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「おかえり!カーネル」人形納め

“幸運の象徴”として愛されたカーネル立像「おかえり!カーネル」の老朽化問題に対し、多様なステークホルダーの心情に寄り添ったアクションを実施。

ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)の店頭で、いつも笑顔でお客さまをお迎えしているカーネル立像。
KFC創業者カーネル・サンダースをかたどった、ブランドの象徴ともいえる存在です。

「おかえり!カーネル」とは、1985年、プロ野球の熱狂によって生まれ、長きにわたり“幸運の象徴”として関西の人々に愛されたカーネル立像です。これまで、各イベント会場や店頭での展示などで広く一般公開し、多くの方にお楽しみいただいた以降は、KFC関西オフィスの受付にて大切に保管されてきましたが、老朽化が進みこれ以上の保管が困難に。そこで「おかえり!カーネル」を親しみ愛してくださったファンの皆さまへ感謝を伝えるために、住吉大社にて「おかえり!カーネル」人形納めを実施しました。

オズマピーアールは、本プロジェクトのPR戦略立案・実行に携わりました。
この記事では、ご担当者様と共に取り組んだ活動内容を、オズマピーアール担当者の視点から紹介させていただきます。

課題:関西の人々から愛された「おかえり!カーネル」の老朽化問題

1985年、プロ野球日本シリーズの優勝が決定した熱狂の最中に大阪・道頓堀川に誤って投げ込まれ、姿を消したカーネル立像。その後、24年の時を経て変わらぬ笑顔のまま引き上げられたことにより「おかえり!カーネル」と命名され、奇跡的な生還を遂げた“幸運の象徴”として、プロ野球ファンを中心に関西の人々に広く愛されてきました。
本来KFCにとって、創業者カーネル・サンダースをかたどった店頭のカーネル立像は、グローバルのフードチェーンとしてどの国・地域でも変わらぬ品質と味を保障するブランドの象徴ですが、「おかえり!カーネル」は地元チームの優勝への想いや熱気を伝える地域固有のストーリーを紡ぐ象徴となっていたのです。

一方で、長年川底に眠っていた影響で年々立像本体の老朽化が進行し、保管場所であるKFC関西オフィスから動かせないほどに。苦渋の決断の末、これ以上の保管は困難であると判断しました。

KFCの象徴でもあり、数奇な運命を辿り“幸運の象徴”となった「おかえり!カーネル」。多くの人が勝ち負けとそれに伴う地域の機運の上下とともに感情移入をしてきた存在だからこそ、その終焉は、長きにわたり愛されてきた関西の人々やプロ野球ファンの心情に配慮し、理解と共感を得られるタイミング・形であるべきだと考えました。

そこで着目したのが、ファンの間で紡がれてきたストーリーです。
24年の時を経て引き上げられてからも「カーネルの呪い」と揶揄されるなど、「おかえり!カーネル」はプロ野球ファンや関西の人々にとって忘れ去られることなく語り継がれてきました。そして、2023年シーズンの優勝が決定した際に、「カーネルの呪いが解けた」と言われ話題化。このタイミングこそ、プロ野球をファンとともに見守ってきた「おかえり!カーネル」がその役割を終えるにふさわしいと判断しました。

戦略①: 長年愛してくれたファンの心情に配慮し、「おかえり!カーネル」に感謝を伝える

長年にわたり多くの人々の想いを背負ってきた「おかえり!カーネル」だからこそ、対外的な情報発信をせずに最期を迎えてしまうと、「知らずに処分されていてショックだった」「捨てられて可哀想」といったネガティブな反応が起こる懸念がありました。そこで、大切にしていた人形やぬいぐるみなどを神社で供養して処分する日本の文化「人形納め」に着目。ブランドの象徴でありながら、地域の人々に愛される存在となったカーネル立像に感謝を伝える場を用意し、その最期を社会に対してきちんと報告することが企業としての姿勢でもあると考えました。

人形納めには、当時のKFC代表取締役社長をはじめとした執行役員4名が参加し、多くの人々に愛されブランドの成長にも寄与した“幸運の象徴”の役割の終焉に企業として真剣に向き合う姿勢と、KFC創業者カーネル・サンダースへの敬意を示すものとしました。
また、人形納めの場は一般公開・メディア誘致による情報の広がりよりも、あくまで神聖な場所で厳かに執り行われる儀式にするため、弊社が手配した撮影クルーのみでオフィシャル映像を制作。話題性を高めるイベントとしての演出は排除し、プロ野球ファンや地域住民のみならず、KFCファン・従業員・株主といった多様なステークホルダーに対して「カーネル立像に感謝を示す」という企業姿勢を真摯に伝えることを重視しました。

戦略②:地域性を重視した場所とファンの関心タイミングを設計

実施場所は、全国の住𠮷神社の総本宮で、関西の人々なら誰もが知っており「すみよしさん」の愛称で親しまれている住𠮷大社を選定。実施時には、「神主に紙垂を振られるカーネル立像」といった場面や、役員が「おかえり!カーネル」への想いを語るインタビューなどを撮影し、これまでの感謝と背景となる企業姿勢をも伝えられるよう細部にまで配慮して設計しました。
また、お供え物には、御神酒に加えて創業者カーネル・サンダースが編み出した11種類のハーブ&スパイスを使用したKFCの看板商品・オリジナルチキンが入ったバーレルを神棚に並べるなど、「おかえり!カーネル」に捧げるにふさわしいものも奉納しました。

人形納めの報告については、プロ野球ファンの関心も高まるプロ野球新シーズン開幕を一週間後に控えた2024年3月19日を適切なタイミングと設定。メディアへのニュースレター・オフィシャル映像展開に合わせて、KFCのX公式アカウントから直接情報発信を行い、フォロワーやファンの心情にも配慮した情報発信を行いました。

成果➀:関西を起点として全国に「おかえり!カーネル」への感謝が拡散。メディア・SNSにて大きく話題化

本プロジェクトはメディアの方々からも多くの関心を集めテレビ8件・WEB627件の報道がされました。
地元・関西のテレビ局による街頭インタビューで「すみよしさんでしっかり供養されて良かった」といった地元民の声を拾ったポジティブな内容が露出したほか、全国に向けたニュースとして在京キー局での露出も獲得することができました。

KFCのX公式アカウントの投稿では、1.3万リポスト・2.3万いいねをいただきました。さらに、Xで「人形納め」が日本のトレンド入りするなど多くの人々の関心を集めたほか、一般ユーザーからのポストでは、「おかえり!カーネル」への感謝・労いや、丁重な供養を行ったKFCの企業姿勢を評価するポジティブな反応が確認できました。
さらに、KFC甲子園球場店(現在は閉店)の売り上げは前年比124%を記録するなど、セールスアップにも寄与する結果となりました。

成果②:“廃棄”という表現に対して自然発生的にあがったSNSの声

情報発信を行った当日、”廃棄”という表現で本件を話題にした内容がネット上で一部見受けられました。KFCが行った“供養”が“廃棄”と表現されたことに対してSNS上では、「その言い方はKFCにも神社にも失礼」、「人形納めと廃棄とではだいぶニュアンスが異なる」といった、KFCの企業姿勢や情報発信の意図について理解・共感を示す声があがったのです。
プロ野球ファン・関西の人々・KFCファン・従業員・当時の株主といった多様なステークホルダーに寄り添ったPRアクションを行うことで、KFCの「おかえり!カーネル」への感謝の姿勢を多くの人々に適切に理解されると共に、共感を得られる形でブランドアイコンの終焉を迎えることができました。

<受賞アワード一覧>

●2024 64th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS ブロンズ
●PRアワードグランプリ2024 ブロンズ

クライアントご担当者様より

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 広報室 野口竜也 様

2009年3月に川から引き上げられて以降、15年間にわたり、イベント会場や店頭などにて多くのファンやお客さまにお披露目することで話題となり、KFCブランドの価値向上に大変貢献いただきました。しかしながら、これ以上の保管が難しかったことから、今までの感謝を込めて人形納めを実施しました。ファンの皆さまからの反応がとても気になりましたが、温かいコメントを多数いただき、我々の望んだ最後の別れが実現できたと感じております。

プロジェクトメンバー

リレーションズデザイン本部4部 野間渉

「おかえり!カーネル」は、企業が自社のマスコットキャラクターとして意図的に生み出したものではなく、関西の人々の間で偶発的に生まれたものです。それ故に企業の想像以上に多くの方に愛着を持っていただきましたが、同時に保管面や情報発信面での難しさも併せ持っていました。
この「おかえり!カーネル」の最期を迎える本プロジェクトでは、地元・SNSで生まれた声に耳を傾けタイミングを見定めつつ、カーネル立像に真摯に向き合う企業姿勢を伝えることを重視しました。“一億総メディア時代”と呼ばれる近年においては、メディアだけでなくSNSから論調が形成されることも少なくなく、そういった生活者の声を拾い上げた企業の施策にポジティブな反応が集まる事例も見受けられます。ローカルで生み出されたストーリーをないがしろにせず、むしろその流れに乗ることでコミュニケーションを図ったことが本プロジェクトの一番のポイントであったと感じています。
これからもカーネル立像は、グローバルチェーンの味と品質を保証する象徴として、また時には地域の皆様に愛される存在としてあり続けて欲しいと思っています。

プロジェクトメンバー
コーポレートコミュニケーション本部
統合ビジネスデザインチーム 浜永裕也

リレーションズデズザイン本部4部
野間渉、小林なつみ

コーポレートコミュニケーション本部
ブランドデザイン2部 吉田周平

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