一緒したいと思いました。

 

2023年3月に記者発表会を行い、1年の研究成果を発表。写真左から、篠原聡子学長、今市涼子理事長、加藤奈々瀬さん(学生)、飯田文子教授、富沢千翔さん(学生)、株式会社Mizkan Holdings中埜裕子代表取締役社長、株式会社Mizkanマーケティング本部 村重祐介部長(※肩書は当時のもの)
(※https://www.jwu.ac.jp/unv/jwu_times/2023_0329_01.htmlより)

伝統と現代を融合させたプロジェクトの原点

――プロジェクトの骨子となる「にっぽん食」は、5つの概念で定義されています。この構築には、どのような議論があったのでしょうか?

飯田:一つのモデルとしたのは、複数の研究から、日本人の食事が最も健康的だったと言われる1970年代の日本食です。しかし、当時の食事をそのまま再現しても、今の忙しい若者には受け入れられません。おいしくて健康的で、味覚を育むこと、また日本らしさも大事ですが、そのような食事を短期的にではなく「継続できるか」が重要です。また、SDGsをふまえて、おいしさによって 食べ残し等の廃棄を減らす観点も必要だと考えました。

そこから、「持続可能」という概念が挙がりました。ここには、調理が簡単であることも含みます。学生が調理実習で栄養バランスの良い献立を学んでも、生活の中でなかなか続けられず、「バランスが良くても面倒だと持続しない(作り続けない)」と痛感していたからです。

さらに、食から生まれるコミュニケーションも、欠かせない要素です。発足時はコロナ禍だったので、“黙食”という言葉も広がっていました。それもふまえて、ともに食事を楽しむ“共食”も大事な概念として盛り込むことになりました。

2022年度に定義した、「にっぽん食」における5つの概念

亀山:我々も、食の未来を考えたとき、若い人の視点を重視したいと思いました。その食環境をいちばん知っているのはやはり本人たちなので、学生さんの考えや感覚を大事にしていこうと、プロジェクト当初から考えていました。

特に「簡便性」という要素は重要です。時代と共に便利な道具や食品も出ているので、現代の環境に合わせた簡便性を探りたいと思い、2023年度には若年層へのアンケート調査やグループインタビューを実施しました。そこから「共食/コミュニケーション」「旬」「簡便」という3つの軸を抽出し、より生活者の方々に届きやすいよう、「ごはん時間で、つながろう。」というコンセプトを立てました。

新たに制定したコンセプト「ごはん時間で、つながろう。」
――大学院2年生の加藤さん(※2026年1月取材時点、以下同)は、立ち上げ当初から参加され、今年度はサポート役に入られたそうですね。当初、このプロジェクトをどう捉えていましたか?

日本女子大学 加藤優依さん(以下、加藤):もともと、和食はユネスコ無形文化遺産にも登録されている、すばらしい文化だと誇らしく思っていました。一方で、現実の食卓からは、特に若い人の食事からは伝統的な和食が失われつつもあります。なので、このプロジェクトを聞いたとき、伝統を現代にアップデートして次につなげるという考えに強く共感したんです。新しい視点を加えていくことに、ぜひ参加したいと思いました。

――加藤さんは、プロジェクトのロゴも制作されたそうですね。

加藤:「にっぽん食」が目指す姿を、一つのマークに凝縮しました。中心には、日本の食の象徴である「お米」の稲穂と、背景として都会のビル群を描き込みました。伝統が現代社会にも息づき、発展し続けてほしいという未来への願いを込めています。ロゴを囲む4色は、日本の春夏秋冬をイメージした伝統色を選びました。また、日本食らしいお箸と、醬油や豆腐の原料である大豆も取り入れて、親しみやすくできればと考えました。

「にっぽん食プロジェクト」ロゴ。稲穂やお箸とともに、現代を想起させる都会の街並みを盛り込んだ

若者のリアルな感性が「調理の入り口」を広げる

――学部4年生の新村さんと小川さんは、今年度の中心メンバーとして、レシピ開発などに積極的に取り組まれていますね。参加してみて、どのような難しさや発見がありましたか?

日本女子大学 新村菜月さん(以下、新村):私は1、2年生の時から先輩方の活動をシラバスや掲示で見ていて、とても興味を持っていました。実際に参加できたときは嬉しかったのですが、いざ加わってみると、先輩方が積み上げてきた「にっぽん食」の深い概念を十分に理解できていないなと実感して、それが難しかったです。加藤さんにお話を聞いたり、過去のファイルや記事を読み込んだりして、差を埋めようと勉強しました。

特に“共食”という言葉の意味を、自分なりに噛み砕いて考えたのが「和風ルーローグー飯」です。台湾の魯肉飯(ルーローハン)は若者に人気ですが、今回はお肉を柔らかくするプロテアーゼを含む舞茸をふんだんに使用しているところがにっぽん食らしい特徴の1つとしてレシピを考えました。メニュー名も工夫しており、中国語できのこの意味を持つ「菇(gū)」を加えて、「和風ルーローグー飯」と名付けました。「グーって何?」と、食卓で会話が弾んだら、共食にもつながるかなと考えています。めんつゆや黒酢などのミツカンさんの調味料、山椒や生姜を使用し、日本らしい味付けに仕上げています。

ミツカンのウェブサイト「おうちレシピ」掲載の「和風ルーローグー飯」。豚肉に舞茸やれんこんを加え、黒酢などで仕上げている
(※https://www.mizkan.co.jp/ouchirecipe/recipe/?menu_id=23702 より)

日本女子大学 小川紗和さん(以下、小川):私も最初は、自分がこの大きなプロジェクトの中で何ができるのか、不安はありました。でも、それこそが、世の中の人が和食に対して感じるハードルなのかもしれないな、と気づいたんです。そこで、同じ世代の人たちに「和食を作りたくなる入り口」を設けられたらと考えました。

例えば、本来はオーブンを使って手間がかかるキッシュを、フライパン一つで完成させる「ワンパンじゃがいもキッシュ」として提案しました。他のレシピも同様ですが、親しみやすさと新鮮さ、かつ作りやすさを兼ね備えたレシピになればと思って考案したものです。スーパーマーケット「ライフ」さんで試食提供を実施させていただいて、お客様とのやり取りを含め、貴重な経験になりました。

2025年11月、ライフ桜新町店(東京・世田谷区)で試食提供を実施。これまで開発したレシピ14品を掲載したブックレットも170冊以上配布した
(※https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000632.000065533.html より)
――魯肉飯やキッシュを和風にアレンジするとは、広がりがありますね。

飯田:そうなんです。ほかにも「ゆず香る和風ガパオライス」や、「年越しそばでパッとタイ」など、学生が考えるアイデアはとても斬新で、私も驚かされました。学術研究の側面からは、実際、料理として生活に落とし込む場面は多くないのです。その新たなステージに踏み出せて、とても新鮮でしたし、和食の可能性を再認識しました。

佐藤:ライフさんとのお取り組みは、日々の食卓を担う方々の反応を直接的に捉えられ、大いにプラスになったと思います。この活動をPRの部分でお手伝いしていくことが、生活を良くする一端になっていると改めて実感しました。私自身、過去に体調を崩した際に、食生活の改善で健康を取り戻した経験があります。そのときに食の力を身をもって知ったので、生活者の方との日常の接点は大事にしていきたいです。

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