生活の中でSDGs理解を深める機会を
ニュースメディアだけでなく、バラエティ番組や情報番組、はたまた多くの企業メッセージでも目にすることが増えてきた「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」というキーワード。
2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標です。
この「SDGs」という言葉。ここ数年間でテレビなどでも頻繁に聞くようになりましたが、内容を理解して、生活する上で実践していると言える方はどの程度いるでしょうか。現に、21年度の調査では、「いますぐ社会問題や環境問題に取り組まなければ手遅れになると思う」と回答した方が65.9%となった一方で、52.8%が「社会問題や環境問題に対して自分は何をすればよいかが分からない」と回答する結果となりました(※1)。
具体的な実践への落とし込みや、他人への説明ができるレベルになる、延いてはSDGsをもっと身近なものとして捉えるには、生活に紐づく体験機会を創出する必要があると考えます。
(※1)「生活者のサステナブル購買行動調査2021」
博報堂SDGsプロジェクト
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/92699/
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2021/08/20210827.pdf
生活者がSDGsを「実践して理解」するにはまだ難しい状況だというこの課題に対し、この度オズマピーアール内の「社会潮流研究所」(通称ウズ研)の取り組みで、将来的には自社CSR化を視野に入れた活動として、「生活の中でSDGs理解を深める」機会創出に取り組みはじめました。
まず第一歩として今春実施されたのは、「子どもから親へSDGsを伝える、逆・授業参観」。学校教育でのフォローもあり、若年層のSDGs認知は年々拡大している中で、逆に彼らの親世代が知識不足になっているという課題に対して「子どもから親への授業」を通して、親子で知識をシェアし、親世代のSDGs理解と、日常生活内でのSDGs貢献行動を促す施策です。
SDGsをより身近に捉えるための、“自分ごと化”
今回の「逆・授業参観」は、東京都市大学の杉浦正吾教授(環境学)を特別講師に迎え、地球・社会の課題を学ぶ探究型学習「サス学」を開発、SDGs教育に注力されている千葉県柏市の学童併設塾「ネクスファ」に通う子どもたち向けに開催されました。
本来の逆・授業参観は、
1) 子どもたちのSDGs理解を深めるワークショップを実施
2)そこで学んだ知識をもとに子どもが教壇に立って先生となり、自分の親に
向けて家で実践できていないSDGs問題について作文発表を通し疑問を
投げかける
3)その疑問を解決すべく親子でディスカッションをして、日常生活の中で
SDGsを意識した行動につなげる
というプログラムのところ、今回はコロナ禍、かつテスト的な実施ということもあり、子どもたち向けのワークショップ後は自宅で取り組める特別内容に変更。
1)子どもたちのSDGs理解を深めるワークショップを実施(30分)
2)ワークシート・自宅で親に出題をする「我が家のSDGsテスト」に記入
(40分)
3) 自宅にて「我が家のSDGsテスト」を題材に家族でディスカッション。
親はアンケートに回答
という3段階から構成される授業内容を実施しました。
1)のワークショップでは、杉浦教授が子どもたち向けに
「SDGsとはどんなものなのか?何を目的としてできたものなのか?」
「具体的な17の目標」「17の目標を達成したらどうなるのか?」
「暮らしの中でSDGsを実践するための考え方」
などを分かりやすく説明。
2)のワークシート記入では、自分が「困っていること」や「やりたいこと」をSDGsとつなげて、自分たちなりの目標を立て「SDGsのローカライズ(自分ごと化)」に取り組みました。
身の回りの出来事や日常生活で課題だと思っていることを、169のターゲットにつなげ置き換えて考えることで、SDGsを自分ごと化できるため、子どもたちの理解もより深まるひとときとなります。
また、自宅に帰って家族へSDGsに対しての問題・質問を投げかけるために、「我が家のSDGsテスト」を作成。
子どもたちがテストを作る中で注目すべきは「ウクライナ・ロシア問題」や「コロナ禍」、「地球温暖化」など、国際的社会問題に触れた内容を考えているということ。普段見聞きしているニュースを「自分ごと」として捉え、さらにそれらの事象をSDGsと結びつけて考えているということに驚きや発見がありました。
子どもから投げかけられることで、“ハッ”とする気づき
今回の逆・授業参観で重要なのは「家族でSDGsへの知識をシェアすること」。子どもたちがそれぞれ作成した問題を自宅で家族に発表し、家族との意見交換をするまでがプログラムとなります。そのため、自宅でのSDGsテスト発表の様子をご家族にアンケート回答を通して報告、共有してもらいました。
まず前段として、今回アンケートに回答してくださったご家族に「あなたは普段の生活の中でSDGsを意識できていると思いますか?」という質問を投げかけたところ、「そう思う」との回答は得られず、日常生活でSDGsを意識することの難しさが分かる結果に。
「知識として知っているものの、実際の生活において意識しているかと聞かれると“はい”と言い切れない」「家庭や個人で出来ることがいまいちわからない」という意見が目立ちました。
課題認識はしつつも、生活の中でSDGsを意識しきれていない状況は、今回の逆・授業参観や子どもからの「我が家のSDGsテスト」を通してどのように変化したのでしょうか。「お子さまからのSDGsテストを回答して、あなたのSDGs意識に変化はありましたか?」という問いに対し、回答者全員から「そう思う」「ややそう思う」と、今回の授業や家族で取り組む宿題への肯定的な回答をいただく結果に。
子どもが作ったテストに回答した上で、自分たちの気づきとして、「天気頭痛、という自分の日頃の悩みを、気候変動や健康と福祉(薬開発)の視点で捉えていたのはハッとしました」「自分の困りごとをSDGsの視点から改善することができないか?という視点が、今後成長とともに、自分→家族→他人、と影響の輪を広げていく可能性と期待を感じました」など、子どもの成長を喜ぶ内容もありました。
さらに、今回の取り組みに対しての感想を聞いてみると、「“SDGs知っているよ。私すごいでしょ”、で終わるのではなく、まずはSDGsという物事の捉え方を知って、それをどう自分事として自由に考えを拡げられるか、という取り組みが面白い」「正解がなく、実際の解決方法も見えない課題山積みだからこそ、大人も子どもも枠を超えて、考え、自由に意見を出すことで実際の問題の解決方法のヒントになりそう」「インプットだけでなく、アウトプットをすることで、子どものSDGsへの理解がより深まっている」「家族でSDGsについて考える貴重な機会になった」といった、一つの課題へ家族みんなで取り組むという家庭内コミュニケーションの機会創出への言葉や、新しい学びの形を家族で楽しめたという感想が寄せられる結果となりました。
アップデートしたプログラムで、SDGs意識の底上げを
また今回授業を担当いただいた杉浦先生からは、「自治体はSDGsを「地域づくりの根幹に」、企業は「経営の基軸に」据えていくという目標を掲げています。この達成には、169ターゲットや紐づく230余の指標(ワールドインディケータ)を、自らを主体にした現実的課題に読み替えて、自治体経営・企業経営に活かす具体的KPIを設定する必要がありますが、この部分はまだ遅れています。
このプロセスを小中学生用の学習プログラムにしたのが今回のトライアルですが、大人が職場で悩ませているSDGsの自分達事化を子どもたちが柔軟な発想で逆に授業することは、教育現場における新価値創造となり、今後も拡大するべきプログラムだと感じています」と、次世代を担う子どもたちとの取り組みを評価いただきました。
そして、今回プログラム実施に協力いただいたネクスファ代表 辻さんからは、「SDGsはここ数年で世の中に大きく広がり、小学校の授業でもSDGsを扱う機会が増えています。一方で、子どもたちがSDGsを理解し実践するような取り組みはまだ多くありません。今回のプログラムの素晴らしいところは“家族でSDGsへの知識をシェアすること”。自分で考えた内容を家族に伝える。それだけで充分なアクションですが、さらに考えたことを自分なりに実践していることを耳にしています。このような取り組みが広がり、SDGsについて子ども、親世代が共に議論し、考える機会が増えることを願っています」との感想をいただき、プログラム実施後も子どもたちが学んだことを意識しながら過ごしていることを知ることができました。
今回の取り組みや、施策後のアンケートを通し、SDGsを意識し続ける日常生活は難しいながらも、家族みんなで考えられる課題であること、家族で考える機会を多く作ることができれば、社会全体のSDGsへの意識向上に結びつくのではないか、という気づきがありました。
初回ということもあり、今回は自宅での宿題も含めたテストプログラムとなりましたが、今後も社会潮流研究所の取り組みの中で、保護者の方も教室に同席いただき、その場で子どもたちの授業を受けていただく、当初の想定に近い形での逆・授業参観の開催を目指すなど、少しずつアップデートをした取り組みを行う予定です。ゆくゆくは企業を巻き込むなども視野に入れながら、社会全体のSDGsに対しての意識の底上げに貢献し続けられる仕組みを構築したいと考えています。
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【問い合わせ先】
株式会社オズマピーアール 戦略推進室 広報部
Eメール:kouhou@ozma.co.jp
TEL:03-4531-0201
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