1. ホーム
  2. 事例・アワード
  3. 4人のPRパーソンに聞く、プランニングのリアル

データ・巻込・アイデアでひも解くPRの仕事

『OZMA PRofessionals』は、PRのプロフェッショナルとしてあり続けるために、日々情熱をもって考え、実践を重ねるオズマピーアールの社員たちに焦点を当てた連載企画です。現場で培われた専門性や経験をもとに、PRの可能性をひも解いていきます。

1963年の創業以来、オズマピーアールは日本におけるPRの歩みとともに、時代ごとに変化する企業・団体と社会の関係性に向き合ってきました。その積み重ねの先にあるのが、社会に新しい「問い」を立て、新しい「あたりまえ」をつくっていく「社会デザイン発想®」。私たちのPR発想の根幹であり、オズマピーアールの提供価値です。

今回のテーマは「プランニング」。世の中に問いを立て、新しいあたりまえをつくっていくために、オズマのプロフェッショナルたちはどのように企画を考え、どこに力を注いでいるのでしょうか。
情報リサーチへの徹底した向き合い方、N=1の声を起点に企画を立ち上げる姿勢、そして多様なステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを前に進めていくプロセス——。

この記事では、部署横断の座談会を通して、クライアントと社会の接点を見出すための思考と実践、そのリアルな手触りを探っていきます。

【この記事のポイント】
・PRの「プランニング」は計画立案にとどまらず、実装・調整を含め走りながら磨いていくプロセスである。
・当事者との対話で同じ「問い」を共有し、自ら参画したいと思える関係性を築くことが巻込の核。
・AIではなく人の発想から生まれるコアアイデアがプロジェクトに一貫した意味を与え、物語として社会に残る。

リレーションズデザイン本部5部 久保田

短期的な話題作りではなく、実体をもった物語を、関係性のなかで長く育てるナラティブ型PRディレクションに取り組んでいる。主な参画プロジェクトに大阪府住宅供給公社「茶山台団地再生プロジェクト(リンク貼り付け)」、海遊館「サンゴショーウィンドウ/BLUE SEAT(リンク貼り付け)」、金龍ラーメン「道頓堀  龍のしっぽ物語(リンク貼り付け)」、うぇるねす「働くことは、生きがい。オープン型インターナル・コミュニケーション」など。
複数年にわたって育つ社会課題解決型のプロジェクトや、「居場所を持ちにくいものに、社会のなかの居場所をつくる」プロジェクトを継続的に手がけている。

PRアワード、ACC、PRアワードアジアパシフィック、SABREアワードアジアパシフィックなど、国内外のPRコミュニケーションアワードで最優秀賞を受賞。

統合コミュニケーション戦略1部 早藤

PR視点を軸とした戦略立案から、社会に話題を作るクリエイティブ・アクティベーションまでを統合的に手がける。主な実績に、自治体のDXと移住施策を融合させた長野県佐久市「リモート市役所」、カルビー・フルグラの朝食習慣を啓発する「目覚める仕送り」、ピップエレキバンによる整体付きキッズパーク「ホグシーランド」の企画・PRなど、自治体の地域活性化からナショナルクライアントのブランディングまで幅広く担当。

ACC、日本マーケティング大賞、PR AWARD APAC、Saber Awardsなど国内外のアワード受賞多数。単なる露出獲得に留まらない「社会との合意形成」を重視した戦略から体験設計、PRまでを一気通貫で推進する。

コーポレートコミュニケーション本部 ブランドデザイン1部 五十嵐

外資系テーマパークや米大手IT企業、大手外食チェーンなどで、年間広報戦略策定・広報事務局業務・危機管理広報に従事。サッカーJリーグクラブの広報/プロモーション施策や、大手スポーツメーカーのBtoC向けコミュニケーション活動のほか、製薬企業ではファッションを起点としたマルチステークホルダーによる疾患啓発プロジェクトを担当。

2022年に「PR Award Asia WINNER」Healthcare部門 Gold、Public Awareness部門 Silver、「PRアワードグランプリ」Silverを受賞。

ヘルスケア本部PR2部 藤原

製薬会社、医療機器、日用品メーカー等、幅広い分野でのPR活動に従事。領域にとらわれないユニークな企画立案と着実な企画実行力を有し、​患者さんやそのご家族との共創プロジェクトなど、コミュニティからマスメディアへの情報流通を狙った企画を得意とする。

2023年「PRアワードグランプリ」Bronze、2024年「PR Awards Asia-Pacific」Corporate Social Responsibility部門 Gold、「IPRA Golden World Awards」Food and beverage部門 最優秀賞、「SABRE Awards Asia-Pacific」Non-Corporate Associations部門 Winner(最優秀賞)、「PRアワードグランプリ」Bronzeを受賞。

プランニングとは何か——“計画”だけではないという実感

藤原:そもそも皆さんにとっての「プランニング」ってどう捉えていますか? 一般的には、戦略を立てて「こういうメディアにアプローチしましょう」とか、SNSの戦略を考えるとか、そういう“計画”の意味で使われることが多いと思うんです。でも僕はちょっと違うかなと思っていて。プロジェクトが走り出したあとも、社会の状況やクライアント、ステークホルダーの声を受けてうねりながら変わっていく。それを見て調整していく姿勢も含めて、プランニングなのかなと思っています。
 
久保田:プランニングは、戦略・戦術・タイムラインといった構造の話として語られがちですが、それらはいまやAIで相当の精度で代替されつつあります。私たちが本当に向き合いたいのは、その手前にある「問い」です。「社会のなかで、何が、まだ十分に位置づけられていないのか」ー見落とされてきた価値、声をもちにくい存在、語られてこなかった物語を発見し、社会のなかに位置づけ直すこと。プランニングの本当の核は、その観測の仕方、そして実際に戦略で実装していくなかにあると感じます。

五十嵐:「プランニング」って言葉だけ聞くと、ちょっときれいに聞こえますよね。でも僕たちは、ロジックを検討するだけじゃなくて、手も足も動かしている。“泥臭さ”のあるものだと思っています。

早藤:企画書ひとつ見ても、外側のきれいな枠だけを整えてあるけれど、じゃあ実際に何をするのか、実現可能性含めた企画アイデアが空洞になっているようなものだったりすると、「これはどうなの?」と思ってしまいます。「仏作って魂入れず」というか。プランニングとひと言でいってもいろんなスタイルがあると思いますが、計画だけではなく、その後の実装を含めて課題を突破するところまで含めてが「プランニング」ですよね。

藤原:確かに。プランニングという言葉だけ聞くと、もしかすると上段からものを言うようなイメージに聞こえてしまうこともあるかもしれません。でもPRパーソンにおいては実際はそうじゃないぞ、と。むしろ現場では、かなり試行錯誤している。早藤さんが言ったように、プランナーといってもさまざまなタイプがいます。今日集まってもらったメンバーの話からは、さまざまなプランニングのスタイルが見えてくると思います。ここからは事例を交えながら、それぞれがどんな視点でプランニングに向き合っているのか、その違いと共通点をひも解 いていきます。

納得をつくる——データから逆算するプランニング

藤原:まずは早藤さんのお話から。早藤さんはプランニングの際、緻密に分析をして情報の流通経路とその効果についてKPIを具体的に設定しています。

早藤:事例として、経営層に向けた提案書のケースをご紹介しますね。購買行動モデルに沿って各段階ごとに施策を設計し、それぞれの段階、施策でどのくらいの人数にリーチできるかを示していきます。経営層にも納得いただけるよう、投資対効果が見える形で設計しています。

購買行動と情報リーチに係るカスケードの考え方

五十嵐:施策ごとに想定しうるリーチ数や離脱率も算出していますよね。これはどういう考え方で行っているんですか?

早藤:ウェブサイトやSNSの遷移率などをクライアントからご提供いただくこともありますし、メディア露出に関しては過去の実績をもとに算出しています。PRでは往々にしてメディア露出の「件数」がKPIになることが多いですが、それだと件数をひたすら追うことに消耗してしまいますし、SNSでバズれば状況が一変することもあるわけで。全体を俯瞰しながら柔軟に調整していくためのベースとなる設計でもあります。

藤原:この提案書は僕も見たとき、単に緻密だというだけでなく、PRの成果を経営判断に接続する設計になっている点が印象的でした。従来、社会の状況によってかなり可変性のあるPRはKPIの設定が非常に難しいとされてきましたが、SNSが情報流通の主流な経路になったこともあり、数値の検証はかなりしやすくなってきています。PRも売上など実質的な事業貢献が測られるようになった昨今、クライアントの担当者さんや意思決定される方にも納得いただけるものになっていますよね。すべてのプロジェクトにこの緻密さを適用できるかというと難しい場合もありますが、プランナーとしてはこのロジックは常に意識していないといけないものだなと思いました。

関係性からつくる——当事者とともに磨くプランニング

藤原:続いては五十嵐さんから。データの活用とはまた視点が変わって、プランニングに入れ込む「情熱」のお話を聞かせてもらいます。

五十嵐:僕は入社したばかりの頃、「PRってすごい!」と感動したプロジェクトに出会いました。「FACT FASHION」という、乾癬患者さんの声を起点にアパレルをつくるというもので、皮膚疾患の症状のために着る服が限られるという、たった一人の患者さんのつぶやきから始まったプロジェクトです。

患者さんの衣服に対する悩みや困りごとを解決するためのアパレルでありながら、ファッションが好きな方が手に取って疾患について知る・理解するきっかけとなるような、プロダクト自体がメディアの役割となり、ファッションとしても質の高いものをつくらなければいけないと考えました。プロのファッションデザイナー・アパレルブランドの参画を得ながら、患者さんにクリエイティブデザイナーという役割を担っていただき、患者さんのリアルな困りごとに寄り添い、機能性とファッション性を両立しながら課題を解決できるプロダクトにしていく。僕たちオズマはそのあいだに立って伴走していく役割でした。当事者や周りの人たちを巻き込みながら課題解決を導き出していくそのプロセスは、パブリックリレーションズの発想が起点にあるからこそのもの。これを知ったのは、僕の情熱を生み出す原体験になっています。

PRにはいろんな側面があります。オズマが提唱している「社会デザイン発想®」では「問い」「提唱」「巻込」「喚起」という4つのキーワードが示されていますが、その中でも「巻込」は無限の可能性があるなと。さまざまな側面で多様に存在する課題に対して、ステークホルダーといかにwin-winの関係を作れるかが、PRの面白さだと僕は思います。

藤原:五十嵐さんのその原体験が、実際のプランニングではどのように生きているのでしょうか。具体的な事例を聞かせてもらえますか。

五十嵐:あるスポーツチームの周年PRのエピソードをお話しします。このプロジェクトでは、これまでの感謝の気持ちをホームタウンに伝え、地元を盛り上げるイベントを企画しました。単に駅前にスペースをつくってイベントを開催するだけでは面白みがないので、チームの成長とともに歩んできた地元の商店街全体を巻き込み、回遊しながら楽しめるものにできないかなと。それで実際に現地に脚を運び、商店街の雰囲気を肌で感じながら、直接、商店街の方に企画案を相談し、地域の方々との反応や相性などを率直に伺う機会をいただきました。やっぱり、街の良さやそこで生活を営む方々の想いは、ただ離れた土地やデスクで考えるだけではわからない。当事者の方々としっかり対話をした上でないと良いプロジェクトにはならないなと実感しましたね。

藤原:先ほど「社会デザイン発想®」の話が出ましたが、「問い」「提唱」「巻込」「喚起」の中でもやはり肝は「巻込」であり、丁寧に構築していかなければいけないところだと感じます。僕たちがどれほど頭をひねって良いと思ったアイデアを生み出したとしても、当事者不在のまま「これに参画してください」と持っていったところでうまくいくものではない。

五十嵐:こちらの企画に対して「役に立ってくれそうな人」をキャスティングする発想は、「巻込」じゃないんですよ。当事者を含め、ステークホルダーの皆さんにも、情熱をもって「巻き込まれたい」と思っていただけるような場を構築していくこと。ここがまさに、僕たちPRパーソンの腕が問われるところですよね。

藤原:今の話に近いところでいうと、それぞれが想いや考えを持つステークホルダーが複数いる時、我々がその「間」に立つ難しさもあるなと思っています。少し前の事例なんですが、多発性硬化症という神経系の難病をテーマに、疾患理解を促すスポーツを開発したことがありました。障がいの有無や年齢、運動の得手・不得手に関わらず、誰もが楽しめるスポーツを開発する団体の方々と一緒に企画を進め、代表的な症状を踏まえたルールを設計していったんですが、それを監修医の先生に見せたところ、「その症状だけを取り上げると偏見を助長してしまう」と指摘を受けて。そこからもう一度見直して、さまざまな症状を踏まえた形に調整していきました。

こういうふうに、関わる人それぞれで見ているものが違うので、対話を重ねながら解釈をすり合わせていく必要がある。ひとつの施策をつくる過程そのものが、巻込であり、広がりにもつながっていく。プランニングってそういうものだと感じています。

久保田:私も「誰と取り組むか」が大事だという感覚はとても近いです。それと同時に思うのは、いいチームができているときというのは、関わる人びとが、同じ問いを認識している状態なんですよね。「何のためにこれをやるのか」「社会のどこに、何を立ち上げようとしているのか」ーその最も深い動機を共有できているかどうか。それがあるとき、立場の違いは、自然と溶けていく気がします。逆に、そこが共有されていないと、いくら関係が良くても、プロジェクトはどこかで行き詰まる。だから、最初に時間をかけて、その問いをそろえることが、私にとってのプランニングの入口でもあります。

藤原:僕たちはクライアントから依頼を受け、その課題を解決するためにプランニングするというのが起点ではあります。でも、輪の中心にクライアントがいるという発想ではなく、あくまで輪の中にいる仲間の一人であって。僕たちは人々をつなぐ、すべての間に入っている存在かなと思っています。

早藤:私は、例えば協力団体を巻き込むときは「自分を主語にする」ことを意識しています。「クライアントがこう言っているのでお願いします」というスタンスではなくて、「私はこういうことを実現したくて、この企画を考えました。だからご一緒したいです」と、自分の意思として伝える。

そのほうが、自分の言葉として熱を持って話せますし、相手にも伝わりやすいんですよね。
「あなたにもこういうメリットがあると思っています」ときちんと提示した上で、一緒にやりませんかと声をかける。そうやって関係性をつくっていくことが、結果的に巻き込みやすさにもつながっていくのかなと思います。

藤原:その視点は、特に当事者の方や地域の方と関わる場面で重要だと思います。単なる代理人として話すのではなくて、「自分はこういう思いでこのプロジェクトに関わっている」と伝える。結局は人と人との関係なので、そこに信頼が生まれないと巻込は成立しないですよね。

五十嵐:実際に、過去に関わったプロジェクトでも、そのスタンスで関係を築いたことで、長く続くつながりができたことがあります。災害系のプロジェクトで、NPOの方に「自分も震災経験者であり、プロジェクトはこんなことを考えていますが一緒に考えたいんです」とお伝えしたら「五十嵐くんのためなら協力するよ」という関係性になれて。ずいぶん前にプロジェクト自体は終了しましたが、今でも出張で近くに行けば会いに行って、一緒に食事をします。一度きりの仕事ではなくて、「この人のためなら協力したい」と思ってもらえる関係をつくれるかどうか。そこがすごく重要だと感じています。

共感を生む——コアアイデアから広げるプランニング

藤原:ここまでで、プランニングにおけるデータ、情熱と巻込、というお話をしてきて、最後は久保田さんからプランニングの「アイデア」の重要性について聞かせてもらいます。「問い」「提唱」「巻込」「喚起」のプロセスに一本軸を通すようなアイデアの創出は、PRプランナーにとってなくてはならない資質かなと。

久保田:コミュニケーションやマーケティングの世界では、プロジェクトのすべての要素を、一本貫く本質的な発想の中心を「コアアイデア」と呼びます。戦略やタイムラインは、AIで均質に組めるようになりつつありますが、プロジェクト全体に一貫した意味と物語性を与えるコアアイデアは、AIではなく“人”だからこそ生み出せるものだと考えています。

久保田:例えば、大阪・道頓堀の「金龍ラーメン」のプロジェクト。きっかけは、龍の立体看板のしっぽが、隣地への越境を理由に撤去命令を受けたことでした。

一般的には、これは「ネガティブな出来事」として片づけられます。しかし、このプロジェクトのパートナーである博報堂クリエイティブディレクターの宮原さんが立てたコアアイデアは、「立体看板を、無機質なオブジェクトから、命を吹き込まれたキャラクターへとアップデートする」――裁判敗訴の結果をユーモアで超え、大阪らしい明るい物語に変える、というものでした。私たちオズマは、その物語を社会に届けるPR戦略の立案と実行を担当しました。

このアイデアが単一のキャンペーンとして完結することなく、さらに続く物語として、次々と新しい章が生み出されました。近隣のカニ料理店とのコラボ、包丁ブランド「堺一文字光秀」とのコラボレーションである「包丁広告」プロジェクト、そして私もコアアイデア創出を担った「金羊ラーメン」プロジェクトー大阪・関西万博を機に、龍が羊の角をまとい、オーストラリアのラム肉という新しい食文化と融合する展開をつくり出しました。

コアアイデアが本物の質をもっているとき、プロジェクトはひとつの完結したキャンペーンを超えて、長く続く物語として、社会に残っていきます。

早藤:コアアイデアは「みんながイメージできる象徴」になるものだと思っています。真面目なイシューをそのまま真面目に伝えても、正しいけれど人の記憶には残りにくい。そこにコアアイデアが加わることで、ビジュアルとして思い浮かべることができ、「ひと言で何か」を説明できる状態になる。そうすると、「これってどういうこと?」と人に話したくなるし、結果的に生活者の中でキャッチフレーズのように広がっていく。そういう状態をつくることが大事なのかなと思います。

藤原:エビデンスやファクトが大事だという前提はもちろんありますが、それをどう表現するかも同じくらい重要ですよね。早藤さんが言ってくれたように、人々の記憶や印象に残るような表現をとることができると、多くの人から「確かにそうかも」と受け止めてもらいやすくなる。目に見えないものでも、想像しやすい形にすることで共感が生まれる。それがコアアイデアの役割なのかもしれません。

ただ一方で、そうした表現には賛否が生まれ、炎上のリスクも伴いますよね。共感やユーモアのバランスを取りながら企画を成立させるために、どんな点に気をつけているんでしょうか。

久保田: 確かに、表現の仕方によっては、意図と違う受け取られ方をしてしまう可能性もあるので、そこは慎重に検討します。意識しているのは、コアアイデアが、刺激や面白さだけで消費されてしまわないように、丁寧に守ることです。金龍ラーメンのプロジェクトで言えば、コアアイデアは「立体看板に、命を吹き込む」「金龍ラーメンに寄せられていた善悪の対立を、ユーモアで超える」というところにありました。そこさえぶれなければ、表現上のチャレンジは、むしろ歓迎すべきものです。
 
逆に、ユーモアや表現の派手さだけが先行して、本当に伝えたいことが薄れてしまうと、それこそが最も深いリスクになると考えています。生活者はその違いを敏感に感じ取るので。今、金龍ラーメンのプロジェクトを振り返ってみると、チームのなかではコアアイデアの本質からは決してブレないようにすることを意識できていたと感じます。

藤原:クリエイティブとして面白いジャンプがあるからこそ、言葉一つひとつも含めて、丁寧に議論していく必要があるということですね。

久保田:そうですね。コアアイデアを表現として強くするほど、その本質を何度も確認し直す必要があると感じています。表現は、強くジャンプさせる。しかし、コアにある問いは決して見失わない。この2つを、同時に成り立たせることが大切だと思っています。

プランニングは、関係性の中で育てていく

藤原:「プランニングってなんだろう?」という問いから始めて、ここまでさまざまな角度からPRプランニングのあり方について話してきました。最後に、皆さんがプランナーとして大事にしていることや、手応えを感じる瞬間についても教えてください。

五十嵐:僕は、関わる人それぞれが抱えている課題をつなげて、それを一緒に解決していくプロセスにやりがいを感じます。

印象に残っているのは、あるプロジェクトで「これはいける」と思えた瞬間があって。クライアントの現場担当者さんが抱えている課題に対して、「本来のゴールはここなんじゃないですか」と伝えたときに、「まさにそれが我々が考えていたことです。オリエンでお話ししたことでもないのによくご理解いただけた」と言っていただけたんです。そこから一気に提案の方向性が定まりました。ゴールの達成ももちろん大事ですが、それ以上に、関わる人たちと同じ方向を向いて、喜怒哀楽も共有しながら伴走していく。そのプロセス自体に面白さがあると思っています。

久保田:私も「誰と取り組むか」が大事だという感覚はとても近いです。それと同時に思うのは、いいチームができているときというのは、関わる人びとが、同じ問いを認識している状態なんですよね。

「何のためにこれをやるのか」「社会のどこに、何を立ち上げようとしているのか」ーその最も深い動機を共有できているかどうか。それがあるとき、立場の違いは、自然と溶けていく気がします。逆に、そこが共有されていないと、いくら関係が良くても、プロジェクトはどこかで行き詰まる。だから、最初に時間をかけてその問いをそろえることが、私にとってのプランニングの入口でもあります。

藤原:最初に同じ問いを持てているかどうかが重要ということですね。僕自身も、患者さんやクライアント、協力会社の方に「一緒にやれてよかった」と言ってもらえる瞬間が一番うれしいですし、それがそのまま次の仕事へのモチベーションになっています。

早藤:私は少し違う視点かもしれませんが、この仕事が自分のキャリアにつながるかどうか、という観点で考えることも多いです。大きなプロジェクトや難易度の高い仕事ほど、自分の経験値や評価につながることも多いですし、それが結果的に次の仕事につながっていく。そういう意味で、自分なりの軸を持って取り組んでいます。

ただ、そうした中でも、プロジェクトをやり切ったときの達成感や、クライアントに喜んでいただけたときの手応えはやっぱりあって。いい仕事ができたと感じられる瞬間は、素直に気持ちがいいですし、それがやりがいにもつながっていると思います。

藤原:その手応えは大事ですよね。PRの仕事は成果が数字だけで測りきれない場面も多いからこそ、関係者と同じ方向を向けた感覚や、次につながる実感も、プランナーにとって重要な判断材料になるのかもしれません。

久保田:PRの仕事には、明確な正解はありません。だからこそ、判断の軸が、何より大切になります。私の場合、その軸は「社会のなかで、まだ言葉を与えられていなかったものに、新しい位置を作れているか」ということに、収斂しています。

売上や行動変容といった成果は、当然追いかけます。しかし、その奥で、見落とされてきた価値や、声をあげづらい存在に、社会のなかで新たな居場所や意味を生み出せているか。数字には完全には現れませんが、数年経ったときに、確かに残るのは、こちらの方ではないかとも感じています。

--------------------------

プランニングは、単に計画を立てる仕事ではありません。データを手がかりに課題の本質を見極め、当事者やステークホルダーを巻き込みながら、一つのアイデアを社会に実装していくプロセスそのものです。だからこそ我々PRパーソンは、論理と感性、構想力と実行力、その両方が求められます。

オズマピーアールは、社会に新しい「問い」を立て、新しい「あたりまえ」をつくる「社会デザイン発想®」のもと、人・組織・社会のあいだに新たな関係性を生み出すコミュニケーションを実践しています。

この連載『OZMA PRofessionals』では、そうした挑戦の最前線に立つ社員たちの思考と実践から、PRの仕事の奥行きと可能性をお伝えしていきます。

お問い合わせ \ 記事更新中 / note

pagetop